欧米諸国はウクライナ戦争で「ロシアをソフトランディング」させたがっている

プーチン政権の崩壊やロシアの分裂は「リスク」

プーチン政権の崩壊やロシアの分裂を「リスク」と捉える人々が懸念しているのは、主に「核兵器の管理不全」と「ユーラシア全域の泥沼化」です。

彼らの論理では、現在のプーチン大統領は「予測可能な独裁者」であり、彼が失脚して国がバラバラになるよりも、現状のまま「管理された衰退」に向かわせる方が、世界全体の安全保障にとってはマシであるという判断が働いています。

ロシア崩壊・分裂に対する否定論の主な根拠

否定的な見解を持つ専門家や政治家が指摘する懸念点は、主に以下の3点に集約されます。

1.核兵器と大量破壊兵器の拡散リスク

ロシアは世界最大級の核兵器保有国です。国が少数民族ごとに分裂したり、中央政府の統制が失われたりした場合、数千発の核弾頭や化学兵器が誰の手に渡るのかが不透明になります。

旧ソ連崩壊時(1991年)は、米国などの主導により核を一箇所(ロシア)に集約させることに成功しましたが、今回の戦争による混乱での崩壊は、より暴力的で制御不能なものになると予測されています。テロリストや過激派に核が流出するシナリオを、国際社会は最も恐れています。

2.「プーチン以上の過激派」の台頭

「プーチンはマシ」という論調の背景には、現在の政権を支えるエリート層(シロヴィキ)や軍事ブロガーの中に、プーチン氏よりもさらに好戦的で、核の使用を厭わない超国家主義者が多数存在するという現実があります。

プーチン氏が失脚した後に民主的な政権が誕生する保証はなく、むしろより予測不能で暴力的な独裁者が現れる可能性が高いと見る専門家も少なくありません。

3.ユーラシア全域の内乱と難民問題

ロシア連邦は多民族国家であり、分裂が始まれば各地で境界線をめぐる武力衝突や民族浄化が発生する恐れがあります。

かつてのユーゴスラビア紛争の巨大版がユーラシア大陸で起きることになり、数千万単位の難民が欧州やアジアへ押し寄せることになります。また、シベリアなどの資源地帯をめぐって中国などの近隣諸国が介入し、世界大戦の火種になることも懸念されています。

欧米諸国が狙う「軟着陸(ソフトランディング)」

こうした理由から、欧米の主要国(特に米国やドイツなど)の本音は「ロシアの完全な崩壊」ではなく、「ウクライナで勝てない程度に弱体化させ、かつ国内の秩序は維持させる」という極めて難しいバランスを維持することにあります。

これは、一気に崩壊させることで生じる「未知の混乱」を避けるための、消極的な安定を選択していると言えます。

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