「インドネシアやタイは天然ガスを使って発電でEVと相性がいい。内燃車はシェアを失う」との予測が外れた

中国EVメーカー「優遇」したタイとインドネシア、国内受注増につながらず…マレーシアは輸入規制に転換

マレーシア政府が2026年7月から、店頭での販売時に高額となるような事実上のEV輸入制限措置を導入します。

これは、先行して中国製EVの輸入を優遇したタイやインドネシアで、国内部品メーカーへの発注や雇用が増えず、値引き競争による市場の混乱を招いたことを教訓にしたものです。

マレーシアは2025年に新車販売台数で東南アジア首位となっており、独自の国民車メーカー2社(プロドゥア、プロトン)が市場の6割超を占めています。

今回の規制は、これら国内メーカーの保護と、外資による国内での工場建設や部品調達を直接促す狙いがあります。

このニュースについて、さらに詳しく解説します。

マレーシアの新しいEV輸入規制の中身

マレーシア政府が導入する規制は、通関時の申告時点で20万リンギット(約800万円)以上のEVのみを輸入可能とするものです。

これに物品税などが上乗せされるため、店頭に並ぶときには非常に高額な車となります。

2025年末まではEVの関税や物品税が免除されていたため、中国のBYDなどが販売を伸ばしていましたが、今回の規制により安価な外国製EVの流入は厳しく止まることになります。

タイとインドネシアの失敗を回避

タイとインドネシアは、EV市場の拡大と工場誘致を狙って輸入優遇策を先に行いました。

その結果、中国メーカーの工場は建ったものの、主要な部品は中国から持ち込まれることが多く、現地の部品会社への受注や雇用にはあまり結びつきませんでした。

さらに、中国メーカーによる激しい値引き合戦が起きたことで、消費者が「もっと安くなるのではないか」と買い控えを起こし、自動車市場全体が冷え込む事態になりました。

マレーシアは、この状況を「二の舞い」として警戒し、先手を打って輸入規制へと舵を切りました。

特異なマレーシア市場と今後の見通し

マレーシアは人口規模で大きく上回るインドネシアやタイを抜き、2025年の新車販売台数で東南アジアトップ(82.1万台)になりました。

市場の特徴は、プロドゥア(シェア45%)とプロトン(シェア19%)という2つの国民車メーカーが圧倒的な強さを持っている点です。

過度な価格競争が起きておらず、市場の健全性が保たれているため、今回の規制によって外国メーカーがマレーシア国内での現地生産や投資を本格化させる可能性が高まっています。

 

 

国家主導の産業振興策が失敗

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中国が関わるEV誘致政策の停滞は、国内の生産能力が過剰になった結果、安価な製品を海外へ一気に吐き出すという、国家主導の産業振興策(計画経済的な手法)が抱える典型的な課題が表面化したものといえます。

政府の補助金によって短期間で巨大な産業を育てる手法は、初期の立ち上がりには強いものの、需要を無視した過剰生産を招きやすく、結果として進出先の現地産業を圧迫して強い警戒(規制強化)を招くという悪循環に陥っています。

この構造的な問題について、さらに詳しく解説します。

国際的な摩擦を生む「過剰生産」の構造

中国の産業政策は、国家が目標を定め、補助金や税制優遇、融資などを集中させて特定の産業を一気に拡大させる手法を得意としています。EV(電気自動車)や太陽光パネル、リチウムイオン電池などがその代表例です。

しかし、この手法は国内市場の需要をはるかに超える生産能力を作り出してしまう傾向があります。国内で消化しきれなくなった過剰な在庫は、国境を越えて安価な価格で輸出されるため、今回の東南アジアの例のように、進出先の国内産業を脅かす要因となります。

進出先での「果実」が残らない仕組み

タイやインドネシアが直面した「中国勢への優遇措置が国内の雇用や受注につながらなかった」という問題も、中央集権的なサプライチェーン(部品調達網)の仕組みが背景にあります。

中国のEVメーカーは、核心的な部品や技術、さらには原材料にいたるまで、自国内で完結した強固な調達網をすでに構築しています。そのため、海外に組み立て工場をつくったとしても、重要な部品は中国から輸入するケースが多く、現地企業の参入や技術移転が進みにくいという性質があります。現地側からすれば、「市場や優遇措置を提供したのに、経済的な恩恵が地元に落ちない」という不満につながることになります。

自滅的な価格競争と市場の混乱

計画経済的なアプローチでは、市場の自然な需給バランスよりも「生産量」や「シェア拡大」が優先されることがあります。その結果、中国国内で行われているような激しい値下げ競争がそのまま海外市場にも持ち込まれます。

一見、消費者にとっては安く買えるメリットがあるように見えますが、急激な価格崩壊は中古車価格の暴落を招き、自動車ローンを組む金融機関のリスクを高めます。さらに「待っていればもっと下がる」という買い控えの心理を植え付けるため、マレーシアが警戒したように、自動車市場全体の健全性を損なう結果をもたらします。

 

 

geminiは以前に「インドネシアやタイは天然ガスを使って発電でEVと相性がいい。内燃車はシェアを失う」と主張していなかった?

geminiは以前「内燃車はシェアを失う」と主張していなかった?

過去の対話において、インドネシアやタイのエネルギー構成(天然ガス発電など)や政府の積極的な誘致政策を踏まえ、「EVシフトが進みやすく、従来の内燃機関車がシェアを落とす可能性がある」という予測をお伝えしたことは事実です。

しかし、当時の予測は「エネルギーの適性」や「政府の数値目標」に重きを置いたものであり、今回ニュースとして表面化した「中国製EVの急激な流入による現地経済への悪影響」や、それを受けた「マレーシアの規制転換(防衛策)」という実態の変化を完全に見落としていました。

見通しが不十分であり、事実と異なる方向性の説明になっていたことをお詫びいたします。

この予測のズレが生じた原因と、現在の状況についてさらに詳しく解説します。

過去の予測と今回の現実のズレ

以前の説明では、タイやインドネシアが天然ガスや地熱などの資源を持ち、電力インフラの観点からEVを受け入れる下地があること、そして両国政府が積極的な優遇措置(関税免除や補助金)を打ち出していたことから、EVへの移行が順調に進むという見方を重視していました。

しかし、実際に起きたのは以下の通り、予測とは異なる経済的な摩擦でした。

1.産業の空洞化という盲点

政府の優遇策を利用して中国のEVメーカーが急速に市場を抑えましたが、現地に工場をつくっても「主要部品をすべて中国から持ち込む」という形がとられました。

その結果、タイやインドネシアが期待していた「地元の部品メーカーの受注増」や「雇用の創出」がほとんど起きず、国内産業が潤わないという構造的な問題が発生しました。

2.過剰な値下げによる市場の冷え込み

中国国内の過剰生産による在庫が安価に流入し、現地で激しい価格競争が起きました。

これにより車の価値が急落し、消費者が「さらに安くなるまで待とう」と買い控えを起こしたため、EVの普及どころか自動車市場全体の販売台数が減少(タイは大幅減、インドネシアも前年割れ)するという事態に陥りました。

マレーシアの動きが示す新しい局面

このタイやインドネシアの状況を間近で見たマレーシアは、「一見、相性が良く見えるEVの早期誘致」を止め、自国の自動車産業(プロドゥアやプロトン)を守るための輸入規制へ舵を切りました。

これにより、東南アジア全体が単純に「内燃機関車からEVへ一直線にシフトする」という流れではなくなり、各国が自国の雇用や産業基盤を守るためにブレーキを踏む、あるいは防衛策を講じるという複雑な局面に変化しています。

当時の見通しは、こうした「産業保護の観点」や「過剰供給による市場の自滅リスク」への考慮が不足しており、偏った分析になっていたことを重ねて認識しております。

 

 

インドネシア・タイ・マレーシアでの中国製EVの最新の評価

東南アジア(タイ・インドネシア・マレーシア)における中国製EVの最新評価は、急激な普及の裏で、品質のばらつきと下取り価格(残価)の深刻な下落という課題が表面化しています。

大手ブランド(BYDなど)の走行性能や衝突安全性は高く評価されているものの、新興・中堅ブランドの電子系トラブルや部品供給の遅れが目立ちます。

さらに、中国メーカー同士の激しい値下げ競争とモデルチェンジの早さが災いし、中古車市場での下取り価格は既存のガソリン車やハイブリッド車に比べて大幅に暴落しています。

故障率と品質の動向

メーカーやブランドの規模によって、品質と信頼性の評価は二極化が進んでいます。

BYDなどの大手・上級ブランドは、主要な駆動系(バッテリーやモーター)のトラブルが比較的少なく、J.D.パワーなどの調査でも欧州のプレミアムブランドに近い信頼性スコアを記録するモデルが出ています。

一方で、新興ブランドや低価格モデルを中心に、エアコンの不具合、タッチパネルのフリーズ、センサー類の誤作動といった電子系統のマイナートラブルが多発しています。

また、東南アジア特有の高温多湿な気候や突発的な冠水道路への耐性について、一部の車種で配線の腐食や絶縁エラーが報告されており、長期的な耐久性への懸念は拭えていません。

さらに、現地での部品備蓄が不十分なブランドが多く、軽微な故障であっても中国からの部品取り寄せに数週間から数ヶ月を要し、オーナーの不満につながっています。

安全性の評価

衝突安全性の面では、近年発売された主要な中国製EVの多くが「Euro NCAP」や「ASEAN NCAP」で最高ランクの5つ星を獲得しており、物理的な堅牢性は大きく向上しています。

しかし、自動ブレーキや車線維持アシストなどの運転支援システム(ADAS)において、現地の複雑な交通環境(バイクの割り込みや未整備の白線)にソフトウェアが最適化しきれず、過剰な警告や誤作動を起こすケースが指摘されています。

バッテリーの安全性については、中国製EVの多くが熱暴走のリスクが低いLFPバッテリー(リン酸鉄リチウムイオン電池)を採用しているため、車両火災などの重大事故の発生率は低く抑えられています。

下取り価格(残価)の暴落

現在、東南アジアのユーザー間で最も深刻な問題となっているのが、中古車価格の大幅な値崩れです。

中国メーカーはシェア拡大のために新車の値下げキャンペーン(8~20%以上の値引き)を頻繁に行っており、これが既存オーナーの中古車価値を直撃しています。現行モデルが安く買えるため、あえて中古車を選ぶメリットが薄れているのが現状です。

また、スマートフォンのように数ヶ月から1年単位で矢継ぎ早に新機能を持った改良型が投入されるため、購入したばかりの車両がすぐに型落ちとなり、市場価値が急速に低下します。

日本車などのガソリン車やハイブリッド車が数年後も高い残価率を維持するのに対し、中国製EVは購入後1~2年での値落ち率が既存車の約2倍に達するケースもあり、ディーラーが下取りを拒否するか、極端に低い査定額を提示することが問題視されています。

各国固有の状況と規制の動き

タイでは、EVの市場シェアが20%を超えるなど普及が進んだ結果、値下げ競争による中古車相場の崩壊が最も顕著に現れており、一部の販売網縮小や撤退を余儀なくされる中堅ブランド(ネータなど)も出ています。

インドネシアでは、政府の誘致によりBYDなどが大規模な現地工場の建設を進めており、新車販売は堅調ですが、充電インフラの整備遅れとアフターサービスの質の低さが購入後のリスクとして警戒されています。

マレーシアでは、2026年に入り政府(通商産業省)が国内産業の保護と安易な価格競争を抑制するため、完成車(CBU)として輸入されるEVに対して最低価格(約30万リンギット以上)や最低出力を義務付ける新しい規制を導入しました。これにより、今後は現地組み立て(CKD)を行わない低価格な中国製EVの輸入が事実上制限され、市場環境が激変しています。

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