イギリスは10年間で首相が7人も入れ替わった。これは政治家の問題ではなくインフレ、俯瞰すれば世界情勢の問題

英国:10年間で7人の首相

  • UK: 7 Prime Ministers In 10 Years

イギリスのキア・スターマー首相が、EU離脱(ブレグジット)の国民投票からちょうど10年を迎えるタイミングで辞任を発表しました。これにより、イギリスは過去約10年間で7人目の首相を迎えることになり、政治的な流動性がさらに高まっています。

スターマー首相の辞任と背景

スターマー首相は、2024年の総選挙で労働党を歴史的な大勝利に導いたものの、就任からわずか約2年で辞任に追い込まれました。

主な要因として、地方選挙での歴史的な大敗や、党内からの退陣圧力が挙げられます。また、緊縮財政からの脱却や具体的な成果を実感できない国民の不満、政策の撤回(Uターン)の繰り返し、さらには次期総選挙を見据えた党内刷新の動きが背景にあります。

後任の有力候補としては、直近の補欠選挙で国政に復帰した前グレーター・マンチェスター市長のアンディ・バーナム氏らの名前が挙がっており、7月に党首選が始まる予定です。

過去10年間のイギリス首相の変遷

2016年のブレグジット国民投票以降、イギリス政治は異例のスピードでリーダーが交代する激動の時代を迎えています。

1. デーヴィッド・キャメロン(国民投票の敗北を受けて辞任)
2. テリーザ・メイ(離脱交渉の難航により辞任)
3. ボリス・ジョンソン(不祥事や党内離反により辞任)
4. リズ・トラス(経済政策の混乱により史上最短で辞任)
5. リシ・スナク(2024年総選挙の敗北により退陣)
6. キア・スターマー(党内支持を失い辞任を発表)

 

 

ソ連の崩壊以降は世界的に比較的平和な時代が続いた。低金利の時代で経済は順調だった。コロナ以降、ウクライナ戦争など時代の転換点となった。政治家が悪いのではなく、タイミングの問題。ウクライナ戦争以降は主にインフレが原因

歴史的な大転換期

ソ連崩壊後の冷戦終結から、新型コロナウイルスの世界的流行(パンデミック)やウクライナ情勢の緊迫化に至るまでの期間は、世界経済の構造が大きく変化した激動の時代でした。この変化の要因は、政治家の個別の政策というよりも、歴史的なマクロ経済の潮流や構造的な転換が大きく影響しています。

冷戦終結からパンデミック前までの経済環境

ソ連の崩壊以降、世界は「グローバル化の黄金期」を迎え、比較的安定した平和な時代が続きました。

この時代は、中国や旧東側諸国が世界市場に組み込まれたことで、安価な労働力と製品が世界中に供給されました。結果として、先進国は長期にわたって低インフレを維持することが可能になりました。

低インフレ環境が続いたため、各国の中央銀行は低金利政策を維持することができ、これが企業の投資や経済成長を後押しする順調な背景となりました。

パンデミックとウクライナ情勢による転換

2020年以降の新型コロナウイルスの流行と、2022年に始まったウクライナ情勢の緊迫化は、それまでの安定した経済環境を一変させる構造的な転換点となりました。

これらの事象は、単なる一時的な混乱にとどまらず、長年続いた「低金利・低インフレ」の時代を終わらせる契機となりました。

ウクライナ情勢以降のインフレの要因

現在の世界的な経済の不安定さや混乱は、主にインフレ(物価高騰)が引き金となっています。このインフレを引き起こした構造的な要因は以下の通りです。

  1. 資源・エネルギー価格の高騰
    ロシアからの天然ガスや原油の供給が滞ったことで、エネルギー価格が急騰し、あらゆる産業のコストを押し上げました。
  2. 食料危機の発生
    ウクライナとロシアは世界有数の穀倉地帯であるため、小麦などの農産物の輸出が停滞し、世界的な食料価格の上昇を招きました。
  3. 供給網の分断とコスト上昇
    効率性を重視した従来のグローバルな流通網が機能不全に陥り、各国は安全保障を重視した独自の調達ルートへの変更を余儀なくされました。これにより、生産や輸送のコストが恒久的に上昇しました。

政治的背景とタイミングの関与

こうした歴史的な大転換期においては、指導者個人の資質や政策の良し悪しだけでなく、構造的な変化が重なる「タイミング」が経済に決定的な影響を与えます。

長年の低インフレ要因が消失するタイミングで、エネルギーと食料の供給ショックが同時に発生したことが、現在の急激なインフレと金利上昇を招く最大の要因となっています。

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