中国でフェンタニルが量産される背景

麻薬

 

薬物、サイバー、経済など

フェンタニル問題は、国家安全保障上の「非対称戦(テロやゲリラ戦)」

【ワシントン発 ビルガーツの眼】フェンタニルは非対称戦兵器 報告

  • フェンタニルが中国による対米非対称戦兵器として利用されているとするシンクタンク「中国共産党生物脅威イニシアチブ」の最新報告書を紹介しています。この報告書によれば、中国はメキシコの麻薬カルテルを秘密裏に支援し、合成麻薬フェンタニルを米国社会に流入させることで、米国の弱体化や社会不安定化を狙っていると指摘されています。

主なポイントは以下の通りです。

  • 中国共産党とその情報機関は、非国家組織(メキシコ麻薬カルテル)と連携し、フェンタニルを米国への攻撃手段(生物化学兵器)として活用している。
  • フェンタニルはヘロインの50倍以上強力で、極めて少量で致死量に達するため、社会的な破壊力が高いとされています。
  • 中国は、フェンタニルやその前駆体化学物質をメキシコのカルテルに供給し、カルテルが米国内に密売拠点を展開している。
  • この手法は「超限戦」(Unrestricted Warfare)の一環であり、軍事力で劣る中国が米国のような強国に対抗するため、非対称的な手段(薬物、サイバー、経済など)を戦略的に用いるものとされています。
  • 米国の指導者や安全保障機関は、こうしたネットワークの複雑さと拡大に直面しており、情報収集や対策の強化が求められている。

また、米国ではフェンタニルによる薬物中毒死が過去最高水準に達しており、この危機が中国の「逆アヘン戦争」とも呼ばれています。米政府は中国との協力を模索しているものの、地政学的な対立や規制の抜け穴が問題解決を難しくしています。

このコラムは、フェンタニル問題を単なる薬物犯罪ではなく、国家安全保障上の「非対称戦」の一環として捉えるべきだと警鐘を鳴らしています。

 

 

中国経済の悪化、産業基盤、国際的な密輸ネットワーク、規制の限界、社会的圧力

なぜ中国で「フェンタニル」が量産されているのか…

  • 「飲み会とタバコ禁止令」が下った上海で起きていること公務員対象の法律が地方経済を圧迫している

中国でフェンタニルが量産されている背景には、いくつかの要因が指摘されています。

  1. 経済の悪化
    中国国内の深刻な景気悪化が一因とされています。上海ですら消費が低迷し、ブランドショップや飲食店にも客足が遠のいています。地方経済の悪化も深刻で、「お金を使わない人が増えた」「地方はもっとひどい」という声が現地から聞かれています。こうした経済状況の悪化が、合法・違法を問わず化学品メーカーや一部の業者がフェンタニルのような高収益の合成麻薬生産に流れる土壌となっていると指摘されています。
  2. 化学品メーカーの集積
    武漢市など中国には多数の化学品メーカーが存在し、これらの企業がフェンタニルの原料や製品の製造に関わっているとみられます。こうした産業基盤が、フェンタニルの量産を支えています。
  3. 国際的な密輸ネットワーク
    近年の報道によると、中国から日本(特に名古屋)を経由して米国にフェンタニルが不正輸出されている疑いが浮上しています。米麻薬取締局(DEA)も関与組織を追っており、これは「新アヘン戦争」とも形容される状況です。
  4. 規制や監視の限界
    中国政府は一部規制を強化しているものの、膨大な化学品メーカーと広範な流通経路を完全に監視・管理するのは難しく、違法な生産・輸出が後を絶たない状況です。
  5. 社会的要因
    公務員の飲み会やタバコの禁止令など、社会規範や規制が強まる中で、経済的に追い詰められた一部の業者や個人がリスクの高い違法ビジネスに手を染めるケースも増えていると考えられます。

このように、中国でフェンタニルが量産される背景には、経済の悪化、産業基盤、国際的な密輸ネットワーク、規制の限界、社会的圧力など複数の要素が複雑に絡み合っています。

 

 

フェンタニルはどれほど強力で、なぜ違法薬物市場で重宝されるのか

フェンタニルの強力さと危険性

  • フェンタニルは合成オピオイドの一種で、医療用としては強力な鎮痛剤ですが、違法薬物として流通すると極めて危険です。
  • モルヒネの約100倍、ヘロインの約50倍もの鎮痛効果があり、わずか2mg(塩の数粒程度)が致死量とされています。
  • 脳の血液脳関門を容易に通過し、少量でも急速に強い多幸感や鎮痛効果をもたらしますが、その分、効果が切れるのも早く、強い禁断症状や依存を引き起こします。

なぜ麻薬の売人にとって都合がいいのか

  • コストと効率:フェンタニルは非常に少量で効果があるため、運搬や隠匿が容易です。アメリカ全土に出回っている量は「トラック1台分」にも満たないとされます。
  • 製造の容易さ:化学合成で大量生産でき、モルヒネやヘロインのようにケシ畑を必要としません。
  • 混ぜ物としての利用:売人は他の違法薬物(ヘロイン、コカイン、メタンフェタミンなど)にごく微量のフェンタニルを混ぜて流通させます。これにより薬物の「効き」を強め、依存性を高めてリピーターを増やす狙いがあります。
  • 利益率の高さ:少量で強い効果があるため、同じ量のヘロインやコカインよりもはるかに高い利益が得られます。

社会への影響

  • フェンタニルの過剰摂取による死者は2013年から2023年の10年間でアメリカだけで40万人を超えています。
  • 2023年にはアメリカの麻薬取締局(DEA)が1億1500万錠以上のフェンタニル入り錠剤を押収し、そのうち70%は致死量を超えるフェンタニルが含まれていました。
  • 他の薬物に混ぜられていることが多く、利用者が知らずに致死量を摂取してしまうケースも多発しています。

まとめ

フェンタニルは「最悪の薬物」とも称されるほど強力かつ危険であり、その高い効力と製造・流通の容易さから、違法薬物市場で売人にとって極めて都合の良い存在となっています。極少量で致死的なため、利用者だけでなく社会全体に深刻なリスクをもたらしています。

 

 

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