孤独と認知症

by Huey Freeman

60万人以上のデータを分析した研究で、孤独を感じている人は認知症の発症リスクが31％高いと判明。孤独は脳に深刻な影響を及ぼします。

60万人以上のデータを分析した研究により、孤独を感じている人は認知症の発症リスクが31％高いことが明らかになっています。孤独や社会的孤立は脳に深刻な影響を及ぼし、認知症リスクを上昇させる重要な要因とされています。

2018年の237万人を対象とした系統的レビューでは、社会的孤立が認知症リスクを高めることが示されました。
2023年の九州大学の研究では、社会的孤立者は脳の白質病変が多く、認知機能が低下しやすいことが判明しました。これにより、孤立者は認知症リスクが高いと考えられています。
アメリカの2023年の研究では、孤独感が頻繁にある40〜79歳の人は、孤独を感じていない人に比べて10年間で認知症を発症する可能性が2倍であることがわかりました。ただし、80歳以上では差は小さいとされています。

社会的孤立は、脳への刺激が減少し、脳の特定領域の萎縮を促進します。特に記憶を司る海馬の容量減少が認められ、これが認知機能低下の一因とされています。
孤独感は、海馬の神経新生を低下させ、神経炎症を増加させる可能性があります。さらに、ストレスによるコルチゾールの上昇が神経細胞の機能を損ない、認知症進行を促すと考えられています。

週1回未満の他者との接触頻度の人は、週3回以上の人に比べて海馬の容積減少が大きいことが報告されています。
一方、独居者は誰かと同居している人に比べて海馬の萎縮スピードが緩やかであることも示されました。これは、独居者が自立した生活を送ることによる脳への刺激や、地域社会や自治体からの支援がストレス軽減に寄与している可能性があるためです。

孤独・孤立は認知症だけでなく、ストレス増加や免疫力低下を引き起こし、うつ病や自殺リスクの増加、さらには早死リスクが50％高まるなど、命に関わる重大な悪影響をもたらします。

孤独や社会的孤立は、脳の機能低下や海馬の萎縮を通じて認知症の発症リスクを31％以上高めることが複数の大規模研究で示されています。特に孤独感は40〜79歳の比較的若い高齢者で顕著にリスクを増加させるため、社会的なつながりの維持や孤独感の軽減が認知症予防において重要な対策とされています。