ただし刑務所の内部規則が優先される
独裁判所「刑務所内での大麻OK」判決──なぜそんなことに?
判決の概要
- 2025年6月、ドイツ・ベルリンの裁判所は、刑務所の居室が大麻法(Cannabisgesetz, CanG)における「常居所(長期にわたって居住している場所)」に該当すると認定し、受刑者が居室内で50g以下の大麻を所持していても刑事犯罪や行政違反には当たらないとする判決を下しました。
なぜこのような判決になったのか
- ドイツでは2024年4月から嗜好用大麻の個人使用が合法化され、成人は「常居所(自宅など)」で最大50gまでの乾燥大麻を所持できると定められています。
- 「常居所」とは一時的な滞在先ではなく、継続的に居住している場所とされ、通常は6カ月以上の滞在が条件です。
- 今回のケースで受刑者は6カ月以上刑務所の居室で生活しており、裁判所はこの居室が「生活の中心=常居所」と判断しました。
- 大麻法やその立法過程にも「刑務所は適用外」とする明確な根拠がなかったため、裁判所は刑務所の居室にも「常居所」の概念が適用されると結論づけました。
刑務所内での大麻所持の現実的な扱い
- 法律上は50g以下の大麻所持が認められるものの、刑務所ごとの内部規則で秩序や安全維持のために大麻の使用や所持を制限することは可能です。
- そのため、法律違反にはならなくても、内部規則違反として刑務所内で処罰を受ける可能性は残ります。
背景:ドイツの大麻合法化の流れ
- ドイツは2024年に嗜好用大麻の個人使用を合法化し、ヨーロッパでマルタ、ルクセンブルクに続く3番目の合法国となりました。
- 成人は公共の場で25g、自宅などの常居所では50gまでの所持が認められています。
- ただし、学校や公園、青少年施設、軍事区域などでは使用が禁止されています。
- 刑務所に関する制限は法律に明記されていなかったため、今回の判決が出ることとなりました。
まとめ
- この判決は、ドイツの大麻法における「常居所」の定義が刑務所の居室にも適用されるとした点で画期的です。ただし、実際の運用では刑務所の内部規則が優先されるため、受刑者が自由に大麻を使用できるわけではありません。
大麻の新常識 ―大麻では死なない、大麻に身体依存はない、でも……―
内容・特徴
- 本書は、医師・元官僚・科学者・弁護士・元麻薬取締官・起業家など、多様な立場の専門家による対談形式で構成されています。
- 大麻推進派・慎重派・反対派が一堂に会し、最新の科学的知見や現場の実態、政策の問題点、社会的な違和感、利権構造などについて多角的に議論しています。
主な論点
- 大麻で死なない・身体依存はない・・・医学的エビデンスに基づき、「大麻による致死例は極めて稀」「アルコールやタバコのような強い身体依存は認められない」といった事実を確認しています。
- それでも残る問題点・・・大麻の安全性だけでなく、社会的・法的なリスクや、精神的依存・若年層への影響、政策による弊害(例:逮捕による社会的ダメージ)など、単純な「安全・危険」では語れない複雑な実態についても言及しています。
目次(一部抜粋)
大麻の基本知識
大麻の歴史と文化
政府方針と法改正の動向
医療用大麻の現状と課題
合法化地域での実態
科学的に分かっていること・分かっていないこと
大麻取締法の今後
利権や厳罰主義の是非
監修者の視点
- 松本俊彦医師は、薬物依存症治療の現場経験から「大麻の有害性よりも、逮捕など社会制度の方が弊害を生む場合がある」と述べています。ただし、これは個人的体験に基づく部分もあり、嗜好品論争は最終的に感情論に陥りやすいと冷静に分析しています。
本書の意義
- 賛成・反対の立場を超え、読者が自分自身で「大麻」について考え、判断するための材料を提供することを目的としています。
- 2024年の大麻取締法改正を受け、変化する社会の中で「新常識」を提示する一冊です。
まとめ
- 単なる賛否の主張にとどまらず、科学・医療・法律・社会の各側面から大麻を多角的に検証し、「大麻では死なない」「身体依存はない」という事実と、なお残る社会的・政策的問題を冷静に論じる書籍です。読者が自ら考えるための最新情報と視点を提供しています。