中国製インバーターの“遠隔停止”は現実に起きた
記事の要約
1. 中国製インバーターに“隠し通信機器”発見
- 2025年5月、ロイター通信が「中国製インバーター(太陽光発電の電力を送電網に接続する装置)に、仕様書にない通信機器が内蔵されていた」と報道。
- 遠隔操作でインバーターを停止し、送電を遮断できる可能性が指摘された。
2. 実際に海外で“遠隔停止”が発生
- 2024年11月15日、Deye社(中国メーカー)はアメリカ、イギリス、パキスタンなど複数国の自社製インバーターを遠隔操作で停止。
- コントローラー画面には「このインバーターはアメリカなどでの使用が許可されていません」と表示され、送電が不可能になった。
- Bluesky等SNSでも複数の報告があり、事実と裏付けられている。
3. “リモート診断”という名の常時監視・制御
- Deye社は「リモート診断のためインバーターをオンラインに」と案内。
- インターネット接続により、メーカーは運転状況を常時把握し、アップデートや停止コマンドも送信可能な仕組み。
- スマホアプリの自動アップデートのように、ユーザーは疑問を持たずにネット接続・アップデートを許可しがち。
4. ファイアウォールでは防げない
- インバーターからメーカーサーバーへ「端末発信型」の通信なので、ファイアウォールは不正なコマンドを検知できない。
- 外部ハッカーによる攻撃より、メーカー自身による正規手順での制御の方が脅威として大きい。
5. メガソーラーや風力発電でも同様
- リモートメンテナンスは大規模発電所でも一般的。
- 通信経路がインターネットである限り、メーカーによる遠隔制御リスクは避けられない。
6. 対策はほとんどない
- 「中国製インバーターを買わない」「ネットに接続しない」以外に現実的な対策はほぼない。
- アップデートを拒否すれば機器が正常動作しないリスクも。
7. 停止の影響
- 局地的な停止なら大きな影響は少ないが、広域・大規模な一斉停止が起きれば、電力系統全体に深刻な混乱・停電リスクがある。
解説とポイント
なぜ問題なのか?
- インバーターは太陽光発電の心臓部。これが遠隔で止められると、発電所・家庭の電力供給が一瞬で遮断される。
- メーカーが正規の機能として制御権を持つため、国家の指示や企業の都合で一斉停止も技術的に可能。
- IoT家電と同じ構造だが、電力インフラという重要性が段違い。
どんなリスクがある?
- 安全保障リスク:特定国の意向で他国の電力供給を操作できる。
- 社会インフラの脆弱性:大規模なブラックアウト(停電)を引き起こす可能性。
- 個人・企業の依存:利便性やサポートのためにネット接続・アップデートを許可しがち。
どうすればいい?
- 記事は「中国製インバーターを避ける」「ネット接続しない」以外に有効な対策はほぼないと結論。
- 実際には、国や電力会社レベルでの規制・監査、国内メーカーの育成、セキュリティ基準の強化などが必要。
まとめ
- 中国製インバーターの遠隔停止は「技術的に可能」どころか「実際に起きた」。
- 便利なリモート管理機能の裏に、重大なインフラリスクが潜む。
- 利便性と安全保障リスクのバランスをどう取るか、社会全体での議論・対策が求められる。