キンシャサの「クルナ団」とは
- コンゴ民主共和国の首都キンシャサには、「クルナ(Kuluna)」と呼ばれる不良暴力集団が存在します。クルナ団は、主に若者を中心としたグループで、強盗、恐喝、殺人、破壊行為などの凶悪犯罪を繰り返しています。
特徴と活動実態
- クルナ団はキンシャサの下町や人口密集地域(例:バンダルンガ、キンタンボ、リングァラなど)を拠点に活動しています。
- 刃物やなたなどの武器を使用し、民家や商店、通行人を襲撃し金品を強奪、時には放火や殺傷事件も発生しています。
- 残忍な事件も多く、被害者の腕を切り落とすなどの報告もあります。
- クルナ団の多くは家庭を持ち、自宅に住んでいる若者で、しばしば親が犯罪の共犯となり、得た金品で生計を立てているケースもあります。
- コミュニティ間の対立に発展することもあり、単なる若年層の犯罪集団にとどまらない社会問題となっています。
治安への影響
- クルナ団による犯罪は、キンシャサの治安を著しく悪化させており、夜間はもちろん、日中でも市民生活に大きな脅威となっています。
- 特に郊外では警察の配置が少なく、クルナ団による押し込み強盗や誘拐事件が多発しています。
- 軍や警察も彼らを十分に抑えられない現状があり、警察官や軍人自身が加害者となるケースも報告されています。
対策と現状
- 2013年以降、国家警察による「リコフィ作戦(パンチ一発作戦)」などの掃討作戦が実施され、一定の成果を上げたものの、人権侵害や市民への被害も発生し、根本的な解決には至っていません。
- 犯罪や政情不安による暴動も多く、住居選定や日常生活においても厳重な注意が必要とされています。
補足:シェゲとの違い
- キンシャサには「シェゲ(shegués)」と呼ばれるストリートチルドレンのグループも存在しますが、クルナ団とは異なり、シェゲは主に路上生活者であるのに対し、クルナ団の多くは家庭を持つ若者です。
まとめ
- キンシャサのクルナ団は、都市の治安を大きく脅かす若年層中心の暴力集団であり、日常的に強盗や殺傷事件を引き起こしています。警察や軍による取り締まりも続いていますが、根本的な解決には至っていません。
資金を提供している人がいるのか?
- 現時点で公開情報や大使館の安全情報などによれば、キンシャサの「クルナ」と呼ばれる暴力集団に対して、特定の資金提供者(スポンサー)がいるという具体的な情報は確認されていません。
- クルナ団は主に貧困や社会不安を背景に、強盗や恐喝、誘拐などの犯罪行為によって自ら資金を得ているとされています。また、警察や軍人が犯罪に関与するケースもあると報告されていますが、組織的に外部から資金提供を受けているという証拠は見当たりません。
- したがって、現時点で「クルナ団」に資金を提供している特定の人物や団体が存在するという情報はありません。クルナ団の活動資金は主に犯罪行為によるものと考えられます。
- 『名前を言わない戦争:終わらないコンゴ紛争』(ジェイソン・K・スターンズ著、白水社、2024年6月刊)は、1996年以降コンゴ民主共和国(旧ザイール)で続く複雑かつ出口の見えない紛争の全体像と、その理論的意義を明らかにした研究書です。
内容の特徴
- 現地調査と理論的分析の融合
著者は長年現地で調査を行い、100を超える武装勢力や「紛争鉱物」と呼ばれる資源の存在、国連平和維持部隊の活動など、コンゴ東部紛争が「新しい戦争」の様相を呈していることを多角的に分析しています。 - 歴史的背景の詳細な解説
植民地時代から独立、モブツ政権の独裁とその崩壊、そして1996年以降の終わりなき紛争まで、コンゴの歴史的経緯を丹念にたどり、なぜ紛争が終わらないのかを解き明かします。 - 交戦当事者の利益と社会構造に着目
紛争のダイナミクスを、国家や武装勢力、外部アクターの利害関係、社会構造の変化と関連づけて新たな紛争理論を提示しています。 - 被害の深刻さと報道の希薄さ
膨大な犠牲者や避難民、人権侵害が続く一方で、国際的な報道や関心が乏しい現実にも警鐘を鳴らしています。
著者について
- ジェイソン・K・スターンズ(Jason K. Stearns)
- 1976年生まれ。国連やNGOでコンゴ東部の調査研究に従事後、ニューヨーク大学でコンゴ研究グループを立ち上げ、現在はカナダのサイモン・フレイザー大学准教授。代表作に『Dancing in the Glory of Monsters』があります。
こんな方におすすめ
- アフリカ地域研究、国際関係論、現代紛争研究に関心のある方
- コンゴ紛争の全体像や現代の「新しい戦争」について知りたい方
- 紛争がなぜ終わらないのか、その構造的要因を理論的に理解したい方
「人的被害はもとより、100を超える武装勢力や紛争鉱物の存在など、『新しい戦争』の様相を呈するコンゴ東部紛争の全容を描き、紛争のダイナミクスをもとに交戦当事者の利益と社会構造に着目した新たな紛争理論を提示する」。