2025年10月08日 中国・北京で消費が著しく低下 党メディアが呼びかけも効果見られず
中国の主要都市で消費が著しく低下しており、特に北京では急激な落ち込みが顕著です。人民日報は10月の連休期間中に5日連続で署名入りの記事を掲載し、経済への信頼回復を国民に呼びかけましたが、専門家はこの呼びかけだけで現状を変えることは難しいと指摘しています。
北京の8月の社会消費品小売総額は前年同月比で11.4%減少し、1~8月の累計でも5.1%減少しました。これは自動車や家電の購入補助政策があっても消費低迷が続いていることを示しています。一方、上海では消費がやや持ち直したものの、全国平均を下回っています。
専門家の分析によると、消費低迷の主な要因は、住宅価格下落による資産価値の減少による「資産効果の逆転」、雇用と所得の圧力による可処分所得減少、そして都市の地域構造の違いによるものです。特に一線都市は政策の影響を受けやすく、内陸や二・三線都市は消費耐性が弱いとされています。
中国経済全体は習近平政権発足以降、成長鈍化が続き、米中貿易戦争やゼロコロナ政策、不動産・教育産業の規制強化によって落ち込みが深刻化しています。こうした中で、党メディアは中国共産党の指導力と集中した政策実行能力が経済安定の優位性だと主張していますが、経済学者はメディアの呼びかけが市場心理の安定を意図しているものの、不安の抑圧と見なされ逆効果の恐れもあると指摘しています。
さらに、評論家は中国が「タキトゥスの罠」に陥っており、経済下向きに伴う官民対立が社会の主要矛盾となっていると警告。財政配分が権力エリートに偏っていることが対立を深め、党内の権力闘争や経済全体への悪影響も懸念されている状況です。このままではソ連崩壊前の社会矛盾のような「ソ連型展開」が起こる可能性も示唆されています。
タキトゥスの罠
タキトゥスの罠とは、古代ローマの歴史学者タキトゥスの言葉に由来する政治の法則です。これは、政府が国民からの信頼を失うと、たとえ発言や政策が真実で正しいものであっても、国民はすべてを嘘や悪いことだと見なし、政府の言うことを全く信用しなくなる状況を指します。このため、信用を失った政府は何をしても悪く評価されるという悪循環に陥るのが「タキトゥスの罠」です。
ソ連型展開
「ソ連型展開」とは、ソビエト連邦(ソ連)における社会主義体制の構築や展開の様式、特に1920年代から30年代にかけて確立された政治・経済体制を指します。これは、共産党の一党独裁、国家による生産手段の国有化、中央集権的計画経済、軍事工業の発展などの特徴を持っています。ソ連型社会主義では、民主主義や基本的人権が制限され、スターリン時代には強制的な農業の集団化や重工業優先の国家主導工業化が強行されました。これにより経済成長も見られたものの、多くの政治的抑圧や権力集中も伴いました。
こうしたソ連型展開は第二次世界大戦後、東ヨーロッパ諸国にも影響を及ぼし、スターリン主義的な社会主義体制が拡大しましたが、1980年代以降のペレストロイカや東欧の民主化革命を経て崩壊に至りました。
要は、ソ連型展開はソ連が示した特有の政治・社会主義体制のモデルであり、それは強固な中央集権的管理と共産党独裁による社会統制を軸にしています。
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