ベッセント氏、UAEの銀行をイランとのつながりで標的に
- Bessent targets banks in UAE over Iran ties
米財務省のスコット・ベセント財務長官は、イランの資金源を遮断する新たな制裁キャンペーン「Operation Economic Outcast」の第一弾として、アラブ首長国連邦(UAE)にあるエジプト最大級の銀行「ミスル銀行(Banque Misr)」の支店を米国の金融システムから排除する方針を発表しました。同支店は、イランの「シャドーバンキング」の重要な抜け道として利用され、2024年1月から2026年6月にかけて103のダミー会社を通じて18億ドルの取引に関与したと指摘されています。米国は愛国者法311条を適用し、米国の銀行に対して同支店との取引仲介を禁止する規則案を出しました。また、米政府はイラン産石油の最大買い手である中国の大手銀行への制裁については、世界経済への混乱を考慮して慎重な姿勢を見せつつも、今後の選択肢として排除していません。
米財務省による今回の措置の概要と背景
今回の米財務省による措置は、イランの国際的な経済・金融取引を分離させる狙いがあります。
ミスル銀行UAE支店への制限措置
米財務省は、エジプトの大手銀行であるミスル銀行のUAE支店について、米国の金融機関が取引を媒介することを禁止する規則案を発表しました。
根拠法
米愛国者法(USA PATRIOT Act)第311条(主要なマネーロンダリング懸念機関に対する措置)
*指摘内容
2024年1月から2026年6月までに、103のフロント企業(ダミー会社)を経由し、約18億ドルの資金をイランの裏金融システム(シャドーバンキング)のために仲介したとされています。
手続
30日間の意見募集期間を経て正式発効する予定です。
その他の制裁措置
* イラン最大の銀行である「メリ銀行(Bank Melli)」のドバイ支店長に対する個別の制裁実施。
* イランへの資金洗浄に関与したとされる香港拠点のダミー会社に対する制裁。
対中国制裁への影響と今後の焦点
今回の措置に関連し、イランの最大の貿易相手国であり主要な石油買い手である中国に対する圧力の強さが焦点となっています。
中国大手銀行への制裁のリスク
米財務省はこれまでに中国の小型製油所(ティーポット)や中小企業に対する制裁は実施しているものの、中国の大型金融機関を標的にすることは世界金融システム全体に波乱を起こすリスクがあります。ベセント長官も「世界金融システムを破壊する意図はない」と述べ、各機関に改善の機会を与える姿勢を示しています。
トランプ大統領の姿勢
トランプ大統領は記者団に対し、中国系銀行への制裁が選択肢に含まれていることを示唆しています。
G20財務相会合での働きかけ
ベセント長官は、ノースカロライナ州アッシュビルで開催されるG20会合のバイ会談を利用し、各国の財務相に対しイランとの金融関係を遮断するよう圧力を強める方針です。
イランとUAEは反目し合っているのだと思っていたが違うの?
イランとUAE(アラブ首長国連邦)は政治・安全保障面で非常に対立してきた一方で、経済的には非常に深い実利関係を結んできた、複雑な「表裏一体の二面性」を持っています。
2つの国の複雑な関係性
両国が「反目している」と同時に「取引もしている」背景には、政治と経済のねじれがあります。
対立の側面(政治・安全保障)
* **領有権問題:** ペルシャ湾の3つの島(小トゥンブ、大トゥンブ、アブムーサ)の主権を巡り長年争っています。
* **親米・親イスラエル路線:** UAEは米国と同盟関係にあり、近年イスラエルとの国交を正常化したため、イランからは強く警戒されています。
* **地域紛争:** イエメン内戦などで互いに逆の勢力を支援し、代理戦争の対立構造にありました。
密接な側面(経済・裏のパイプ)
* **物流・金融の拠点:** ドバイなどを擁するUAEは、地理的にペルシャ湾を挟んですぐ向かいに位置します。米国の制裁下にあるイランにとって、UAEの金融機関やダミー会社は外部世界と米ドル決済を行うための命綱(シャドーバンキングの拠点)として機能してきました。
* **巨額の貿易:** UAEはイランにとって最大の輸入元であり、制裁下でも実利を優先して莫大な非公式取引が続けられていました。
まとめ
政治的には安全保障上の脅威として互いに警戒しつつも、経済的にはイランが抜け道として利用し、UAE側もそこから大きなビジネス利益を得てきたのが実態です。
近年は外交関係の修復(2022年の大使再派遣など)を模索する動きもありましたが、米国の強い制裁圧力や地域の軍事情勢の緊迫化に伴い、UAE側が取引制限に踏み切るなど、関係は常に揺れ動いています。

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