欧米には、寝たきり老人がいない。寝たきりになる前に亡くなる。胃瘻(胃ろう)や点滴などの人工栄養で延命を図ることは非倫理的であり、老人虐待

老人

 

寝たきり老人には『生きる価値がない』のか…

  • 参政党の公約『延命治療の全額自己負担化』に現場医師が伝えたいこと

参政党の公約内容

「日本人ファースト」の主張

  • 「外国人優遇反対」「日本人をまず優遇すべき」とするが、実際には国内のすべての日本人が等しく優遇されるわけではなく、内部でも序列や分断が生じる可能性がある。

終末期医療に関する公約

  • 「多くの国民が望んでいない終末期における過度な延命治療を見直す」と明記。
  • 70歳以上の高齢者の医療費は22兆円で全体の半分を占め、85歳以上では一人あたり100万円を超えるなど高額。
  • 欧米では行われない胃瘻や点滴・経管栄養などの延命措置を「原則行わない」とする。
  • 尊厳死法制の整備や事前指示書(POLST)による医師の判断プロセスの確立を打ち出している。
  • 「終末期の延命措置医療費の全額自己負担化」を提案している。

専門家(現場医師)の意見

  • 「延命治療の自己負担化」や「安楽死法制化」を医療費削減と結びつけて提案する姿勢は、これまでも繰り返されてきたと指摘。
  • 政治家や学者が同様の主張で批判を浴び、発言の撤回や修正を迫られてきた過去がある。
  • 特に、社会保障費削減を大義名分にして「終末期医療の縮小」を論じることは、「現代の姥捨山」などの強い反発を招いてきた。

記事の論点・問題提起

  1. 日本人内部での分断
    優遇される「日本人」とそうでない「日本人」が生まれ、「生存さえ諦めなければならない」層が発生する危険性が指摘されている。
  2. 医療経済的な合理化の是非
    「延命措置の自己負担化」によって高齢者や弱者が経済的理由で適切な医療から排除されることへの倫理的・社会的懸念。

まとめ

  • 参政党の掲げる「日本人ファースト」「延命治療全額自己負担化」公約は、表面上は医療費削減・若者負担軽減を謳いながら、実際には社会の分断や、弱者への負担転嫁につながるリスクをはらんでいます。記事は、過去の同様な政策提案が社会的な批判を浴びてきた経緯を踏まえつつ、「誰のための社会保障か」という問いかけを読者に投げかけています。

主なテーマ:

  • 終末期医療費用の在り方
  • 社会保障と倫理
  • 社会における分断と包摂

誰が「日本人ファースト」の恩恵を受け、誰が除外されるのかという分断は、真の意味での国民全体の幸福に寄与するのか――記事はその問いを提起している。

 

 

欧米にはなぜ、寝たきり老人がいないのか?

1. 人工的な延命処置を行わない文化的・倫理的背景

  • 欧米、特にスウェーデンやデンマークなどの北欧諸国では、高齢や重病で終末期に至った場合、「自然な最期を迎える」ことが重んじられています。
  • 口から食べられなくなった高齢者に対しては、胃ろうや点滴などの人工栄養による延命処置は基本的に行いません。これは、人為的な延命が「非倫理的」とされており、場合によっては「虐待」だと認識されています。
  • そのため、寝たきり状態になる前に自然な形で看取られるケースが多く、結果的に「寝たきり老人」という状態が生まれにくくなっています。

2. 在宅介護・自立支援型の福祉制度

  • スウェーデンでは、できるだけ自宅で生活し、自立を維持することがケアの目標です。状態が重くなっても、複数回の訪問介護や在宅サービスによって、最後まで自宅で暮らす高齢者が全体の9割以上を占めます。
  • 施設に入所する高齢者もごく少数(約5~6%)で、施設ですら「できる限り動かす」「寝たきりにさせない」方針が徹底されています。

3. 社会全体で支え合う高負担・高福祉システム

  • スウェーデンなどは高い税負担と引き換えに、老後も安心して介護が受けられる環境が整っています。住環境の改修、24時間のサポート、在宅リハビリ、短期入所など多様な制度があり、家族に過剰な負担がかからない仕組みです。

日本との違い

欧米(スウェーデン等) 日        本
人工的な延命措置を行わない 延命措置(胃ろう、点滴等)を積極的に行うことが多い
在宅介護・施設に頼らない 施設入所の高齢者が多く、寝たきりになりやすい
「自立」を重んじ最期まで動ける生活 寝返りもできず拘束状態の高齢者も多い
高負担・高福祉社会 負担と福祉のバランスが異なる

倫理観・死生観の違いが影響

  • 欧米諸国では「寝たきりになってまで延命するのは本人の尊厳に反する」「なるべく自然な形で看取りたい」という価値観が社会に浸透しています。
  • 日本では医療の技術進歩や家族の想いから延命措置が優先される傾向が強いものの、「人間の尊厳」や「人生の最終段階」について再考する動きも見られます。

要点として、欧米で寝たきり老人がほとんどいないのは「人工的な延命を選ばない死生観」と「自立支援に徹した介護システム」が大きな理由です。文化や制度の違いが生む現象だと言えます。

 

 

欧米に寝たきり老人はいない 自分で決める人生最後の医療
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日本では高齢者が終末期において長期間「寝たきり」になるケースが多い一方で、欧米ではそうした状況がほとんど見られないという事実に着目し、その背後にある医療・社会の仕組みや考え方の違いを明らかにしています。

  1. 日本の現状:
    約200万人ともいわれる「寝たきり」高齢者が存在し、その多くは自身の意思表示が難しい状態でも、延命措置(点滴、経管栄養・胃ろうなど)が実施されています。著者たちは、こうした医療が患者への苦痛をもたらし、家族にも精神的負担を強いると指摘しています。
  2. 欧米との違い:
    欧米では患者本人が「どのような最期を迎えるか」を予め意思表示(リビング・ウイル、アドバンス・ケア・プランニング等)し、尊厳死や自然な看取りが一般的になっています。安易な延命措置は基本的に行わず、苦痛の緩和やQOL(生活の質)重視の医療が選ばれる傾向にあり、その結果「寝たきり老人」がほとんど存在しないという指摘です。
  3. 主な問題提起:
    • 終末期の高齢者に対し、本人不在のまま延命治療が行われがちな日本の現実
    • 人工的水分・栄養補給(胃ろう)の是非
    • 本来苦痛の緩和や自然な看取りが望ましいはずなのに、日本では制度的・慣習的な制約が多い点

目次(抜粋)

  1. 終末期医療の現場から
  2. 硬直化する終末期医療
  3. 安らかな死を妨げるさまざまな要因
  4. 「穏やかに死を迎える医療」が望まれている
  5. 欧米に寝たきり老人はいない
  6. 納得のいく死を迎えるために

著者について

  • 宮本顕二:
    内科医。元北海道大学医学部教授。高齢者医療や呼吸ケアの分野で多くの実績を持つ。
  • 宮本礼子:
    認知症専門医。認知症患者とその家族のための支援活動や終末期医療についても積極的に発信している。

本書が訴えるもの

  • 高齢者自身が人生の最期にどうありたいか、自身の意思を明確にし、それが医療現場で尊重される社会の必要性
  • 医療従事者や家族が「安らかな死」について真剣に考え、無益な延命ではなくQOLを重視した医療の選択を促すこと

こんな方におすすめ

  • 日本と欧米の高齢者医療の違いを知りたい
  • 終末期医療、延命措置、尊厳死について考えたい
  • 家族や知人の介護や看取りを経験・検討している方

この本は、「寝たきり」という日本独自と思われる現象の社会的・医療的背景にメスを入れ、より良い人生の終え方を考える人たちに大きな示唆を与える内容です。

 

 

 

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