JA全中 東京・大手町ビルの一部売却検討
- 小泉農水相「農家はビル所有求めていない」
概要
- 全国農業協同組合中央会(JA全中)は、東京・大手町にある「JAビル」の所有フロア(6フロア)の一部売却を検討しています。背景には、業務管理システムの開発失敗による180億~220億円規模の損失があり、経営再建のために資産売却が急務となっています。
売却の詳細
- JAビルは2009年竣工の地上37階建ての大型オフィスビルで、JA全中はそのうち6フロアを区分所有しています。
- 売却先の候補としては、JAグループの農林中央金庫の子会社が運営する不動産投資信託(J-REIT)が挙がっています。
- 売却額は数百億円規模と見込まれ、最終判断は2025年8月中にも下される見通しです。
小泉農水相の発言と農協のあり方
- 小泉進次郎農林水産大臣は2025年6月19日の記者会見で、「農家が東京のど真ん中に農協のビルを持つことを求めているとは思えない」と発言し、農協の資産保有のあり方に疑問を呈しました。
- 小泉大臣は「農協は本来、共同購入・共同利用を通じて農家に安価な資材を提供するのが本分であり、金融や不動産で利益を追求する組織ではない」とも述べています。
- 6月20日にはJA全中の山野徹会長と面会し、売却方針や経緯について直接説明を受ける予定です。
今後の見通し
- JA全中はシステム開発失敗による巨額損失の穴埋めを最優先課題とし、資産売却による経営再建を急いでいます。
- 売却先や売却範囲の詳細は今後詰められ、8月中にも最終決定される予定です。
まとめ
- JA全中によるJAビル一部売却の検討は、システム開発失敗による巨額損失への対応策であり、農協の資産保有のあり方や経営の透明性が問われる事態となっています。小泉農水相は農協の本来の役割に立ち返るべきと指摘しており、今後の売却方針と農協経営の在り方が注目されています。
JA全中のシステム開発失敗
- 全国農業協同組合中央会(JA全中)は、全国の農協向けに新たな業務管理システム「新Compass-JAシステム」を開発しましたが、このプロジェクトは大規模な失敗に終わりました。2024年1月に運用を開始したものの、当初の見込みを大幅に上回る運用費や追加費用が発生し、わずか1年で運用停止が決定されました。
失敗の主な内容と損失
- システム開発により発生した損失は180億~220億円にのぼります。
- 当初見込んでいた年間運用費は約7億円でしたが、実際には約20億円と2.8倍に膨れ上がりました。
- 継続運用すれば数年間で200億円規模の追加費用が発生することが判明したため、運用停止が決断されました。
- この損失の穴埋めのため、JA全中は東京・大手町の「JAビル」の所有フロア売却を検討しています。
失敗の背景と要因
- システムの要件定義や運用コスト見積もりの甘さが指摘されています。
- JA全中は2017年にもシステム開発で10億円の損失を出しており、ITプロジェクトの失敗が繰り返されています。
- 2014年の農協改革で監査・指導権限を失い、組織のリーダーシップや調整機能が低下していたことも背景にあります。
- システム開発の失敗により、農協への負担増が求められ、現場から強い反発を受けました。
今後の影響と対応
- JA全中は損失補填のため資産売却を進めるほか、2025年度の収支予算は約36億円の赤字となる見通しです。
- 組織のトップ辞任や体制の見直しも避けられない情勢とされています。
- この失敗は、要件定義やコスト管理の重要性、組織ガバナンスの脆弱さ、そして大規模ITプロジェクトの難しさを改めて浮き彫りにしています。
米価が上がった理由
2024年から2025年にかけての米価上昇には、複数の要因が絡み合っています。主な理由は以下の通りです。
1. 異常気象と収穫量の減少
- 2024年は記録的な猛暑や豪雨、台風の連続発生など異常気象が続き、稲作に大きなダメージを与えました。
- その結果、全国的に収穫量が減少し、品質の低下や一等米の流通量減少も重なって、希少性が増し価格が上昇しました。
2. 生産コストの上昇
- 肥料や燃料、農業機械のコスト、輸送費などが世界的な資源価格高騰の影響で上昇し、農家の負担が増加しました。
- 生産コストの増加は米価に直接反映されています。
3. 供給量の減少
- 米農家の高齢化や後継者不足、経営難による離農が増え、生産量が減少しています。
- 都市開発や他作物への転作、減反政策(生産調整)も供給減少の一因です。
4. 需要構造の変化と一部需要増
- 全体として日本国内の米消費量は減少傾向ですが、インバウンド(訪日外国人)需要や米粉・加工食品向け需要が増加し、需給バランスが複雑化しています。
- 海外市場での日本産米の人気や、他の穀物(小麦など)の価格高騰による代替需要も影響しています。
5. 流通構造や投機的取引の増加
- 従来の集荷業者だけでなく異業種の参入や、スポット取引の増加、業者間の投機的な動きが米価高騰を招いています。
- 業者が在庫をストックしたり、スポット市場で高値で取引されるケースが増えたことで、流通量が減り、価格が上がっています。
6. 在庫管理・政府対応の遅れ
- 民間在庫量の減少や、政府による備蓄米放出の対応が後手に回ったことも、短期的な供給不足や価格急騰の要因となりました。
まとめ
- 米価上昇は、異常気象による不作、生産コスト増、農家の減少・高齢化、需給バランスの変化、流通・投機の影響、在庫管理の不備など、複数の要因が重なった結果です。単一の理由ではなく、国内外の経済・社会情勢や気候変動が複雑に絡み合っています。
役目を果たしているか?
農協(JA)の主な役割
農協(JA:農業協同組合)は、農家や地域住民が協力し合い、農業の発展と地域社会の安定を目指す協同組合です。主な役割は以下の通りです。
- 営農・生活のサポート・・・農業技術の指導や経営相談を行い、農家が安定して農業を続けられるよう支援します。農業に必要な資材(肥料・農薬・機械など)や生活用品を共同で仕入れ、安価に提供します。
- 販売・流通の強化・・・農家が生産した農畜産物を集荷し、市場や消費者に有利な条件で販売します。ファーマーズマーケット(直売所)などを運営し、消費者に新鮮な農産物を直接届ける役割も担っています。
- 金融・共済サービス・・・貯金や融資など、銀行のような信用事業を行い、農家や地域住民の資金ニーズに応えます。万一の病気や事故、災害に備える共済(保険)事業も展開しています。
- 地域社会への貢献・・・高齢者福祉や健康管理、観光事業、ボランティア活動など、地域の暮らし全体を支える多様な事業も行っています。農家以外の地域住民も「准組合員」として参加でき、地域全体の発展に寄与しています。
- 協同の意義・・・一人では弱い立場の農家も、協同組合として力を合わせることで、経済的・社会的な利益を大きくし、安定した農業経営や地域社会の実現を目指しています。
農協は、農業生産の基盤強化から地域福祉まで、総合的に農家と地域住民の生活を支える多機能な組織です。
農協は十分に役目を果たしているか
総論として、農協(JA)はその役割を一定程度果たしているものの、課題も多く、十分とは言い切れない状況です。
評価されている点
- 国連や国際社会は、協同組合(農協含む)が貧困や飢餓の解消、食料安全保障、持続可能な食料システムの構築、社会的包摂、女性の地位向上、気候変動への対応などに貢献していると評価しています。
- JAは農業者や地域住民の生活を支えるため、金融・共済・販売・営農支援など多角的な事業を展開し、地域社会の持続的発展にも寄与しています。
- 地域によっては、JAが主導する地域振興や福祉連携、耕畜連携など、好事例も見られます。
課題・問題点
- 農業者の減少や高齢化、自然災害の多発、社会全体のデジタル化など、環境変化への対応が求められています。
- JAの顔ともいえるライフアドバイザー(LA)の数が減少するなど、組織力の弱体化が指摘されています。
- 一部のJAでは経営悪化や赤字が問題となっており、財政面での課題も顕在化しています。
- 組合員・利用者のニーズが多様化する中で、JAが十分に応えきれていない側面もあります。
今後の方向性
- JAグループは、組合員・利用者本位の事業運営や不祥事根絶、地域とのつながり強化、情報発信の強化など、課題解決に向けた取り組みを進めています。
- 2025年の「国際協同組合年」を契機に、協同組合の価値や役割の再認識と認知度向上、SDGsへのさらなる貢献が期待されています。
まとめ
- 農協は本来の役割を果たしている面も多いですが、社会や農業の変化に十分に対応しきれていない課題も抱えています。今後も役割を十分に果たし続けるためには、組織改革や新たなニーズへの対応が不可欠です。
「JAいらない」論争とコメ農家の反論の要点
近年、インターネット上では「JA(農業協同組合)は不要」という声が広がっています。特に米価高騰が続く中で、「JAが中抜きしている」「JAが米価高騰の元凶だ」といった批判や、農家から直接買えば安くなるのでは、という意見が目立っています。
こうした“JA不要論”に対し、実際のコメ農家や関係者からは強い反論が出ています。
コメ農家の主張
「JAを通さず直接買っても安くならない」
- 栃木県のコメ農家は「JA要らない。農家から直接買えば直接の利益になるし、安く買えるというのは妄想です」とSNSで反論しています。
- 農家直売の場合、流通や精米、配送のコストを農家自身が負担する必要があり、結果的にスーパーより高くなるケースも多いと指摘されています。
- 実際、田舎では親戚や知人を通じて安く譲り受けることもありますが、都市部の消費者が農家と直接つながるのは難しいという現実もあります。
JAの役割と現状
- JAは米の流通や価格安定に大きな役割を果たしており、今回の米価高騰は「JAが無くなった状態を体験しているようなもの」とする意見もあります。
- JAがいなくなれば大手商社が代わりに組織を作るだけで、結局は新たな中間業者が生まれるだけだという指摘もあります。
- JAの存在意義については、消費者には不要でも農家には必要だという声が多く、特に規模の小さい農家にとってはJAのサポートが不可欠だとされています。
ネット上の主な議論
- JAが米を高値で卸業者に流しているのが米価高騰の一因だという批判。
- 逆に、JAが価格を安定させているという評価もあり、JAがなくなれば市場原理で価格が乱高下する恐れがあるという意見も。
- 農家と消費者を直接つなげば良いという声もあるが、現実的には難しいとの指摘。
- 「大規模農業法人化」や「株式会社の農業参入」など、農業構造自体の改革を求める意見も根強い。
米価高騰の背景
- 農林水産省によると、2025年5月時点でスーパーの米の平均価格は5キロあたり4285円と過去最高を記録。
- 米の生産量自体は不足していないものの、輸出量が増加し、国内流通量が減っていることが高騰の一因とされています。政府は米の輸出を推進しており、補助金も出しているため、国内供給が圧迫されているとの見方もあります。
まとめ
- JA不要論はネット上で盛り上がっているが、農家や関係者からは「現実を知らない極論」だと一蹴されている。
- 農家直売が必ずしも安くならない理由は、流通や精米、配送などのコストが農家負担になるため。
- JAは米の流通・価格安定に一定の役割を果たしており、単純な「悪者論」では解決しない複雑な構造がある。
「JA要らない。農家から直接買えば直接の利益になるし、安く買える。は妄想です」
このように、JA不要論には現場の実態や流通コスト、農業構造の問題など多くの論点が絡んでおり、単純な二元論では語れない状況です。
規模の小さい農家にとってJAのサポートが不可欠な理由
総合的な支援体制
- JA(農業協同組合)は、農家に対して農業技術の指導、必要な資材の共同購入、農畜産物の販売支援、金融(貯金・融資)、保険(共済)など、多岐にわたるサービスをワンストップで提供しています。
- 小規模農家は経営資源が限られているため、こうした総合的なサポートを受けることで、経営の安定化や効率化が図れます。
コスト削減と販売力の強化
- JAによる資材の共同購入は、単独での仕入れに比べてコストを大幅に削減できます。
- 生産した農産物をJAが集荷・販売することで、市場での交渉力が高まり、有利な価格での販売が可能になります。
技術・経営指導と情報提供
- JAの営農指導員が、栽培技術や経営ノウハウ、安全な生産方法などをきめ細かく指導し、農家の悩みや課題解決をサポートしています。
- 小規模農家や新規就農者は経験や知識が不足しがちですが、JAの指導で着実に技術を身につけられます。
販路・ネットワークの確保
- JAは直売所や市場を通じて販路を確保し、個人では難しい広域販売やブランド化も支援します。
- JAの生産部会や青年部などの活動を通じて、地域農家とのネットワークができ、情報交換や協力体制が築けます。
金融・保険サービスの利用
- 小規模農家でもJAバンクの融資や貯金、共済(保険)サービスを利用でき、経営のリスクヘッジや資金繰りの安定化が図れます。
地域密着型のサポート
- JAは地域ごとに農家の実情に合わせたサポートを行い、農家と密接な関係を築いています。
- 地域の伝統や文化を守りつつ、農家の生活全般を支える役割も果たしています。
まとめ
規模の小さい農家は、資金・人材・情報・販路などあらゆる面で大規模農家に比べて不利な立場にあります。JAのサポートを受けることで、こうしたハンディを補い、安定した農業経営と地域農業の持続的発展を実現できるため、JAの存在は不可欠です。
小規模農家は必要か?
結論
- 小規模農家は現代の農業においても一定の必要性と価値を持っています。効率化や生産性向上を目的とした大規模化が推進される一方、小規模農家ならではの役割やメリットも明確に存在します。
小規模農家の主な必要性・メリット
- リスク分散がしやすい・・・小規模農家は多品目栽培などでリスク分散が可能です。台風などの自然災害があっても全滅を避けやすく、経営の安定性に寄与します。
- 高付加価値化・差別化がしやすい・・・小規模だからこそ、個性的な品種や有機農産物、地元密着型の直販など、大規模農家が手がけにくい高付加価値戦略を取りやすいです。
- 地域性や多様性の維持・・・中山間地など大規模化が難しい地域では、小規模農家の存在が農地や地域文化の維持に不可欠です。
- 多様な生き方・働き方の選択肢・・・家族経営や兼業など、規模拡大を目指さず「自分たちのペースで暮らす」ことを重視する農家も多く、農業の多様性確保に貢献しています。
小規模農家の課題・デメリット
- 労働時間が長くなりやすい
- 生産効率が低く、利益を上げにくい
- 農業機械の導入効果が限定的
大規模化とのバランス
- 農業政策は効率化や競争力強化の観点から大規模化を推進していますが、すべての農家にとって大規模化が最適とは限りません。農家の志向や地域特性、作物の種類によって「適正規模」は異なり、小規模農家の存在が日本の農業の多様性や持続可能性を支えています。
まとめ
- 小規模農家は「効率」だけで測れない価値を持ち、農業の多様性・地域性・リスク分散・高付加価値化といった観点から、今後も必要とされる存在です。大規模化と小規模経営、それぞれの強みを活かした農業全体のバランスが重要です。
農業への企業の参入のメリットとデメリット
企業の農業参入のメリット
事業の多角化・拡大
- 農業分野への進出により、新たな収益源やビジネスモデルを創出できる。
- 既存事業とのシナジー(相乗効果)を生みやすく、食品加工や流通、IT、エネルギーなど自社の強みを活かした新しい価値創造が可能。
地域・社会貢献
- 農家の高齢化や担い手不足の解消、地域雇用の創出、障がい者雇用の促進など社会課題の解決に貢献できる。
- CSR(企業の社会的責任)やSDGs(持続可能な開発目標)への取り組みとして企業イメージを向上させる効果もある。
行政や自治体の支援
- 農地法改正や各自治体の補助金・支援制度により、参入のハードルが下がっている。
効率化・技術革新のチャンス
- デジタル化やIT技術の導入による効率化、生産性向上の余地が大きい分野であり、ビジネスチャンスが多い。
企業の農業参入のデメリット
黒字化の難しさ
- 参入企業の7割以上が赤字というデータもあり、収益化が非常に難しい。
- 経費率が高く、効率化やコスト削減の工夫が不可欠。
自然災害・生産リスク
- 天候や自然災害、病害虫など予測困難なリスクが大きい。
- 安定的な生産体制の確立が難しく、計画通りに収益を上げるのが困難。
人的・金銭的コストの高さ
- 初期投資や人材確保、ノウハウの蓄積など多大なコストと時間が必要。
- 社会的価値観・環境変化への対応
- CSRやSDGsへの対応、消費者意識の変化など社会的責任や環境対応が求められる。
まとめ
- 企業の農業参入は、事業の多角化や社会貢献、シナジー創出など多くのメリットがありますが、黒字化の難しさや自然災害リスク、初期投資の大きさなどデメリットも大きい分野です。成功には、既存事業との連携や効率化、行政支援の活用、長期的視点での経営が不可欠です。
農業に参入した企業の成功例
代表的な企業の成功事例
- ワタミ株式会社・・・外食チェーンのワタミは、2002年に「ワタミファーム」を設立し、全国9カ所で有機農業を展開。有機野菜の生産に注力し、JGAP認証も取得。自社の外食・宅食事業と連携し、農産物の安定供給とブランド価値向上に成功しています。
- パナソニックホールディングス株式会社・・・独自技術「Novitek(ノビテク)」を開発し、植物の成長を促進。実証実験では収穫量が最大50%増加し、品質も向上。2024年度内に製品化予定で、技術力を活かした農業分野で成果を上げています。
- NECキャピタルソリューション株式会社・・・「みらい共創ファーム秋田」を設立し、大型機械を使った効率的な水稲・タマネギ栽培を実現。地域の遊休農地活用やバリューチェーンの構築により、地域活性化と収益性の高い営農モデルを展開しています。
- イオンアグリ創造株式会社・・・小売大手イオンが全国で10以上の農場を運営。グローバルGAP認証を取得し、農薬量を抑えた安全な青果を安定供給。自社流通網を活かした販売で成功しています。
- カゴメ株式会社・・・食品メーカーのカゴメは、長野県で観光農園「カゴメ野菜生活ファーム富士見」を運営。NECと協業し加工用トマトの営農支援会社も設立、農業と自社製品の連携による6次産業化を推進しています。
- オリックス株式会社・・・土耕栽培で米、水耕栽培で葉物野菜を生産。自社農産物だけでなく他農園の作物も流通させる事業を展開し、スマート農業や流通強化で成果を上げています。
- うれし野アグリ株式会社・・・製油業界から農業参入。木質バイオマスを活用したミニトマトの生産で、地域資源の有効活用と新たな雇用創出に成功しています。
地方企業の例
- 株式会社オーエス豊後大野ファーム(大分県)・・・人材派遣業から参入し、白ねぎで年商1億円を達成。10年以上の安定経営を続けています。
- サニープレイスファーム(上組グループ)・・・港湾運送業のノウハウを活かし、高糖度トマトのブランド化に成功しています。
成功の共通ポイント
- 本業の強み(流通、技術、ブランド等)を活かしている
- 地域資源や遊休農地の活用
- 6次産業化(生産・加工・販売の一体化)
- スマート農業や独自技術の導入
- 地域雇用や活性化への貢献
これらの事例から、異業種のノウハウや資本力を活かし、農業の課題解決や新たな価値創出に成功している企業が多いことが分かります。
農業に参入した企業の失敗例
企業の農業参入における主な失敗例
代表的な失敗事例
- ニチレイフーズの6次産業化事業・・・ニチレイフーズは、農家と連携し高度な貯蔵システムを導入して野菜の安定供給・価格安定を目指しましたが、天候不順による野菜価格の高騰時に農家が契約外で高値市場に出荷してしまい、計画通りの調達ができませんでした。また、販売面でも想定した価格で売れず、売れ残りが続出。結果的に経営難に陥り、2013年に撤退しました。
- ユニクロ(ファーストリテイリング)の有機野菜事業・・・事業開始当初は注目を集めましたが、サービス範囲拡大に商品供給が追いつかず欠品が発生。顧客離れが進み、計画通りの事業拡大や黒字化が実現できず撤退しています。
- NTTドコモ、吉野家、オムロン、東芝などの大手企業・・・これらの企業も農業事業に参入したものの、短期間で大きな赤字を計上し撤退しています。主な要因は、農業の難しさや事業拡大と供給体制・販路開拓のバランスが取れなかったことです。
失敗の主な原因
- 消費者や取引先(農家)のニーズを十分に把握できていない
- 明確な生産計画や安定した生産体制の構築ができていない
- 販路開拓や販売計画が甘く、売れ残りや赤字が発生
- 初期段階から大規模投資を行い、資金繰りが悪化
- 農業を「簡単に儲かる」と過小評価し、十分な知識や準備がないまま参入した
まとめ
- 大手企業であっても、農業の特性や現場の実情を理解せずに参入した場合、短期間で撤退に追い込まれる事例が多く見られます。農業は属人的なノウハウや天候などの外部要因に大きく左右されるため、他業種の成功モデルがそのまま通用しない点が失敗の大きな要因です。