2021年09月30日 狙いは「諦めさせる」こと、中国軍が日本に仕掛けている心理戦
元海将・伊藤俊幸氏が語る中国海軍の実態と戦略
- この記事は、元海上自衛隊海将で金沢工業大学教授の伊藤俊幸氏が、中国海軍の太平洋進出を中心に、その戦略的目的と心理的狙いを分析した内容である。要点を以下にまとめる。
中国海軍の戦略的拡張
- 1970年代の中国海軍は自国沿岸防衛に限られていたが、劉華清元上将が旧ソ連海軍理論を取り入れ「第1列島線」「第2列島線」の概念を導入。
- 第1列島線(南西諸島〜台湾〜南シナ海)を防衛の「聖域」とし、第2列島線(小笠原〜ニューギニア)まで米海軍を進出させない構想を立てた。
- 1990年代以降、中国海軍艦艇は太平洋方面に活動範囲を拡大。1996年には初めてハワイ沖まで航行している。
空母と潜水艦の運用目的
- 空母保有は「艦隊防空力」を補うため。イージス艦だけでは空からの脅威を十分防げないため、艦載機による外周防御が必要になる。
- 潜水艦は海中からの攻撃手段として、米国の海上優勢に対抗できる「非対称戦力」として発展を続けている。
- 伊藤氏自身、1998年のリムパック演習で米艦隊15隻を「撃沈」する成果を上げ、艦隊の脆弱性を実体験している。
心理戦としての「諦めさせる戦略」
- 中国は尖閣諸島周辺での常態的な軍艦・公船航行を通じて、日本国民を「慣らし」、危機感を鈍らせ、抵抗意識を弱める狙いを持つ。
- 直接的な軍事行動よりも、「常に圧をかけ続ける」ことで日本側に「どうせ止められない」という無力感を植え付ける心理戦を展開している。
- この戦略は、戦わずして相手の判断を鈍らせる「孫子の兵法」に通じると伊藤氏は述べている。
日本への示唆
- 尖閣諸島だけを注視していては中国の海洋戦略全体を見誤る。中国海軍の活動は太平洋全体を対象にしており、特に第2列島線以東への進出が現実化している。
- 日本は米軍任せでなく、自らの防衛戦略を再構築し、心理戦を含む多層的な対抗策を用意すべき段階にある。
この論考は、尖閣問題を単なる「領土問題」にとどめず、中国が仕掛ける「心理的・戦略的圧力戦」の一環として捉えるべきことを訴えている。
2025年11月07日 尖閣巡る文書、新たに展示 政府「日本の立場補強」
日本政府は、尖閣諸島が歴史的に中国の領域外と認識されていたことを示す新たな資料を公表し、東京・虎ノ門の「領土・主権展示館」で14日から展示する。展示の狙いは、中国による威圧的行動を踏まえ、日本固有の領土であることを国内外に訴える点にある。
展示される新資料は以下の三点である。
- 1950年の中国外務省内部文書:
尖閣諸島の日本名を使用し、琉球(沖縄)の一部として記載。 - 1889年の清の役人報告書:
滞在調査の結果、尖閣を清の領域外と認識していた。 - 1895年の日清高官の会談記録および台湾受け渡し関連公文:
清が尖閣を自国領とみなしていなかったことを示唆。
特に1895年の台湾関連文書は初公開となる。これらの資料は、中国が1971年に尖閣周辺で石油埋蔵の可能性が明らかになって以後、自国領主張を始めたことに対し、日本の立場を裏付ける目的で紹介される。
政府関係者は「中国側の歴史的認識を客観的に示し、日本の立場を強化する」と述べている。

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