中国やインドは化石燃料に依存
再生可能エネルギーの「幻想」 急成長も増大する電力需要に追いつけず
再生可能エネルギーは近年急成長しているものの、世界の電力需要の増加には依然として追いついていません。2023年の世界のエネルギー消費量580エクサジュールのうち、再生可能エネルギーの占める割合はわずか5.2%、2024年も5.5%にとどまっています。電力需要の拡大分11.9エクサジュールのうち、再生可能エネルギーがカバーしたのは約2.7エクサジュールで全体の約23%のみで、多くは化石燃料、特に天然ガスによって賄われているため、炭素排出量は増加の一途をたどっています。
国別では、米国は再生可能エネルギーが電力需要増加分の67%を賄い世界平均を上回るものの、中国やインドは化石燃料への依存が強く、再生可能エネルギーの供給増は需要増の補填にとどまっています。
明るい点として、太陽光発電は2024年に世界全体で前年比27.5%増の7.7エクサジュールを発電し過去最高を記録。非OECD諸国が全世界の57%を占め、中国は3.0エクサジュールで約4割を占めています。インドも約25倍に拡大しています。米国では太陽光発電は世界の14.6%を占める一方、成長率は世界平均を下回る状況です。
この状況は、再生可能エネルギーの急成長が過大評価されてきた現実を示しており、途上国やエネルギー集約産業での化石燃料依存からの脱却が課題であることを浮き彫りにしています。
中国は再生可能エネルギーは供給過多。出力抑制している
中国においては、再生可能エネルギーの供給が増加し、特に太陽光と風力での出力抑制が実施されています。例えば中国電力ネットワーク株式会社の報告によれば、中国電力管内では2023年度の出力抑制率は約3.6%で、2022年度の0.45%から大幅に増加しており、2024年度も高い水準で推移しています。2025年度も太陽光・風力の出力抑制率は約2.8%の見込みで、供給過多に対応するために出力制御が継続される見通しです。
これは再生可能エネルギーの変動性によって、系統の調整能力を超える余剰電力が発生し、それを抑制する必要があるためです。中国国内でも地域によっては電力不足の課題がある一方で、再生可能エネルギーの導入が進んだ地域では供給過多による出力抑制も起きています。
したがって、中国は再生可能エネルギーの供給過多によって出力抑制を行っている状況が明確に確認できます。特に2024年から2025年にかけて出力抑制の実施回数や率が増加傾向にあり、事業者の売電収入にも影響がでているという報告があります。
中国 「蒸し焼きの街」、「熱で割れるガラス」、「熱死する家畜」。それでも「映像」で涼しさを?
中国で2025年夏に観測されている異常な猛暑は、地表温度が70度を超える地点が続出するなど、これまでにない過酷さとなっています。都市部では河南省などで路上のフライパンで生卵やエビが太陽熱だけで加熱される様子が話題となり、鄭州では「蒸州(蒸し焼きの街)」と揶揄されるなど、人々や家畜に命の危険が及ぶ深刻な状況です。
住宅の被害も顕著で、室内の窓ガラスが高温で突然ひび割れる事故が発生しています。ガラスが「熱割れ」を起こす仕組みは、ガラスは熱によって膨張する性質があり、太陽光で直射部分と窓枠に隠れている冷たい部分とに温度差が生じ、その膨張差で割れるというものです。特に高温状況下では、住宅用の薄いガラスや耐熱処理のされていない窓ガラスが割れやすくなります。
このように現実が灼熱地獄と化す中、街頭やSNSでは「巨大扇風機やクーラーの映像」を流して涼しさを演出する現象も見られ、「中国式」と皮肉られています。これは、現実の環境と大きく乖離した幻想的な清涼感のみが映像で提供されることで、根本的な解決になっていない――むしろ現実との落差が際立つことになっています。
中国は世界一のガラス消費国でもあり、そのため都市部の「ガラスの割れ」や「高層ビルの被害」は今回のような極端な気象時により表面化しやすい特性もあります。加えて、家畜の熱死や農作物・インフラ被害も深刻化しています。
気象災害下で映像だけを頼りに「涼」を演出するという現象自体が、現実逃避の象徴となり、SNS上では皮肉や批判が飛び交う状況です。抜本的な対策が求められています。
中国 40℃超えの地獄絵図 死者続出
2025年7月、中国各地は観測史上例を見ない規模の熱波に見舞われ、特に陝西省、河南省、山東省などでは連日気温40℃超えが続いています。この熱波は、気象当局や複数のメディアによると、39℃から43℃の記録的な高温をもたらし、過去の記録を塗り替えている状況です。
主な被害・現象としては、次のようなものが確認されます。
- 熱射病による死者が続出。河南省信陽市では、配達員が40℃近い猛暑の中で倒れ、出血多量で亡くなったケースが報じられました。「火葬場が行列」「村で1日に3人亡くなった」など、SNSを中心に身近な死の報告や火葬場の混雑が拡散しています。
- 各地で集団熱中症。山東省煙台市の学校では120人以上の中学生が集団で熱中症にかかり、大学や宿舎の管理人にも死亡事例が出ています。
- 社会・インフラへの影響。煙台市では最高気温が42.7℃を記録、山東省では卵が孵化し、河南省ではコンクリート道路の爆発が相次ぐなど、熱波の影響が生産活動やインフラにも広がっています。
高齢者や労働者のリスク増大。エアコンのない住環境での高齢者死亡や、底辺労働層の犠牲を嘆く声もSNSで目立ちます。
夜間も気温が下がらず、河南省では最低気温が30℃前後・夜間33℃という異常な熱帯夜が続いています。高温警報が連発され、北京など北部都市でも例外なく警戒が必要な状況です。
被害規模については、SNS上の市民投稿や現地報道では多数の死者が伝えられている一方、公式メディアでの報道は極めて限られており、当局の情報隠蔽を疑う声も広がっています。
この歴史的熱波は、中国社会全体に深刻な健康・生活影響、不安と怒りをもたらしており、その余波は今後も続く見込みです。
40度を超える猛暑の中、冷房のない環境で働かされ死亡
- 中国で猛暑の犠牲者となった「優しき管理人」
事件の概要
- 2025年7月6日、中国山東省青島市にある青島大学の学生寮で、60代の男性管理人が熱中症で亡くなりました。連日40度を超える猛暑の中、冷房のない劣悪な労働環境に置かれていたことが原因とみられています。
亡くなった管理人について
- 学生たちからは「優しいおじちゃん」と慕われていました。
- 自分の食事を節約しても、寮で飼われている猫にはペットフードを欠かさず与え、扇風機を猫にあてるなど、思いやりのある人物でした。
学生たちの反応
- 学生たちは、管理人が冷房のない環境で働かされていたことに強い怒りを感じています。
- 「大学が殺したようなものだ」と、学校側の管理責任を厳しく追及する声がSNSなどで広がっています。
社会的背景
- 中国では近年、猛暑による健康被害が深刻化しています。
- 労働者の労働環境や安全管理に対する意識も高まっており、今回の事件はその象徴的な出来事となっています。
ポイントまとめ
- 青島大学の寮管理人が猛暑下で熱中症死
- 学生たちが学校の責任を強く批判
- 管理人は優しく思いやりのある人物だった
- 中国社会で労働環境・安全管理への関心が高まっている
参考:今後の動き
- この事件をきっかけに、中国国内で労働者の環境改善や熱中症対策、学校・企業の安全管理責任について、議論がさらに活発になる可能性があります。
学校が「灼熱地獄」!? 熱波に泣く中国の学生「眠れない!」
中国では2025年夏、連日の猛暑により学生たちが深刻な影響を受けています。特に一部の学校では設備が不十分で、多くの学生寮にはエアコンや扇風機すら設置されていないため、夜になっても室内の暑さが和らがず、多くの学生が眠れない状況に追い込まれています。実際、廊下や校舎の外の空き地で寝ざるを得ない学生も多く、期末試験中に熱中症で体調を崩す学生も出ています。
中国気象網によれば、6月23日以降、中国東北地方では35℃を超える高温地域が拡大し、25日には一部地域で地表温度が65℃を超えるなど、異常な暑さが続きました。26日も吉林省や遼寧省などで35℃以上の猛暑が観測され、黒竜江省気象台も高温警報を発表しています。23日から28日にかけて、省内の多くの地域で気温が平年を大きく上回り、最高気温が30℃を超え、一部の市や県では**35~37℃**に達すると予想されています。
こうした状況を受け、多くの学生がSNSで動画を投稿し、寮や教室にエアコンが設置されていない現状や、暑さに耐えるしかない苦しい日常を訴えています。
このような極端な暑さは中国だけでなく、世界各地で深刻化しており、空調設備の需要が急増し、電力需要にも大きな影響を及ぼしています。しかし、中国の多くの学校では設備投資が追いついておらず、学生の健康と安全が脅かされる「灼熱地獄」と化しているのが現状です。
中国各地の商業施設は猛暑対策で巨大スクリーンに「扇風機の映像」
- 涼しさはスクリーンの中に? 現代中国式「涼の取り方」【動画あり】
現象の概要
- 中国各地の商業施設では、猛暑対策として屋外の巨大スクリーンに「回る扇風機の映像」を流すという現象が広がっています。実際に風は出ないものの、画面の前には人々が集まり、あたかも涼をとっているかのような光景が見られます。SNSでは「これ、政府の政策と一緒。見た目だけで中身は空っぽ」「中国社会の縮図そのものだよ。見栄えは派手、中身はスカスカ」といった、共産党の政策と重ね合わせる声が多く上がっています。
政策との類似性
- この「エア涼」現象は、中国共産党の政策運営と似ていると指摘されています。つまり、見た目や宣伝は派手だが、実際の効果や実質的な中身が伴っていないという批判です。中国共産党の政策はしばしば「成果の強調」や「イメージ重視」が先行し、実際の市民生活や現場の実効性が問われることが多いとされます。
ネット上の反応と社会的背景
- SNS上では「現実の体感温度は1ミリも変わらない」「その電力、冷房に回してくれよ」といった現実的な不満や皮肉が多く、表面的な対策や演出に対する市民の冷ややかな視線がうかがえます。これは、共産党による「見せかけの成果」や「宣伝優先」の政策運営に対する社会的な不信感や風刺とも読み取れます。
まとめ
- 巨大スクリーンの扇風機映像は「見た目は派手だが効果はない」という点で、中国共産党の政策運営と重ねて揶揄されている。
- 実際の政策も「宣伝やイメージ重視」「実効性の不足」といった批判が根強い。
- 市民の間では、こうした現象を通じて社会や政治に対する風刺や批判がSNSなどで拡散している。
この「涼しさはスクリーンの中に?」という現代中国式の涼の取り方は、単なる猛暑対策以上に、中国社会や政治の在り方を象徴的に映し出している現象といえます。
- 東京大学公共政策大学院教授で地経学研究所長の鈴木一人による、地政学と経済学を融合した現代の資源問題に迫る入門書です。複雑化するエネルギー問題や国際情勢、地政学的要素を経済の視点から再考し、「経済が戦争になり、戦争が経済になる」現代のリアルを描き出しています。
主な内容・構成
序章 なぜ、今「地経学」なのか
第1章 資源を巡る現状と「相互依存の罠」
第2章 中東情勢とエネルギー問題
第3章 半導体という戦略物資でみる経済安全保障
第4章 国際秩序と自由貿易
終章 資源、戦争、貿易――世界の見取り図をどう手に入れるか(細谷雄一氏との対談)
特徴とポイント
- 複雑化する資源問題を、単なる供給や需要の問題としてではなく、国際政治・安全保障・経済の相互作用として読み解く。
- エネルギーや半導体など、現代の戦略物資をめぐる経済安全保障の視点を重視。
- 貿易や世界秩序の理解が、資源問題の本質を捉える鍵であることを示す。
- 終章では慶應義塾大学法学部教授・細谷雄一氏との対談を収録し、実践的な視点を提供。
著者について
- 鈴木一人は、国際政治・地政学・経済安全保障の第一人者であり、国連安保理イラン制裁専門家パネル委員や地経学研究所所長などを歴任しています。
評価
- 本書は「地経学」の決定版として、経済と安全保障が不可分となった現代社会を読み解く上で有用な一冊と評されています。
「今や日々の生活と安全保障は地続きであることを本書は示す。」
中国の電力発電施設
1. 火力発電所
- 中国の発電の中心は火力発電であり、特に石炭火力が主流です。
- 2018年時点で、全発電設備容量約19.0億kWのうち、火力は約11.4億kW(60.2%)を占めています。
- 代表的な火力発電所には、超々臨界圧・超臨界圧・亜臨界圧など、最新技術を採用した大規模プラントが多数存在します。
2. 再生可能エネルギー発電所
- 2022年末時点で、自然エネルギー発電設備容量は1,213GW(全体の47.3%)に達しています。
- 主な水力発電所は長江、黄河、珠江など主要河川流域に集中し、100万kW以上の大規模水力発電所が複数稼働しています。
- 風力・太陽光発電も急速に拡大中です。
3. 原子力発電所
- 近年は安全性の高い第三世代炉(AP1000、EPRなど)が導入され、浙江省三門市(三門原子力発電所)、山東省海陽市(海陽原子力発電所)などで運転開始しています。
- 2019年1月末までにAP1000プラント4基が商業運転を開始しています。
4. 主な発電会社
- 中国には「五大発電会社」(中国華能集団、中国大唐集団、中国華電集団、中国国電集団、中国電力投資集団)があり、全発電設備容量の約48%を保有しています。
代表的な発電施設の例
発電所名 | 種類 | 所在地(省) | 特 徴 ・ 備 考 |
三門原子力発電所 | 原子力 | 浙江省三門市 | AP1000、2018年商業運転開始 |
海陽原子力発電所 | 原子力 | 山東省海陽市 | AP1000、2019年商業運転開始 |
三峡ダム | 水力 | 湖北省 | 世界最大級の水力発電所 |
白鶴灘ダム | 水力 | 四川省 | 新設の大規模水力発電所 |
大型石炭火力群 | 火力 | 内モンゴル等 | 超々臨界圧・超臨界圧の最新設備が多数 |
備考
- これらの他にも、各地に多数の中小規模の火力・水力・再生可能エネルギー発電所が存在します。
- 中国の発電所リストは規模が非常に大きいため、上記は代表例となります。