日米の関税合意文書問題では、アメリカ側のミスが主な原因とされている
日米の関税合意文書問題では、アメリカ側のミスが主な原因とされています。具体的には、アメリカが関税を適用する際に、日米で合意された内容とは異なる大統領令を発出し、本来免除されるべき日本の輸出品に15％の追加関税が誤ってかけられた問題です。このミスについてアメリカ側は、「遺憾の意を示し、今後大統領令を修正し、過払いとなった関税はさかのぼって返還する」と説明しています。
問題の一因は、日米間で正式な合意文書を作成しなかったことにあります。アメリカ側では関税を管理するUSTR（米通商代表部）と、日本側と交渉した商務省との間にコミュニケーションのズレがあり、合意内容が連携されていませんでした。また、トランプ政権の政府内部で幹部の空席が多く、体制の不備や縦割りの問題も指摘されています。
日本側の赤沢経済再生担当大臣も、認識の齟齬はないとしつつ、アメリカ側に対し速やかに大統領令を修正するよう強く求めています。一方で、修正の具体的な時期はまだ明確ではなく、企業や野党からは不安の声も上がっています。
また、日本側が合意文書の作成に消極的だった側面も報告されており、日米間の交渉で期限が迫っていたことや、合意文書を作ると米側から追加要求がくるリスクを避けた事情もあったものの、これが混乱の一因となりました。
まとめると、日米間の関税にかかわる合意文書問題は、アメリカ政府内の技術的ミスや連携不足、正式な合意書の不在が重なって発生したもので、アメリカ側が誤りを認めて今後修正し返還措置を取る姿勢を示している状況です.
対米交渉で鮮明になる日本外交の「甘え」
- なぜトランプ関税交渉で赤沢大臣は合意文書を作成しなかったか
赤沢亮正大臣がトランプ関税交渉で合意文書を作成しなかった理由は、交渉過程において関税引き下げを急ぐことを優先し、時間のかかる合意文書の作成に余裕がなかったためです。また、アメリカ側では「国際緊急経済権限法（IEEPA）」に基づく大統領の広範な裁量権の下、正式な合意文書が存在すると国家非常事態の前提が崩れ、大統領権限を制約してしまうリスクがあるため、米国側の事情で文書化がなされにくかった背景もあります。つまり、日本側は「信頼に基づく対話」で合意したと期待した面があるが、その甘さが裏目に出た形です。
具体的には、
- 米国の法制度であるIEEPAにより、大統領は議会承認なしに関税を課せるが、正式な合意文書があるとこの大統領裁量が制限されかねない。
- 赤沢大臣自身も「合意文書を作る余裕がなかった」「トランプ大統領の判断でしか決まらず、合意も突然変わる」として、急な交渉の流動性を重視した。
- このため日本はアメリカ側に対する依存の甘さや信頼に過度に頼った形で、文書化を怠ったことが対米交渉の「甘え」と批判されている。
- 結果として日本に対して一律15%の関税がかけられ、合意内容の解釈の食い違いが表面化した。
この状況は、日米関係を「友人同士」の信頼で捉える日本外交の長年の慣習や、米国依存の強さに起因し、精神科医・土居健郎の指摘する日本人の「甘え」の心理的背景にも重なると論じられています。
自動車や自動車部品にかかる関税を現在の25％から15％に引き下げる
米側は相互関税の大統領令を修正すると表明
赤沢再生相、米が自動車関税引き下げで大統領令へ－15％関税の修正も
赤沢亮正経済再生担当相は2025年8月7日、訪米中に米閣僚と会談し、米国が対日自動車関税を引き下げるための大統領令を発令することを確認した。これに合わせて、日本製品に対し一律15％の関税を上乗せした大統領令も修正される予定である。赤沢氏は日本側と合意した15％の関税への引き下げが速やかに実施されるよう、米側に要請した。
米側はすでに相互関税の大統領令を修正すると表明し、自動車や自動車部品にかかる関税を現在の25％から15％に引き下げる措置を取る意向である。引き下げの具体的な時期は当初明示されていなかったが、赤沢氏は早期実行を強く求めている。
以上の動きは、7月22日に日米両政府が合意した内容に基づくもので、相互関税は従来の関税率が15％未満の品目は15％になり、15％以上の品目には追加関税が課されない協定である。今回の大統領令の修正と引き下げ措置は、合意内容の履行に重要な一歩と位置づけられている。
赤沢氏はまた、米国の大統領令に記載されていない部分について遺憾の意を示し、不一致による経済活動への混乱や政治への不信感を防ぐためにも、日米間の認識の食い違いを解消し円滑な関税引き下げを進める姿勢を示している。
トランプ「攻撃あるのみ」「非を認めない」「劣勢でも勝利を主張して負けを認めない」
「普通の人ではなく、ルールを変える人」
トランプ氏が「普通の人ではなく、ルールを変える人」と指摘される具体例として、彼が勝利のために徹底する「3つのルール」が挙げられます。それは、（1）攻撃あるのみ、（2）非を認めない、（3）劣勢でも勝利を主張して負けを認めない、というものです。これにより従来の政治やビジネスのルールや常識を破り、独自のやり方で結果を追求する姿勢が強調されています。
また、石破茂首相は日米関税交渉において「相手は普通の人ではなく、ルールを変える人」と表現し、トランプ氏が既成の枠組みにとらわれず、大統領令で政策を推進しようとする強い実行力を持つことを示しています。
加えて、トランプ氏は2016年の大統領選で自らを「このシステム（政治経済）を知る唯一の人物」と主張し、既存の政治のルールや慣例を打ち破ろうとした点も具体例の一つです。
これらの点から、トランプ氏は伝統的なルールに従う普通の政治家とは違い、自らのルールを作り、既存の枠組みを変革しようとする人物だと評価されています。
石破はトランプの特性を踏まえつつ、総じて慎重かつ実利を重視した対応
石破茂首相は、トランプ大統領に対して議論や対立を避け、信頼関係を築くために準備を重ね、「勉強会」を開いて臨んだ。トランプ氏は日米関係で強引な関税措置などは実際には行わず、首脳会談はおおむね穏やかに進んだという評価がある。
また、トランプ大統領が日本に対して示した関税政策（いわゆる「相互関税」）への対応について、石破首相は国益を守るために文書合意の作成を控え、関税引き下げの迅速な実現を優先すると発言している。石破首相はトランプ氏を「普通の人ではなく、ルールを変える人」と指摘し、文書を作ることで関税引き下げが遅延することを恐れていると述べた。
関税問題と安全保障問題は分けて議論すべきとの立場をとり、トランプ政権の関税措置に対しては自由貿易のルール整合性を重視しつつ、柔軟な対応を試みている。
石破氏はトランプ大統領との関係で「ルールを変える」彼の特性を踏まえつつ、対話と準備によって混乱を回避し、関税問題では合意文書作成を控えて迅速な解決を目指し、総じて慎重かつ実利を重視した対応をとっていると言えます。
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