新三様(シンサンヤン)EV、リチウムイオン電池、太陽光パネル

「工場が活発に稼働する」のはEVや再エネ関連に限られるのでは?しかも利益率が低く赤字企業がある。習近平と中国共産党は経済政策の失敗を間違いを認めず、これからも突っ走るだろう

中国の製造業

中国の製造業の稼働が電気自動車(EV)や再生可能エネルギー(クリーンテック)関連に偏っており、それらの多くが過剰競争によって赤字や低利益に苦しんでいるという指摘は、現在の中国経済の実態を正確に捉えています。

習近平指導部と中国共産党が政策の誤りを認めず、現在の「高質発展(ハイテク製造業重視)」の路線を突き進む可能性が極めて高いという見立ても、多くの国際政治・経済アナリストの分析と一致しています。

製造業の偏りとクリーンテックの赤字実態

現在の中国で活発に動いている工場は、確かに「新三様(シンサンヤン)」と呼ばれるEV、リチウムイオン電池、太陽光パネルなどの分野が中心です。その他の伝統的な製造業や、国内消費に依存する産業は軒並み不振が続いています。

この特定のハイテク分野への集中投資は、深刻な「過剰生産能力(オーバーキャパシティ)」を引き起こしています。

  • 激しい価格競争と利益率の悪化:
    国内市場が飽和しているため、生き残りをかけた激しい値下げ合戦が起きています。EV市場を例に挙げても、黒字化を達成しているのは比亜迪(BYD)などごく一部の巨大企業のみで、多くの新興EVメーカーや太陽光パネル関連企業は、政府からの補助金がなければ経営が成り立たない赤字状態に陥っています。
  • ダンピング輸出と国際摩擦:
    国内で消化しきれない膨大な在庫は、格安の価格で海外市場へ流出(ダンピング輸出)しています。これが欧米諸国との間で激しい通商摩擦を引き起こしています。

政策の誤りを認めない構造的要因

指導部が経済政策の失敗を認めず、軌道修正を行わない背景には、中国共産党の統治構造と習近平氏の政治理念が深く関わっています。

  • 無謬性の維持(党は間違えない):
    中国共産党の統治において「一党独裁の正当性」は、党が常に正しい方向へ国家を導いているという「無謬性(むびゅうせい)」に基づいています。特に権力が一極集中している現状では、政策の失敗を認めることは、最高指導者の権威失墜に直結するため、公式に方針転換することは極めて困難です。
  • イデオロギーの優先:
    習近平指導部は、経済成長の「量(GDPの数字)」よりも、国家の安全保障や西側諸国に対する技術的自立という「質(高質発展)」を重視しています。西側諸国のような「家計への現金給付や消費刺激策」は「福祉病」につながるとして嫌悪しており、供給側(製造業)の強化こそが強国化への道であると確信しています。

今後の展望とリスク

中国指導部は、現状の路線を変更するどころか、さらにハイテク製造業への国家資金の投入を加速させる(突っ走る)可能性が高いと考えられます。

このまま突き進んだ場合、以下のようなリスクが予想されます。

  • 国際的な孤立の深化:
    欧米諸国による中国製EVや太陽光パネルに対する関税引き上げなどの対抗措置が一段と強まり、貿易摩擦が本格的な経済戦へと発展する恐れがあります。
  • 国内経済のジリ貧(デフレの定着):
    家計消費を置き去りにしたまま工場だけを動かし続ければ、製品はさらに余り、物価が下がり続けるデフレの悪循環から抜け出せなくなります。これは1990年代以降の日本のバブル崩壊後の状況よりも、より構造的で深刻なものになる可能性があります。

 

 

中国の消費低迷が、さらに次の四半期まで長期化する見通し

  • China Set To Show Its Consumption Slump Extends To Another Quarter

提示された記事は、中国経済における製造業(産業部門)の堅調さと、国内消費(小売部門)の低迷という「二極化(K字型回復)」の傾向が、4月も継続していることを指摘しています。

中東でのイラン戦争による世界的な影響があるものの、輸出を中心とした貿易は好調を維持している一方、国内の消費マインドは依然として冷え込んでいます。

産業と消費の乖離(K字型経済)

中国経済は、工場が活発に稼働する一方で、家計の消費が追いつかないという、歪んだ二足走行の状態にあります。

エコノミストの予測によると、4月の工業生産は前月の5.7パーセント増から6.0パーセント増へ加速したとみられる一方、小売売上高は1.9パーセント増程度の極めて緩やかな伸びにとどまる見通しです。

これはパンデミック期間を除けば、年初からの推移として過去最低水準の低迷が続いていることを意味します。

貿易部門の堅調さ

世界経済が地政学的リスクに直面している中、中国の貿易は引き続き経済の牽引役となっています。

先行して発表された4月の輸出データは、前年同月比14.1パーセント増と予測を大きく上回る伸びを記録しました。

特に世界的な人工知能(AI)関連投資の拡大や、再生可能エネルギー製品への強い需要が、製造業の底堅さを支えています。

消費低迷の背景

国内消費が振るわない主な要因として、長期化する不動産不況と、それに伴う雇用環境の悪化が挙げられます。

これらが家計の購買力や将来への自信を損なう要因となっています。

また、イラン戦争によるエネルギー価格の高騰は、インフレ圧力を生じさせて消費者の実質的な購買力をさらに押し下げる一因となっています。

政策当局のスタンス

中国の政策当局は、これまで実施してきた消費刺激策が限定的な効果にとどまったことから、現在は慎重な静観姿勢をとっている模様です。

財政支出の削減や、中央銀行による追加の金融緩和見送りなど、市場の流動性は確保しつつも大規模な介入には動いておらず、これが2つの部門の格差をさらに長期化させる要因となっています。