資産の半分以上を慈善活動に寄付することを誓約する「ギビング・プレッジ」

The Giving Pledge。世界の富豪が寄付を始めた。

ギビング・プレッジに新たに11人が参加

2025年5月27日、世界の富豪が資産の半分以上を慈善活動に寄付することを誓約する「ギビング・プレッジ」に、新たに11人が署名しました。これは2021年以降で最大規模の新規参加となります。

新規署名者の概要

  • 参加者の内訳は、アメリカ出身が9人、オーストラリア出身が1人、アラブ首長国連邦出身が1人。
  • 新メンバーのうち6人はフォーブスの世界富豪リスト掲載者で、合計資産は約93億ドル(約1兆3392億円、1ドル=144円換算)。

主な新規署名者と資産規模

名前・肩書き 推定資産額 主な活動・特徴
キャメロン・アダムズ
(Canva共同創業者)
29億ドル
(約4176億円)
妻リサ・ミラーと共同で署名。生物多様性保全にも取り組む
ドリュー・ヒューストン
(Dropbox共同創業者)
21億ドル
(約3024億円)
妻エリンとともに参加
バーラット・デサイ
(Syntel創業者)
16億ドル
(約2304億円)
妻ニールジャ・セティ(共同創業者、10億ドル)と参加
ジム・マッケルビー
(Block共同創業者)
16億ドル
(約2304億円)
妻とともに参加
ヌーバー・アフェヤン
(Flagship Pioneering創業者)
12億ドル
(約1728億円)
妻とともに参加
ムナ・イーサ・アル・グルグ
(UAE女性実業家)
非公開 アラブ首長国連邦から初の署名者
ジョセフ・ディーチ(Commonwealth
Financial Network創業者)
非公開 投資顧問会社創業者
ジェイ・ホーグ
(ベンチャーキャピタリスト)
非公開 妻ミカエラとともに参加

ギビング・プレッジの概要

  • 2010年、ビル・ゲイツ、メリンダ・フレンチ・ゲイツ、ウォーレン・バフェットが創設。
  • 世界の富裕層に「資産の半分以上を生前または死後に慈善活動へ寄付する」ことを誓約させる運動。
  • 署名は法的拘束力を持たず、監査も行われないが、誓約の手紙を公開することで社会的責任を示す。
  • これまでに210人以上が署名。イーロン・マスクやマーク・ザッカーバーグも参加している。

参加の意義と今後

  • ギビング・プレッジは、富裕層の寄付を促進し、社会課題の解決資金を生み出すことを目的としています。今回の新規署名によって、さらに多くの富豪が資産を社会に還元する動きが広がっています。

「富を社会に還元する責任」を果たす姿勢を公に表明することが、ギビング・プレッジの本質です。

なお、誓約後に実際にどれだけ寄付が行われたかは、公開されていません。

セルゲイ・ブリンによる1000億円相当の株式寄付の概要

グーグル共同創業者のセルゲイ・ブリンは2025年5月、約7億ドル(約1010億円)相当のアルファベット株式を医療関連の非営利団体に寄付しました。

主な寄付先と内訳

  • 約5億5000万ドル(約790億円):自身が設立した非営利団体「Catalyst4(カタリスト4)」へ
  • 約1億ドル(約140億円):セルゲイ・ブリン・ファミリー財団へ
  • 約5000万ドル(約70億円):パーキンソン病研究・治療支援の「マイケル・J・フォックス財団」へ

寄付の背景と目的

  • ブリンは世界で8番目に裕福な人物で、推定資産は約1370億ドル(約19兆7000億円)。
  • これまでにパーキンソン病研究へ15億ドル(約2160億円)以上を寄付してきました。母親がパーキンソン病を患っていたことや、自身も発症リスクが高い遺伝子(LRRK2遺伝子のG2019S変異)を持っていることが動機となっています。
  • 双極性障害や自閉症の研究にも多額の寄付を行っており、これらの疾患はいずれも家族に影響を及ぼしてきたとされています。

新たな寄付戦略とCatalyst4の特徴

  • Catalyst4は政府へのロビー活動や営利企業の所有も可能な「501(c)(4)」に区分される非営利団体で、ブリンは近年この組織への寄付を増やしています。
  • Catalyst4は基礎研究と将来的な治療・療法の両方に資金を提供し、営利企業への投資も積極的に行っています。2024年だけで4億ドル(約580億円)を製薬関連のスタートアップやベンチャーキャピタルに投資しました。
  • 投資先のバイオ医薬品企業MapLightでは自閉症治療薬の臨床試験を進めており、Stellaromicsなどの新技術開発企業にも出資しています。
  • これらの投資から得た利益はすべて非営利活動に再投資される必要があります。

今後の展望

  • 今回の新たな寄付がCNSクエストやCatalyst4の目標にどう活用されるかはまだ明らかではありませんが、米国で医学研究や臨床試験の公的予算が削減される中、民間からの支援の重要性が高まっています。

セルゲイ・ブリンの寄付は、個人的な経験と社会的課題の双方に根ざしたものであり、医療研究の新たな資金循環モデルを示しています。

米医療保険業界の象徴的存在であるCEOを射殺したダークヒーロー

ルイジ・マンジョーネとは

ルイジ・マンジョーネ(Luigi Nicholas Mangione、1998年5月6日生)は、2024年12月4日にアメリカ・ニューヨークのミッドタウンで発生した、米医療保険大手ユナイテッドヘルスケアのCEOブライアン・トンプソン射殺事件の容疑者として世界的に注目を集めている人物です。

事件の概要

  • 2024年12月4日朝、ブライアン・トンプソンCEOがマンハッタンの路上で背後から銃撃され死亡。
  • 実行犯は現場から逃走し、12月9日にペンシルベニア州アルトゥーナのマクドナルドでルイジ・マンジョーネが拘束、逮捕された。
  • 逮捕後、マンジョーネはニューヨーク州と連邦の両当局から殺人やテロなど複数の罪で起訴されている。

容疑者の背景

  • メリーランド州の裕福な保守派資産家一族出身。親族には共和党の州議員もいる。
  • 名門私立ギルマン・スクールを優秀な成績で卒業し、アイビーリーグのペンシルベニア大学でコンピュータサイエンスを専攻したエリート。
  • 事件当初は「経済的困窮者の犯行」との憶測もあったが、実際は裕福な家庭の出身だった。

社会的反響と“ダークヒーロー化”

  • 保険会社トップの射殺という衝撃的事件は、アメリカ社会に大きな波紋を広げた。
  • 医療保険業界への不満が高まる中、SNSでは「#FreeLuigi」などのハッシュタグが急拡大し、彼を“ダークヒーロー”や“現代のジョーカー”のように扱う動きも出ている。
  • 一方で、逮捕に協力したマクドナルド店員や警察への中傷や脅迫も発生し、事件の社会的影響が深刻化している。

法的状況

  • マンジョーネ被告はニューヨーク州裁判所で殺人やテロなど11件の罪状について無罪を主張。
  • すべて有罪となれば仮釈放なしの終身刑となるが、ニューヨーク州には死刑がない。
  • 連邦検察は殺人のための銃器使用や州をまたぐストーカー行為による死亡などで起訴しており、これらは死刑適用の可能性がある。

メディアと文化的影響

  • 事件の謎やマンジョーネの人物像を追うドキュメンタリー『In the Mind of Luigi Mangione』も制作されており、社会現象化している。
  • 事件は「アメリカンドリーム」と「アメリカの悪夢」の対比としても論じられている。

まとめ

ルイジ・マンジョーネは、米医療保険業界の象徴的存在であるCEOを射殺した容疑者として、アメリカ社会の分断や医療制度への不満を象徴する存在となっています。彼の背景や事件の動機、社会の反応は、今後も大きな議論を呼ぶとみられます。

子どもたちの階級闘争――ブロークン・ブリテンの無料託児所から
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内容・テーマ

本書は、著者ブレイディみかこが英国の「底辺託児所」と呼ばれる無料託児所で保育士として働いた経験をもとに、イギリス社会の階級格差と分断、そして貧困のリアルをミクロな視点から描いたノンフィクションです。

  • 舞台・・・2008年、英国でもっとも平均収入・失業率・疾病率が悪いとされる地区の無料託児所。ここには生活保護を受けるシングルマザー、ドラッグ依存からの回復者、ホームレスの子どもなど、社会の最下層に位置づけられる家庭の子どもたちが集まっています。
  • 内容構成・・・著者が初めて託児所で働いた2008~2010年と、再び同じ場所で働いた2015~2016年の二つの時期を比較しながら、保育現場を通してイギリス社会の変化を記録しています。
  • 社会背景と変化・・・労働党政権時代は福祉が手厚く、託児所も活気がありましたが、2010年以降の保守党政権による緊縮財政政策で福祉が削減され、託児所も「緊縮託児所」へと変貌。利用者層や地域の雰囲気も大きく変わっていきます。

主な論点・特徴

  • 階級と分断・・・イギリスの子どもたちは、家庭環境や地域によって「リッチ」と「プア」に分断され、互いに交わることなく育っていく現実が描かれています。
  • 託児所の利用者層・・・利用者は大きく3つのタイプに分けられます。
    1. アナキスト系インテリ(自ら下層に降りてきた高学歴層)
    2. 「チャヴ」と呼ばれる公営住宅地の若者(10代妊娠やドラッグ問題を抱える層)
    3. 英国に来て間もない外国人や難民の子どもたち
  • 政治と保育の現場・・・保育士としての現場感覚から、政治的な制度変更がどのように子どもや家庭の日常に影響を及ぼすかを、ユーモアと鋭い観察眼で描写しています。

評価・意義

  • 保育現場という「地べた」から、イギリス社会の格差や分断、移民問題、福祉政策の変化などを実感をもって伝える一冊。
  • ドキュメントとしての臨場感、現場からのリアルな声、そして社会への鋭い問いかけが高く評価されています。

「わたしの政治への関心は、ぜんぶ託児所からはじまった。」

こんな人におすすめ

  • イギリスの社会問題や階級、貧困、子ども・教育・福祉に関心がある人
  • 現代ヨーロッパの政治や社会構造を現場目線で知りたい人
  • 社会の分断や格差について考えたい人

目次抜粋

  • 緊縮託児所時代 2015‐2016
    • リッチとプアの分離保育
    • 緊縮に唾をかけろ
    • 貧者分断のエレジー
  • 底辺託児所時代 2008‐2010
    • あのブランコを押すのはあなた
    • その先にあるもの。
    • 小説家と底辺託児所