中国・ブラジル首脳が電話会談、「グローバルサウス」の利益保護で一致
中国・ブラジル首脳電話会談の要約
2026年1月23日、中国の習近平国家主席とブラジルのルラ大統領が電話会談を行いました。
両首脳は、新興・途上国「グローバルサウス」の共通利益を保護し、国連を中心とした国際秩序を維持していく方針で一致しました。
習氏は、中国と中南米諸国との「運命共同体」の構築を推進したいとの考えを強調しています。
戦略的パートナーシップの進展
習氏は、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」と、ブラジルの農業・インフラ・エネルギー移行計画の連携を高く評価しました。
この協力関係を、グローバルサウス諸国間における連帯の模範として位置づけています。
背景には、米国トランプ政権によるベネズエラのマドゥロ大統領拘束という事態があり、中南米諸国の間で米国による武力介入への懸念が高まっている状況が指摘されています。
専門的視点による分析
今回の会談は、米国の強硬な外交姿勢に対し、中国がブラジルを軸として中南米での影響力を固めようとする動きの表れといえます。
グローバルサウスのリーダーを自任する両国が結束を強めることで、欧米主導の国際秩序に対する牽制機能を強める意図が読み取れます。
特にエネルギー移行やインフラ整備といった実利を伴う協力は、米国との距離を置きたい中南米諸国にとって強力な選択肢となる可能性があります。
中国とブラジルは疑心暗鬼。互いに利用しているだけ
「互いに利用し合っているだけで、内実は疑心暗鬼である」という分析は、現在の両国のパワーバランスと国内情勢を鑑みると非常に鋭い指摘です。
表面的な「グローバルサウスの連帯」という言葉の裏にある、冷徹な利害関係と警戒心について解説します。
経済的依存へのブラジルの警戒
ブラジルにとって中国は最大の貿易相手国ですが、その内実は「原材料(鉄鉱石や大豆)を輸出し、安価な工業製品を輸入する」という、かつての植民地型に近い貿易構造になっています。
ブラジル国内の製造業、特に鉄鋼や自動車、アパレル産業は、中国からの安価な輸入品によって深刻な打撃を受けており、産業界からは強い不満が出ています。
また、中国の景気減速やデフレがブラジルの輸出に悪影響を及ぼすリスクも懸念されており、ルラ政権は中国への過度な依存が国家の脆弱性につながることを十分に理解しています。
中国側の不信感と慎重姿勢
一方の中国も、ブラジルを完全に信頼しているわけではありません。
特に、前ボルソナロ政権時に見られた急激な反中姿勢への転換は、中国にとって大きなトラウマとなっています。
2026年にブラジル大統領選挙を控えている現在、中国は「再び反中政権が誕生し、投資が白紙に戻されるのではないか」という不安を抱いており、大規模な新規投資を一時的に見合わせるなど、様子見の姿勢を強めています。
戦略的な「消去法」による協力
両国が現在歩み寄っているのは、信頼関係があるからではなく、現状ではそれが「最も合理的」だからに過ぎません。
米国がトランプ政権下で保護主義や武力介入を辞さない強硬姿勢を強める中で、ブラジルは外交的な選択肢を増やす必要があり、中国は米国の包囲網を打破するための足場を中南米に求めています。
この関係は、共通の価値観に基づく「同盟」ではなく、共通の対抗軸(米国への牽制)を持つ期間限定の「戦略的妥協」であるという側面が強いのが実態です。
ブラジルの鉄鋼や自動車、アパレル産業
ブラジルにおける主要産業(鉄鋼、自動車、アパレル)の2026年現在の現状と動向について解説します。
鉄鋼産業
ブラジルの鉄鋼産業は、世界的な供給過剰と安価な輸入品の流入により、非常に厳しい局面に立たされています。
ブラジル鉄鋼協会(Aço Brasil)の予測によると、2026年の国内粗鋼生産量は前年比2.2%減の3,240万トンに落ち込む見通しです。これは、主に中国からの低価格な鋼材が市場を圧迫しているためです。
政府は国内産業を保護するため、2026年前半から特定の鋼材製品に対して最大35%の「ハードクォータ(厳格な輸入割当)」やアンチダンピング税の適用を検討しています。
一方で、ブラジルの豊富な鉄鉱石資源を活用した「グリーン・スチール(脱炭素鋼)」への投資も活発化しており、中長期的な競争力強化に向けた動きも見られます。
自動車産業
自動車産業はブラジルの製造業の柱であり、南米最大の市場規模を維持しています。
2026年は、ハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)へのシフト、いわゆる「電動化」の転換期となっています。ブラジル独自の強みであるバイオ燃料(エタノール)を活用したフレックス燃料車と電動技術を組み合わせた「ハイブリッド・フレックス車」の開発に、大手メーカーが巨額の投資を継続しています。
しかし、鉄鋼産業と同様に中国メーカーの台頭が著しく、安価なEVの流入が国内生産者にとっての脅威となっています。これに対し、政府は輸入EVへの関税を段階的に引き上げており、国内生産への切り替えを促す政策をとっています。
景気面では、金利低下への期待から国内需要は緩やかな回復基調にありますが、原材料コストの高止まりが課題です。
アパレル・テキスタイル産業
ブラジルのアパレル産業は、世界第5位の綿花生産国という背景を活かした垂直統合型の産業構造が特徴です。
2026年の市場規模は約27億7,000万ドルと推計され、年率約2%の緩やかな成長が見込まれています。最近の傾向として、オーガニックコットンやリサイクル素材を使用した「サステナブル・ファッション」への関心が高まっており、環境配慮型の製品開発が競争力の源泉となっています。
一方で、SHEIN(シーイン)に代表される中国系ファストファッションのECプラットフォームが急速にシェアを拡大しており、国内の製造業者や小売店は価格競争とスピード感の両面で苦戦を強いられています。
これに対抗するため、国内企業はデジタル化(インダストリー4.0)による生産効率の向上や、オンラインと実店舗を融合させた販売戦略を強化しています。

コメント