アメリカは世界最大のコーヒー消費国 3分の1はブラジル産

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ブラジル産コーヒー豆にもトランプ関税50%、輸出先は中国などへ大シフトへ

ブラジル産コーヒー豆に対して、トランプ米政権は2025年7月30日に50%の関税を8月6日から課すと発表しました。ブラジルは世界最大のコーヒー生産国で、米国には年間約800万袋のコーヒーが輸出されています。米国は世界最大のコーヒー消費国であり、その3分の1はブラジル産です。

この関税措置により、ブラジルのコーヒー貿易ルートは大きく再編される見込みで、米国のコーヒーブローカーは輸出業者が買い手探しに奔走すると指摘しています。特に、中国が輸出先として急速に台頭する可能性があります。中国では若年層を中心にコーヒー消費が急増しており、ブラジルからの輸出量も2025年上半期に53万8000袋に達しています。

欧州連合(EU)向けの輸出も関税がかからないため増加する見込みで、輸出業者はメキシコやパナマなど第三国経由で米国向けに再輸出することも検討しています。これにより、物流コストは上がるものの関税負担は最大10〜15%に抑えられる可能性があります。

トランプ大統領はブラジル最高裁判所とルラ大統領に対する対立の一環として、この関税措置を交渉材料にしていると見られています。

米国東海岸の大手コーヒー加工会社は関税発動前に大量購入を急いでおり、今後は中米やアフリカ産の豆への代替も検討中ですが、全体的に需給にタイト感が強まり、価格上昇の懸念がある状況です。

 

 

米政権、ブラジルへの関税発動 コーヒー豆など最高50%

2025年8月6日、アメリカのトランプ大統領はブラジルからの輸入品に対して新たな関税を発動し、一部品目の関税率を最大50%に引き上げました。この関税強化は7月30日にトランプ大統領が署名した大統領令に基づき、8月1日から実施されています。

関税引き上げの背景には、ブラジルのジャイル・ボルソナロ前大統領に対する裁判を「政治的迫害」であるとして米国が問題視していることがあり、トランプ政権はこれを理由に「不当な刑事訴追」を非難し、またブラジル政府の対応が米国の国家安全保障や経済に脅威をもたらすとして関税措置を講じています。

対象となる輸入品の多くに関税が引き上げられ、コーヒー豆の関税も50%に設定されました。一方、オレンジジュースや民間航空機など、一部品目は物価高の悪影響を避けるため除外されています。これらの措置により、ブラジルの対米輸出の約36%が影響を受けると見られています。

ブラジル側はルイス・イナシオ・ルラ・ダシルバ大統領が司法の独立を主張し、米国の内政干渉を拒否、対話と交渉を継続する意向を示しています。

米トランプ政権はブラジルの前大統領に対する法的措置を理由に2025年8月1日からブラジル製品の一部に最大50%の関税を課し、その中にはコーヒー豆も含まれているが、オレンジジュースなど一部品目は除外されているということです。これは両国間の政治的・経済的摩擦の一環として実施されています。

 

 

ルラ大統領の支持が不支持上回る―ブラジル、トランプ関税影響か

ブラジルのルーラ大統領の支持率は、2025年7月にトランプ前米大統領がブラジルからの輸入品に50%の関税を課すと発表したことを受け、今年に入って初めて不支持率を上回りました(支持率50.2%、不支持率49.7%)。この関税措置に対してルーラ大統領は「主権侵害」と強く反発し、世界貿易機関(WTO)への提訴も辞さない姿勢を示したことが有権者の支持を後押ししたとみられています。

また、トランプ政権がブラジルのボルソナロ前大統領の裁判を担当する判事に対して資産凍結などの制裁を科したことも、ルーラ大統領が司法の独立を支持する姿勢を示す一因となり、政権支持につながっています。

一方で別の調査では、2025年7月時点での支持率は43%にとどまり不支持率の53%を下回るものの、前回調査と比べて支持率は上昇し、不支持率は減少するなど改善傾向も見られます。特に、トランプの関税に対抗するルーラ政権の外交姿勢に多くの国民が期待を寄せていることが支持率の回復要因となっているとの分析もあります。

つまり、トランプ関税はルーラ大統領の支持率改善に影響を及ぼしており、ブラジルの有権者の間で米国の措置に対する反発が政権支持につながっている状況です。

【参考】

  • 2025年7月末の世論調査で支持率50.2%(不支持率49.7%)
  • トランプ氏の関税措置を「主権侵害」と反発し、WTO提訴も含む強硬姿勢
  • 司法の独立支援の姿勢と米政府の制裁に対する反発
  • 支持率は調査によって異なるが、トランプ関税による支持率上昇の傾向は共通

 

 

トランプ関税から農業製品を除外要請-ブラジル

ブラジル政府は、2025年8月1日に発効する米国の50%輸入関税について、農業製品を除外するよう米国に要請しています。特にブラジルの主要輸出品であるコーヒーとオレンジについて、ラトニック米商務長官に対して関税リストからの除外を求めており、オレンジは対米輸出の42%、コーヒーは17%を占めるため、関税適用は業界に深刻な影響を及ぼすとされています。このため、ブラジルは深刻な打撃回避を狙っています。

また、ブラジルの産業界も、食料品や航空機を含む製品の関税除外をトランプ政権に水面下で働きかけており、複数の農業団体も政府と話し合いを行い、追加関税の延期や除外を求めています。ブラジル政府は、対話を通じて両国に受け入れ可能な解決策を模索する姿勢を示していますが、適用開始日の延期は求めていません。

米国が除外した品目には、オレンジジュースや木材パルプ、民間航空機および部品などがあり、農業製品の中でも特に重要な輸出品の除外要請が行われています。これら製品が対象から除外されることで、市場に一定の安心感が広がっています。

 

 

世界最高 米の50%関税 ブラジル、発動避けられず

2025年8月1日からアメリカはブラジルに対して世界最高水準となる50%の輸入関税を課す見通しであり、これは避けられない状況です。これはドナルド・トランプ前大統領が、保守派のジャイール・ボルソナロ前大統領がクーデター未遂などの裁判で「政治的な魔女狩り」と批判されたことを背景に、ブラジルに対して行う措置です。

ブラジルのルラ大統領は交渉の姿勢は見せつつも、「脅迫や干渉は受けない」と強く主張し、50%の相互関税の発動までも辞さない姿勢を示しています。さらに、世界貿易機関(WTO)への提訴や、中国との連携強化も検討中です。しかし、米国との実質的な交渉はまだ始まっておらず、米商務長官は「関税は発動し、その後に交渉する」と述べています。

関税発動が現実となれば、鉄鋼やアルミニウム産業に大きな打撃が予想され、農水産物分野でも米国向けの水産物輸出が全面停止に追い込まれているほか、コーヒーやオレンジの輸出見直しも進んでいます。ブラジル政府や企業は米企業と接触を試みていますが、米国側に報復リスクがあるため反応は慎重です。

ブラジル国内ではトランプ関税に対して不満が強く、それがルラ大統領の支持率上昇につながっている一方で、「関税で国益を損なう」との批判も根強い状況です。

以上の現状から、ブラジルに対するアメリカの50%関税は間近に迫り、ブラジル側は多様な対応策を模索しつつも、依然として展望は厳しいと言えます。

 

 

ボルソナロの功罪

ジャイール・ボルソナロ前ブラジル大統領の「功罪」は、彼の政権運営や政治姿勢に対する評価が大きく分かれる点に集約されます。

主な「功」

  1. 汚職・犯罪撲滅を掲げた改革姿勢
    ボルソナロ氏は「ブラジルを再び偉大な国にしたい」と、自国第一主義や財政再建、汚職・犯罪撲滅を公約に掲げて政権に就きました。既存政治家への不信感が高まる中、2018年の大統領選で「変革の受け皿」として熱狂的な支持を集めました。
  2. 保守層への訴求と政策実行
    保守層を強く意識した政策運営を行い、熱心な支持基盤を築きました。銃規制の緩和など、特定の有権者層の要望に応えた政策も実施しています。

主な「罪」

  1. 民主主義の根幹を揺るがす行動
    2022年の大統領選で敗北した後、選挙結果を受け入れず、結果を覆そうとしたとしてクーデター未遂罪で起訴されています。検察は、ボルソナロ氏が「犯罪組織の首謀者」として一連の陰謀を図ったと断定しています。
  2. 議会襲撃事件との関与
    2023年1月、ボルソナロ氏の支持者が首都ブラジリアで連邦議会などを襲撃する事件が発生しました。ボルソナロ氏自身の直接的な指示は不明ですが、彼の選挙結果を認めない姿勢が背景にあったとされています。
  3. 社会的分断の助長
    トランプ前米大統領と類似した「二元論による対立を煽る政治手法」を駆使し、社会の分断を深めたとの指摘があります。
  4. 議会との不安定な関係
    ボルソナロ政権下では、議会との関係が安定せず、立法能力の向上にはつながりませんでした。政権維持のために中道右派グループへの接近など、ポストや予算の分配を通じて政治的取引が行われました。

その他の特徴

  1. 「ブラジルのトランプ」とも称される強硬・保守的なスタンス
    差別的発言や過激な言動が多く、国内外で物議を醸しました。
  2. 国際社会との摩擦
    環境政策や人権問題などで国際社会と対立する場面も目立ちました。

ボルソナロ氏は、既存政治に対する不信感を背景に登場し、一定の改革を訴えた一方で、民主主義の根幹を揺るがす行動や社会分断の拡大など、多くの重大な問題を残しました。現在もクーデター未遂罪などで裁判が続いており、その評価は極めて分かれています。

 

 

トランプ氏の「魔女狩り」発言批判 ブラジル・ルラ大統領

アメリカのトランプ大統領が、ブラジルのボルソナロ前大統領に対するクーデター計画関与の裁判を「政治的な魔女狩り」と自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」で批判し、「ボルソナロ氏は法廷でなく、有権者による選挙で裁かれるべき」と擁護しました。これに対し、ブラジルのルラ大統領は「主権国家として、いかなる干渉や指導も受け付けない」「自由と法の支配を攻撃することは、何人といえど許されない」と強く反発し、トランプ氏の発言を内政干渉だと批判しました。

この応酬の背景には、ボルソナロ氏が2022年の大統領選挙で敗北後、ルラ大統領や最高裁判事の暗殺計画に関与した罪で起訴されていることがあります。トランプ氏はボルソナロ氏と親交が深く、今回初めて裁判に言及しました。

さらにトランプ氏は、ボルソナロ氏の起訴が「自由な選挙への攻撃」だとして、ブラジルからの輸入品に対し8月1日から50%の関税を課すと発表し、外交問題に発展する可能性も指摘されています。

 

 

ルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルヴァ(ルーラ)の功罪

ブラジル現代史において極めて大きな影響を持つものです。以下に主な功績と問題点を整理します。

主な功績

  1. 貧困撲滅と社会保障の拡充
    ルーラは「ボルサ・ファミリア」や「フォメ・ゼロ」などの大規模な社会保障制度を導入し、貧困層や労働者階級の生活向上に大きく寄与しました。これにより、毎月1400万人以上の貧困家庭に現金給付が行われ、極度の貧困状態にあった子どもたちや家庭の生活改善が実現しました。
  2. 経済成長と国際的地位の向上
    ルーラ政権下でブラジル経済は成長し、国際社会での発言力も増しました。BRICSの議長国としてのリーダーシップや、イランの核開発問題、気候変動問題など国際的課題にも積極的に関与しました。
  3. 労働運動と民主化への貢献
    元金属労働者・労働組合指導者として、軍事独裁体制下でストライキを主導し、民主化運動に寄与した功績も評価されています。

主な問題点・批判

  1. 汚職疑惑と有罪判決
    ルーラは大統領退任後、国営石油会社ペトロブラスを巡る汚職事件で収賄・資金洗浄の罪に問われ、有罪判決(禁錮9年6カ月~12年1カ月)を受け、2018年には実際に収監されました。ただし、裁判手続きの公正さや証拠の有無については国内外で議論があり、2021年には連邦最高裁が一部の有罪判決を手続き上の理由で取り消しています。
  2. 政権運営を巡る汚職事件
    1期目から「メンサロン事件」など複数の汚職事件が発覚し、政権のクリーンさには疑問符がつきました。
  3. 経済政策への賛否
    国家主導の「大きな政府」路線は、一定の成果を上げた一方で、財政負担や経済の硬直化を招いたとの批判もあります。特に近年の対中経済協力やロシア訪問など外交政策については、国内産業界や一部世論から賛否が分かれています。

総括

  • ルーラは貧困削減や社会的包摂、国際的地位の向上という面で大きな功績を残した一方、汚職疑惑や政権運営の透明性、経済政策の持続可能性などで大きな課題も抱えた指導者です。彼の評価は、ブラジル社会における格差是正の象徴であると同時に、政治腐敗の象徴でもあるという、両義的なものとなっています。

 

 

アメリカとブラジルのどちらが総合的に依存しているか

比較すると、ブラジルの方がアメリカに依存している側面が強いといえます。

  • トランプ前米大統領も「ブラジルは全てにおいて米国に依存しているが、米国はブラジルには少しも依存していない」と発言しており、これは両国関係の冷え込みも背景にあります。
  • ブラジル経済は輸出入の面で特定国への依存度が低い構造を持ち、米国以外にもEUや中国など多極的な貿易関係を持っていますが、依然としてドルへの依存は続いています。
  • 一方、米国はブラジル産のコーヒーやオレンジジュースなど輸入品に依存している部分はあるものの、経済全体としてブラジルへの依存度は限定的です。
  • また、ブラジルはドル依存からの脱却を試みているものの、実際には米ドルに頼る姿勢が変わっていません。

以上から、総合的にはブラジルがアメリカに対して依存している度合いが高く、アメリカはブラジルに対して依存度が低いという構図が現在の両国関係の特徴です。

 

 

ブラジルの社会思想
4773822120

  • ブラジル社会の多様な思想的潮流とその実践者たちを体系的に紹介する論集です。

この書籍の特徴は以下の通りです。

  • 20人の代表的な思想家・実践家・芸術家を取り上げ、彼らの生涯や業績を通じて、ブラジル社会が直面してきた課題とその克服のための思想的営為を解説しています。
  • 取り上げられる人物には、社会学者セルジオ・ブアルキ・デ・オランダ、経済学者セルソ・フルタード、教育者パウロ・フレイレ、作家マシャード・ジ・アシス、環境保護活動家シコ・メンデスやマリナ・シルヴァ、政治家ルーラ大統領などが含まれます。
  • 人権、ジェンダー平等、市民参加、民衆運動、環境保全、多元的外交、文化創造といった分野での先進的な思想や実践が紹介されており、現代社会が直面する分断や対立、環境危機へのヒントが示されています。
  • 章立ては「社会を解剖する」「低開発と闘う」「社会運動を率いる」「多文化を編む」といったテーマごとに構成されており、各章で思想家や運動家の思想とその社会的背景が平易に解説されています。
  • 編者の小池洋一は立命館大学で経済学とラテンアメリカ地域研究を専門とし、子安昭子・田村梨花は上智大学でそれぞれブラジル現代政治・外交、ブラジル地域研究・社会学を専門とする研究者です。

この書籍は、激動と困難の時代を生き抜いてきたブラジル社会思想のエッセンスを集成し、「もう一つの世界は可能だ!」というメッセージを込めて、対話と共生の知を求める現代社会への指針を提供しています。

 

 

 

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