ワシントンの目に映る日本製鉄
■米国と同盟関係にある日本を代表する大企業の日本製鉄が、「安全保障上の懸念」で今回の買収から排除されたとしたら、不可解に感じる日本人が大多数ではないでしょうか。しかし、米国の視点から日本製鉄を眺めると、その印象は少なからず違ったものとなる可能性があります。
■少しばかり話は横にそれますが、時事の話をさせていただきます。日本製鉄は、合併前の旧新日本製鐵(新日鐵)時代に、中国の周恩来首相や鄧小平副総理の要請を受けて、中国宝山鋼鉄の最新鋭の高炉建設を全面的に支援しました。その後、宝山鋼鉄が製造する鋼材は中国の高度経済成長をけん引することとなりますが、こうした貢献が感謝されたこともあってか、日本製鉄と中国との親密な関係は長期にわたり続くこととなります。
モンスターの生みの親
■21世紀に入り、中国の工業化が急速に進展すると、2004年には新日鐵と宝山は合弁で自動車向け鋼板会社を設立します。そして、今年8月に合弁が解消されるまで約20年にわたり、共同で世界トップの規模に発展する中国の自動車産業を支えてきました。現在、宝山鉄鋼は世界最大の鉄鋼メーカーですが、インフラ整備や自動車生産だけでなく、その鋼材で中国の急速な軍備拡張にも貢献しています。そんな「モンスター」ともいうべき宝山鉄鋼や中国鉄鋼業界が大きく成長する過程で、日本製鉄が果たした役割は大きかったように思われます。
■こうした日本製鉄と中国の「長く、深い」付き合いから、日本製鉄の元経営トップは、日中友好会館の理事や日中経済協会の名誉顧問を務めています。また、最近まで同社の最高幹部を務めた取締役の一人は、日中経済協会の会長職にあって、日中間の経済外交の第一線で活躍しています。
■例えば、今年1月25日、日中経済協会は経団連や日本商工会議所と共同で、日本経済界訪中団を率いて北京を訪問し、人民大会堂で李強首相に謁見(えっけん)しています。また、今年9月26日には中華人民共和国成立75周年祝賀レセプションが都内のホテルで開催されましたが、日中経済協会の会長は鳩山由紀夫元首相、公明党の山口那津男代表(当時)、社民党の福島瑞穂党首、日中協会の野田毅会長、日中友好議連の小渕優子事務局長らとともに、主賓の一人として招待されています。
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2024年02月07日
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