2025年のバンス副大統領による「欧州蔑視」と捉えられた演説

2025年のバンス副大統領による「欧州蔑視」と捉えられた演説

2025年2月14日、バンス副大統領はドイツで開催された「ミュンヘン安全保障会議(MSC)」において、欧州の指導層を真っ向から批判する演説を行いました。

この演説は、従来の同盟関係のあり方を根底から揺さぶる「決別宣言」に近いものと受け止められ、欧州側に大きな衝撃を与えました。

演説の核心:最大の脅威は「内部」にある

バンス氏は、欧州が直面している真の脅威はロシアや中国といった外部勢力ではなく、欧州「内部」の価値観の変質にあると断じました。

具体的には、欧州の指導者が国民の声(ポピュリズム)を封殺し、言論の自由を制限している現状を「ソ連時代のような検閲」という言葉を用いて批判しました。

主要な批判ポイント

  1. 民主主義の形骸化への指摘
    ルーマニアの大統領選が無効化された事例などを挙げ、欧州の法廷や当局が「民主主義の防衛」を名目に選挙や異論を不当にコントロールしていると主張しました。
  2. 移民問題と治安
    演説前日にミュンヘンで発生した移民による車両突入事件を引き合いに出し、欧州の指導者が不法移民対策を怠り、自国民の安全と文化的な継続性を危機にさらしていると批判しました。
  3. 「共有された価値観」への疑義
    「我々が支援してきたのは共通の民主的価値観のためだったが、今の欧州にその価値観が残っているのか」と問いかけ、価値観を共有できないのであれば、NATOを通じた米国の防衛義務もその根拠を失うことを示唆しました。
  4. 脱工業化への警告
    欧州、特にドイツが進める環境政策に伴う脱工業化が防衛産業の衰退を招いているとし、「産業基盤なしに自国の安全は守れない」と突き放しました。

構造的な背景と狙い

この演説は、単なる感情的な蔑視ではなく、トランプ政権(第2期)が掲げる「新しい地政学的秩序」への強制的な組み換えを意図したものです。

  1. 中立国・同盟国への二者択一
    米国は東アジア(対中戦略)にリソースを集中させるため、欧州に対し「米国流の価値観(言論の自由・厳格な国境管理)を受け入れて自立するか、さもなくば支援を打ち切られるか」という冷徹な選択を迫りました。
  2. 欧州内部の分断と右派勢力への加担
    既存の欧州エリート層を批判することで、オルバン首相(ハンガリー)などの欧州内ポピュリスト勢力に正当性を与え、欧州連合(EU)の結束を内部から揺さぶる狙いが見て取れます。
  3. 対ロシア交渉の布石
    ロシアを直接的な軍事脅威として強調せず、むしろ「文明の存続」という観点で欧州内部の問題を叩くことで、ウクライナ情勢におけるロシアとの妥協や、将来的な勢力圏の再定義に向けた地ならしを行いました。

この演説により、大西洋両岸の亀裂は「防衛費負担」という名目上の議論を超え、文明のあり方を巡る深刻なイデオロギー対立へと発展しました。

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