中国は米中合意後もレアアース輸出規制の審査を引き延ばす 西側企業は依然として供給不安に直面

合意による一時的な緩和措置も6カ月の時限付き

再規制のリスク

グローバルなサプライチェーンの安定には程遠い

中国がレアアース規制継続、米と合意後も

  • 米中合意後も西側企業のレアアース輸入は進まず 中国当局が審査引き延ばし

要点まとめ

  • 中国は2025年春にレアアース(希土類)輸出規制を強化し、米中合意後も西側企業への審査を遅延させている。
  • 米中は一時的な貿易休戦でレアアース規制の緩和に合意したが、現場では許可申請の審査が長期化し、供給不安が続いている。
  • 許可が下りても6カ月間の時限的な措置であり、再規制の可能性が常に残る。

現状の詳細

規制の経緯と実態

  • 2025年4月、中国はサマリウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ルテチウム、スカンジウム、イットリウムなど7種のレアアースと磁石の輸出に新たな規制を導入。これにより、輸出には特別なライセンスが必要となり、審査には2~3カ月、場合によってはそれ以上かかるケースも出ている。
  • 米中は5月・6月の協議で一部規制緩和に合意し、中国は米企業向けの輸出許可証を「即時発給」としつつも、6カ月間の有効期限付きとした。
  • しかし、実際には西側企業の申請審査が遅延し、場合によっては却下されている。特に未加工レアアースの輸入はほとんど認められていない。
  • 欧米メーカーは必要最小限の確保にとどまり、今後の安定供給の見通しは立っていない。

供給への影響とリスク

  • 中国は世界のレアアース生産の約90%を担っており、審査遅延や輸出停止は欧米や日本のサプライチェーンに深刻な影響を及ぼしている。
  • 一部では契約の「不可抗力」条項が発動され、既存の在庫も長くは持たないとの懸念が高まっている。
  • 米中合意で一時的な緩和はあったものの、6カ月ごとの許可制は「時限爆弾」とも評され、再び規制が強化されるリスクが消えていない。

米中合意の限界と今後

  • 2025年6月の米中貿易合意では、レアアースの一部規制緩和が盛り込まれたが、国家安全保障に関する原材料の輸出については明確な合意がなかった。
  • 米国は、合意が履行されない場合や供給が途絶した場合に備え、追加関税の延長や引き上げを検討している。
  • 中国側はレアアースを交渉カードとして活用し続けており、供給不安と構造的リスクは解消されていない。

まとめ

  • 中国は米中合意後もレアアース輸出規制の審査を引き延ばしており、西側企業は依然として供給不安に直面している。合意による一時的な緩和措置も6カ月の時限付きで、再規制のリスクが常に残るため、グローバルなサプライチェーンの安定には程遠い状況が続いている。

台韓半導体大手の中国工場向け出荷、米が規制強化の意向

  • 米商務省は2025年6月、台湾および韓国の主要半導体メーカー(TSMC、サムスン電子、SKハイニックス)に対し、中国工場向けの米国製半導体製造装置の出荷に関する「免除措置」を取り消す意向を伝えました。

これまでの「包括的免除」とは

  • サムスン電子、SKハイニックス、TSMCの中国工場は、米国製の半導体製造装置を輸出する際、個別の許可申請なしで出荷できる「包括的免除(ブランケット・ワイバー)」を適用されていました。
  • この免除措置は、2022年10月に米国が中国向け先端半導体技術・装置の輸出規制を強化した際、韓国・台湾の大手メーカーの中国工場の操業維持やサプライチェーン安定のために例外的に認められていたものです。

今回の規制強化の内容

  • 米商務省の担当者は2025年6月、サムスン、SKハイニックス、TSMCに対し、この「包括的免除」を取り消す意向を正式に伝達しました。
  • 今後は、これらの企業が中国工場向けに米国製半導体製造装置を出荷する際、毎回個別に輸出許可を申請する必要が生じます。
  • これにより、出荷のたびに米国政府の審査・許可が必要となり、オペレーションやサプライチェーンに大きな影響が出る可能性があります。

背景・影響

  • 米国は中国の半導体産業の高度化を抑制するため、先端半導体技術・装置の対中輸出規制を段階的に強化してきました。
  • これまで韓国・台湾の大手メーカーの中国工場には例外措置が適用されていましたが、今回の方針転換で「中国工場も他の中国企業と同等の扱い」となります。
  • この動きは米中間の貿易摩擦を再燃させるリスクがあり、グローバルな半導体サプライチェーンにも波及する可能性があります。
  • サムスンやSKハイニックスは、中国でNANDやDRAMの大規模生産を行っており、TSMCも中国南京に工場を持っています。今回の規制強化は、これらの工場の運営や投資計画に不透明感をもたらします。

今後の展望

  • 米中間では6月に「新たな輸出規制措置を控える」暫定的な合意がなされていましたが、今回の方針はその流れに逆行する可能性も指摘されています。
  • 米国側は、この措置を「中国のレアアース規制と同様のライセンス制に近づける」ものと説明しています。
  • 各社や関係国政府は、今後の運用や影響緩和策について米国と協議を続ける見通しです。

まとめ

  • 米国は、韓国・台湾の半導体大手が中国工場向けに米国製装置を出荷する際の免除措置を撤廃する方針を示し、今後は個別許可制へと移行する見通しです。これは米中ハイテク摩擦の一環であり、サプライチェーンや各社の中国事業に大きな影響を及ぼす可能性があります。

半導体戦争――世界最重要テクノロジーをめぐる国家間の攻防
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概要

  • クリス・ミラーによるノンフィクションで、半導体がいかにして現代の国際政治、経済、軍事バランスを決定づける「世界最重要資源」となったのかを描いています。著者は100人を超える科学者、技術者、企業経営者、政府官僚へのインタビューをもとに、複雑な半導体産業の仕組みや国家間の思惑を網羅的に解説しています。

主な内容と構成

  • 本書は全8部構成で、半導体の黎明期から現代の地政学的な争いまでを時系列で追っています。
  1. 半導体の黎明期(戦後の技術者たち、トランジスタの誕生など)
  2. 半導体産業の基軸になるアメリカ(シリコンバレーの形成、インテルの革命など)
  3. 日本の台頭(日本の経済復興、日米経済戦争など)
  4. アメリカの復活(韓国の台頭、湾岸戦争と半導体など)
  5. 集積回路が世界をひとつにする(TSMCの隆盛、リソグラフィ戦争など)
  6. イノベーションは海外へ(ファブレス革命、アップルの半導体など)
  7. 中国の挑戦(中国の自給自足政策、ファーウェイの隆盛など)
  8. 武器化する半導体(半導体の支配、サプライチェーン問題、台湾のジレンマなど)。

特徴と評価

  • 半導体が自動車、家電、ロケット、ミサイルといった現代社会のあらゆる分野で不可欠な資源となり、原油を超える戦略物資と位置付けられている点を強調しています。
  • 国家の命運が「計算能力」をどう活かせるかにかかっているという視点から、米中対立や日本の産業政策、台湾・韓国の役割など、グローバルなサプライチェーンと地政学リスクを詳細に分析しています。
  • フィナンシャル・タイムズ「ビジネスブック・オブ・ザ・イヤー2022」受賞作であり、NYタイムズベストセラーにもなっています。
  • 読者からは「分厚いが読みごたえがある」「半導体のルーツや産業構造、経済戦略がよく分かる」といった評価が寄せられています。

著者・訳者について

  • クリス・ミラーはタフツ大学フレッチャー法律外交大学院の准教授であり、国際歴史学、地政学、経済政策の専門家です。

まとめ

  • 本書は、半導体を巡る国家間の攻防を歴史的・地政学的観点から深く掘り下げ、現代社会における半導体の重要性と、その覇権争いの全体像を理解するうえで必読の一冊です。