BofAモイニハン氏、トランプ氏のカード金利上限案による支出鈍化懸念
BofA’s Moynihan Says Card-Cap Proposal Would Slow Spending
バンク・オブ・アメリカによる金利上限案への分析
バンク・オブ・アメリカ(BofA)のブライアン・モイニハンCEOは、トランプ米大統領が提案したクレジットカード金利の10%上限設定について、経済と消費者に与える負の影響を強調しています。
スイスのダボスで開催された世界経済フォーラム(WEF)でのインタビューにおいて、モイニハン氏は、この政策が実施されれば金融機関による信用の再配分(リ配分)が起こり、結果として個人消費を鈍化させるとの見解を示しました。
同氏によれば、金利に上限を設けることは、銀行が貸し出しのリスクを適切に管理することを困難にし、最終的には消費者がクレジットを利用できる機会そのものを奪うことにつながります。
信用収縮と消費者へのリスク
銀行業界全体が懸念しているのは、金利上限の導入による「信用の縮小」です。
現在のクレジットカード金利は平均で20%を超えていますが、これは貸し倒れのリスク(デフォルト・リスク)を考慮した価格設定です。金利が10%に制限されると、銀行は高いリスクを負うことができなくなり、特に信用スコアが低い層へのカード発行や限度額を大幅に縮小せざるを得なくなります。
この状況が発生した場合、消費者は正規の金融サービスを利用できなくなり、より高金利で規制の緩い貸金業者や質屋といった、リスクの高い代替手段に頼らざるを得なくなると業界側は主張しています。
政策の進捗と業界の現状
トランプ大統領は2026年1月20日からの1年間、金利を10%に制限するよう求めていましたが、現時点でこの提案を強制する法的根拠(法律や大統領令)は存在していません。
そのため、大手銀行の多くは金利を据え置いたまま、政府との協議を続けています。トランプ氏は、この提案が米国民の負債負担を減らし、住宅購入のための貯蓄を助ける一環であると説明していますが、金融業界からは「善意による価格統制が、かえって困窮層を追い詰める」との反論が出ています。
モイニハン氏は、たとえ1年間という期間限定であっても、既存の信用システムを全面的に組み替えることは市場に大きな混乱を招くと警鐘を鳴らしています。
中間選挙前の庶民に向けたリップサービス。実行する気はないのでは
2026年中間選挙を見据えた政治的背景と実行可能性の分析
トランプ大統領による「クレジットカード金利10%上限案」は、2026年11月に控える中間選挙に向けた強力な「庶民向けのアピール」という側面が非常に強いと分析されています。
ご指摘の通り、現時点では「実行する気がない(または実行できない)」と見なされる根拠がいくつか存在します。
政治的パフォーマンスとしての側面
トランプ氏は大統領就任1周年にあたる2026年1月20日を実施期限として提示しましたが、実際には業界に大きな変化は起きていません。
この提案には、物価高に苦しむ中・低所得層の有権者に対し、「銀行という強欲な既得権益から国民を守るリーダー」という構図を印象づける狙いがあると考えられます。
特に、共和党内のジョシュ・ホーリー議員や民主党のバーニー・サンダース議員といった、ポピュリズム(大衆迎合主義)的な傾向を持つ議員たちが過去に同様の法案を提出しており、超党派の支持を得やすいトピックを戦略的に選んだ形です。
法的・構造的な実現の壁
専門家や金融アナリストの間では、この政策の実行可能性について極めて懐疑的な見方が広がっています。
- 法的権限の欠如 大統領令だけで民間企業の金利を制限する法的権限は、現在の米国法では認められていません。これを強制するには連邦議会による立法が必要ですが、共和党内でも親ビジネス派の議員は反対に回る可能性が高く、法案成立のハードルは非常に高いのが実情です。
- 銀行側の「自主的な対応」への転換 ホワイトハウスの経済顧問らは、新法による強制ではなく、銀行側に「自主的」に低金利カードを提供させる構想を示唆し始めています。これは、当初の「一律上限設定」という強気な姿勢からのトーンダウンとも受け取れます。
- 経済的リスク BofAのモイニハン氏が指摘するように、無理に金利を下げれば銀行は低所得者へのカード発行を停止します。そうなれば、救済対象であるはずの庶民が決済手段を失うという本末転倒な結果を招くため、政権内でも慎重論が出るのは避けられません。
結論としての見通し
この提案は、実効性のある政策というよりも、中間選挙に向けた「対決姿勢」を示すための政治的スローガンである可能性が高いと考えられます。
今後、実際に10%上限が法制化される可能性は低いものの、トランプ氏はこの件を引き合いに出し続けて「国民のために戦っているが、議会や銀行が邪魔をしている」という物語を有権者に提供し続けることが予想されます。

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