イギリスがウクライナ向けにモスクワ爆撃用の長距離ミサイルを試験
- Sheer Madness: UK Tests Long-Range Missile For Ukraine To Bomb Moscow
イギリス国防省はウクライナ支援の一環として、低コストの新型長距離精密誘導兵器を開発する「プロジェクト・ブレイクストップ(Project Brakestop)」を進めています。
このプロジェクトは、アメリカ製の部品や航法データに依存しない独立した兵器を迅速に量産することを目的としています。
すでに試作機の飛行試験がスコットランドのヘブリディーズ諸島で行われ、1年以内の実戦配備を目指して開発が加速しています。
プロジェクト・ブレイクストップの概要
イギリス国防省の専門部隊(Taskforce Kindred)が2024年11月に立ち上げた開発計画です。
従来の巡航ミサイル「ストーム・シャドウ」よりも安価で、大量生産が可能な地対地攻撃兵器の確保を目的としています。
開発要求スペックと特徴
イギリス政府が提示した主な条件は以下の通りです。
- 射程:500キロメートル(約311マイル)以上
- 弾頭重量:225キログラム(約496ポンド)以上
- 飛行速度:時速600キロメートル(約373マイル)以上
- 製造コスト:1基あたり約40万ポンド(弾頭を除く)
- 生産能力:発注から数カ月以内に月間20基以上の製造が可能であること
米国製部品の排除(ITARフリー)
今回の兵器開発において極めて重要な要素は、アメリカ製の部品やデータ(地理情報など)を一切使用しないという点です。
これは、アメリカ政府による輸出管理規則(ITAR)や、使用許可を巡る政治的な判断による停滞を回避し、イギリスとウクライナが独自の判断で運用できるようにするための措置です。
開発に参加している主な企業
当初の27件の提案から、現在は以下の3社に絞り込まれて第2段階の契約が締結されています。
- MBDA UK:既存のストーム・シャドウ製造大手。独自開発の光学照合航法システムを備えた「クロスボウ(Crossbow)」を提案。
- MGI Engineering:フォーミュラ1(F1)の技術を応用し、軽量な複合素材を用いた「タイガーシャーク(Tiger Shark)」を開発。
- Rotron Aerospace:防衛分野での実績がある中小企業。速度よりも航続距離を重視したプロペラ推進型のシステムを提案。
今後の見通し
イギリス国防省は各社に追加資金を提供し、さらに15基ずつの改良型試作機と発射台などの製造を進めています。
数カ月以内にイギリス国内での追加試験を行い、その後にウクライナ現地での実戦投入を伴う試験へと移行する計画です。
日本にはできない?
日本にも長距離ミサイルを自国で開発し、量産する能力は十分にあります。
実際に「12式地対艦誘導弾能力向上型」(25式地対艦誘導弾)と呼ばれる、射程1,000キロメートルを超える国産長距離ミサイルの開発を完了し、2026年3月から熊本県の陸上自衛隊健軍駐屯地をはじめとする国内4カ所への配備を開始しています。
さらに、防衛装備庁は2026年4月に「低コスト誘導弾」に関する情報提供企業の募集を開始しました。これは、ウクライナ侵攻の教訓を踏まえ、民生品を活用して安価に大量生産できる長距離ミサイルの開発を目指す動きであり、イギリスのプロジェクトと非常によく似たアプローチを日本もすでに開始しています。
日本の長距離ミサイル開発の現状
日本はこれまで専守防衛の観点から長距離ミサイルを保有していませんでしたが、現在は「スタンド・オフ防衛能力(相手の脅威圏外から対処する能力)」の強化を急いでいます。
主な国産ミサイルの開発・量産状況は以下の通りです。
- 12式地対艦誘導弾能力向上型
従来の射程約200キロメートルから1,000キロメートル以上に大幅延伸したミサイル。当初の予定を1年前倒しし、2026年3月から陸上自衛隊への配備が始まっています。今後は艦艇発射型や潜水艦発射型の開発・量産も進められます。 - 島嶼防衛用高速滑空弾(HVGP)
複雑な軌道で高高度から高速落下するミサイル。アメリカでの最終発射試験を終え、実戦配備に向けた取得・量産フェーズに入っています。 - 極超音速誘導弾
マッハ5以上の超高速で飛行する次世代ミサイルで、現在研究開発と初期の取得が進められています。
低コスト・大量生産へのシフト
これまでの日本の防衛装備品は、高性能・高価格であり、生産数が限定的であるという課題がありました。
しかし、現代の消耗戦に対応するため、防衛装備庁は2026年4月27日に「低コスト誘導弾」の技術検討に向けた民間企業の募集を公式に発表しました。
- 目的:技術の高度化による価格高騰を抑え、有事に備えて十分な数量を早期に確保すること。
- 方針:ウクライナでの事例のように、民生用の部品や技術を柔軟に活用し、1基あたりの製造コストを大幅に抑えた長射程兵器の国内製造を目指す。
イギリスとの違いと今後の課題
技術的には日本にも同様の、あるいはそれ以上のミサイル製造能力がありますが、実用化のスピードと運用の柔軟性においては以下の違いがあります。
- 実戦での検証機会の有無
イギリスは開発したプロトタイプをウクライナの戦場という実際の運用環境でテストし、迅速に改良を重ねるサイクルを持っています。日本は国内やアメリカの試験場での実験に限られます。 - 開発・調達のスピード感
イギリスはF1の技術を持つ中小企業などを巻き込み、数カ月単位で試作から飛行試験まで進める仕組みを構築しています。日本も民間企業の知見を募り始めましたが、従来の厳格な防衛調達プロセスの枠組みの中で、どこまで迅速に量産体制を築けるかが今後の課題となります。

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