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節約のため、わずか1畳の「棺おけ住宅」に引っ越す香港の人々

2017年03月05日

サイモン・ウォン(Simon Wong)は過去20年間、どうすれば最小限のスペースで暮らせるのかを苦労を重ねて学んできた。彼はより少ない物、より少ないお金、そして写真を見ればわかるように、かなり狭いスペースで暮らしている。

61歳のウォンは、香港で増えている「棺おけ住宅」と呼ばれる部屋に住むことを余儀なくされた1人だ。たった20平方フィート(約1畳)のスペースしかないその部屋は、シャツとズボンを数着かけて横になるのがせいぜいの広さ。

家賃は月226ドル(約2万5700円)。普通のアメリカの都市なら、広々としたワンベッドルームのアパートをルームメイトとシェアするぐらいの金額だ(もちろんニューヨークやサンフランシスコのような大都市では、小さな倉庫スペースを借りるのが精一杯だろうが)。しかしながら、ウォンの住居はわずか奥行き1.22m、横1.83mしかない。

香港の不動産価格は現在、史上最高額を記録している。1平方フィート(約0.09平方メートル)あたりの価格は1380ドル(約15万7000円)付近を推移(ニューヨークはおよそ1645ドル、約18万7000円)。香港はわずか7%の土地しか住宅地帯として整備していないため、梁振英(りょう・しんえい)行政長官は、この危機的状況を香港にとって「もっとも深刻な危険要素」と呼んだ。

ウォンのような市民は、その被害者だ。香港政府は、棺おけ住宅に住んでいる人は約20万人に上ると推定するが、Society for Community Organizationの

代表者がReutersに伝えたところによると、実際の数ははるかに多い。

ウォンは公営住宅に申し込んだが、返事は届かなかったと語る。

彼が唯一幸運だった点は、独身だったことだろう。家族や配偶者がいる人たちとは違い、食料やプライバシーなどの希少なリソースについて誰かと交渉する必要もない。中には、小さな住宅を分け合って住む家族もいる。父親と娘が一緒の部屋に住み、母親と息子は玄関先の廊下で暮らすことを強いられている家族もいる。

一方、ウォンは自分の箱の中で、毎日いつでもテレビを観たり、タバコを吸ったりできる。

香港は次の10年間で、より手頃な価格の住宅を増やす計画を発表している。2027年までには、28万の公営住宅と18万の民間住宅を建設する予定だ。

しかし、その間にも、市民の多くはますます小さくなる家に引っ越すことを余儀なくされる。たとえそれが、人間としての安らぎを犠牲にすることになったとしても。

香港(Hong Kong)