イスラエルとの対決構図強まるトルコ、軍備増強急ぐ
- 「スチールドーム」構築も加速か
トルコは現在、イスラエルやイランとの緊張の高まりを受けて、軍備増強と防空能力の強化を急速に進めています。特に注目されているのが、多層型統合防空システム「スチールドーム(Steel Dome)」の構築です。
- 「スチールドーム」プロジェクトは、トルコ全土をカバーする多層的な防空ネットワークを目指す国家プロジェクトであり、低高度・中高度・高高度の各レベルで段階的かつ統合的な防御を提供するものです。これはイスラエルの「アイアン・ドーム」に類似した概念ですが、より広範囲かつ多層的な防衛を意図しています。
- トルコ政府はNATOの防衛費目標(2035年までにGDP比5%)を支持し、防空網への投資を最優先事項としています。
- エルドアン大統領は、「中・長射程ミサイルの備蓄を抑止力が確保できる水準まで引き上げる」と明言しており、国産および外国製の兵器取得による軍備強化を急ピッチで進めています。
弾道ミサイル計画と輸出
- トルコは1990年代から弾道ミサイル開発に着手し、国産SRBM「ボラ-1」や「タイフン」、さらに準中距離弾道ミサイル(MRBM)「ジェンク」などの開発も進めています。
- これらのミサイルは、トルコの攻撃兵器の射程と能力を大幅に拡大し、今後は輸出契約の拡大も見込まれています。特にドローン分野での成功に続き、トルコ製弾道ミサイルも国際的な需要が高まる可能性があります。
今後の展望
- 現時点で中東最大の弾道ミサイル備蓄を持つのはイランですが、最近の戦争で大きな打撃を受けたため、トルコが今後生産を増強すれば、イランを上回る可能性も指摘されています。
- トルコは「スチールドーム」や弾道ミサイル能力の拡充を通じて、地域の軍事バランスにおいてより大きな影響力を持つことを目指しています。
「異なる高度にロケットを配置し、それらが体の臓器のように調和して機能することが、私たちにとって非常に重要なのです。」(トルコ指導者の発言)
まとめると、トルコはイスラエルとの対決姿勢を強める中で、「スチールドーム」構築を加速し、弾道ミサイルや防空網の拡充に国家的な優先順位を置いている状況です。
イスラエルとトルコの関係は、近年著しく悪化
- かつては中東で数少ないイスラム教国としてイスラエルと国交を樹立し、経済・軍事面でも緊密な協力関係を築いていましたが、ここ20年ほどで両国の関係は大きく変化しました。
主なポイントは以下の通りです。
- 歴史的背景
トルコは1949年、イスラム圏で初めてイスラエルを国家承認しました。その後、軍事・経済協力を軸に友好関係を築いてきました。 - 関係悪化の要因
エルドアン大統領の長期政権下でトルコはイスラム色を強め、パレスチナ問題への関与を強化。2010年のガザ支援船事件などを契機に、両国関係は急速に冷却化しました。 - ガザ紛争と貿易停止
2023年以降のガザ紛争でトルコはイスラエルの軍事行動を強く非難し、2024年5月にはイスラエルとの貿易を全面停止しました。これはイスラエルにとって主要な貿易相手国であったトルコが、ガザの「人道的悲劇の悪化」を理由に下した決断です。これにより、両国の貿易額(年間60~70億ドル規模)は事実上ゼロとなり、経済関係も凍結状態です。 - 外交・安全保障面
トルコはガザ紛争以降、イスラエルとの外交関係を縮小し、NATOにおけるイスラエルとの協力にも反対姿勢をとっています。また、イスラエル・イラン間の緊張に際しても、トルコは地域の安定とガザの人道危機解決を国際社会に訴えています。 - 現状と見通し
両国は一時的な和解を試みたこともありましたが、エルドアン政権とネタニヤフ政権の対立が続き、関係は冷戦状態にあると見られています。トルコはイスラエルに対する経済的・外交的圧力を強める一方、イスラエル側もトルコへの依存度を下げる動きを強めています。
このように、イスラエルとトルコの関係は、かつての協調から一転して、外交・経済・安全保障の各分野で深刻な対立と断絶状態にあります。
現在ロシアに亡命中であり、シリア国内での権力は失われています。
バッシャール・アル=アサドの現在
2024年末から2025年初頭にかけて、シリア国内の政権崩壊とともに国外へ逃亡し、現在はロシアに亡命していると報じられています。
主な経緯と現状は以下の通りです。
- 2024年12月8日、シリアで約14年に及ぶ内戦の末、アサド政権が崩壊し、バッシャール・アル=アサドは国外へ逃亡しました。
- 2024年12月中旬、反体制派が首都ダマスカスに進攻し、政権を失ったアサド氏は妻アスマ氏とともにロシアへ移動。ロシアでの亡命が認められたと報じられています。
- 2025年1月、シリアの首相がアサド大統領と直接連絡が取れなくなったことを認め、事実上の亡命を確認しました。
- 現在、アサド氏はモスクワで厳しい制限下に置かれているとされ、一部報道では妻アスマ氏が離婚を申請しイギリス帰国を希望しているとも伝えられていますが、ロシア当局はこれを否定しています。
この政権崩壊により、54年にわたるアサド一族の支配と、60年に及ぶバアス党による統治が終焉を迎えました。シリア国内は新たな権力構造を模索する混乱状態にあり、反政府勢力や各国の利害が複雑に絡み合っています。
要約すると、バッシャール・アル=アサドは現在ロシアに亡命中であり、シリア国内での権力は失われています。
トランプ氏、対シリア制裁解除 イスラエルとの対立解消後押し
ドナルド・トランプ米大統領は2025年6月30日、シリアに対する経済制裁を大幅に解除する大統領令に署名しました。 この措置は、約20年にわたり続いてきたシリア制裁の多くを終わらせ、同国の再建と国際社会への復帰を後押しすることを目的としています。
解除の背景と目的
- アサド政権の崩壊と新政権の誕生
イスラム過激派による反乱の末、バッシャール・アル=アサド政権が崩壊し、アフマド・アル=シャラー暫定大統領が就任。これを受けて、米国はシリアの新政権を支援し、安定と再建を促進するため制裁解除に踏み切りました。 - イスラエルとの関係改善促進
トランプ政権は、シリアとイスラエルの安全保障合意や関係正常化を後押しする意図も明らかにしています。
解除された制裁と継続される制裁
解除された内容
- シリア政府、中央銀行、国営企業など518の個人・団体に対する経済・金融制裁が解除。
- 一部輸出規制の緩和、対シリア支援の制限解除。
- シリアの社会基盤再建や経済活動の再開を支援。
継続される制裁
- アサド前大統領とその側近、人権侵害者、麻薬密売人、化学兵器関連者、IS(イスラム国)およびその関係者、イラン系武装勢力などには制裁を維持。
- 「シーザー法」など議会承認が必要な制裁については、国務長官に見直しを指示しつつも、完全解除には至っていません。
米政府の声明と今後の方針
- ホワイトハウスの説明
「シリアの新政権が安定と平和に向けて前向きな変化を示している」と評価し、「制裁解除は、過去の人権侵害者やテロ支援者への責任を追及しつつ、国の再建と地域の安定を促すもの」としています。 - 今後の条件付き見直し
シリアがイスラエルとの関係正常化やテロ対策など具体的な進展を示せば、さらなる制裁緩和も検討。
国際的な反応と影響
- 中東諸国(特にサウジアラビア、トルコ)は歓迎し、シリアの再建や地域安定への期待が高まっています。
- 欧米の一部や人権団体は慎重で、新政権の過去の武装勢力との関係や人権状況の改善を注視しています。
まとめると、トランプ大統領はシリアの新政権と地域安定を後押しするため、アサド政権時代から続いていた広範な対シリア制裁を大幅に解除しましたが、アサド前大統領やテロ関連勢力などへの制裁は維持されています。 今後のシリア情勢やイスラエルとの関係進展によって、追加的な制裁緩和も検討される見通しです。
シリアに工業規模の麻薬密造施設、アサド政権崩壊で実態解明へ
2024年12月16日
アサド政権は「カプタゴン」として知られる中毒性のアンフェタミン系覚せい剤の生産と販売で利益を得ていると非難されてきた。カプタゴンは戦場から建設現場や富裕層のパーティーまで中東全域に拡散した。旧反体制派の兵士らはドゥーマ市にある廃墟となった暗い洞窟のような倉庫で、家具や果物、装飾用の小石、電圧安定器の中に隠された数千個の錠剤を発見した。ロイターの記者は、錠剤がパレットに積み上げられているのを確認した。西側諸国は、アサド大統領の弟マヘル・アサド氏が「貧乏人のコカイン」とも呼ばれるこの麻薬の取引を取り仕切っていたとみている。現在、マヘル氏の所在は分かっていない。米シンクタンクのニューラインズ・インスティテュートによる「カプタゴン・トレード・プロジェクト」のディレクター、キャロライン・ローズ氏によると、カプタゴンの世界的な取引額は年間100億ドルと推定され、シリア指導部の利益は約24億ドルに上っていたという。同プロジェクトは、カプタゴン押収や研究所の捜索に関する全ての公的記録を調査しており、ロイターが確認した現場は発見されたカプタゴン施設の中でも最大級だとしている。アサド政権崩壊後の数日間で、旧反体制派は各地で複数の麻薬製造施設を発見したという。
5年ぶりにシリア内戦の相関図を更新した
【デスク解説】シリア アサド政権“事実上崩壊”なぜ?今後は? | NHK
シリア内戦
2011年 「アラブの春」 波及 政権が弾圧し内戦に発展
2014年 過激派組織IS イラクにまたがる国家樹立 一方的に宣言
2015年 政権にロシアから空爆支援 IS支配地域を奪還
2020年 ロシア (政権の後ろ盾) とトルコ (反政府勢力を支援) 停戦合意
トルコ大統領、国連総長と電話会談 「シリア紛争は新段階に」
トルコのエルドアン大統領は5日、国連のグテレス事務総長と電話会談し、シリア紛争が「冷静に管理される」新たな段階に入ったとの見解を伝えた。トルコ大統領府が明らかにした。
シリア反政府勢力は5日、中部の要衝ハマを制圧し、同国のアサド政権およびその同盟国であるロシアとイランに新たな打撃を与えた。
エルドアン氏はグテレス氏に対し、シリア政府は政治的解決を達成するために、国民との対話を迅速に行う必要があると指摘。トルコは緊張緩和と民間人保護、政治的解決の下地を整えることに取り組んでいると語った。
内戦続くシリア 反政府勢力が第2の都市アレッポの大部分を制圧
2024年12月01日
シリアでは2011年、「アラブの春」と呼ばれる民主化運動が波及する形で反政府デモが各地に広がり、これをアサド政権が弾圧したことで激しい内戦に発展しました。
アレッポは反政府勢力の最大の拠点でしたが、2016年にロシアの支援を受けたアサド政権側が完全に制圧していました。
今回の反政府勢力による大規模攻撃を受けて、ロシアは反政府勢力の拠点を空爆したほか、アサド政権側に追加の軍事支援を約束したと報じられています。
アメリカのCNNテレビは、「反政府勢力は奇襲攻撃を始め、長年、ほとんどこう着していた紛争を再燃させた」と伝えていて、戦闘の拡大や避難民の増加など、情勢の悪化が懸念されます。
シリア
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相関図
小口高(おぐち たかし)による文、山本美希による絵の絵本で、2025年4月にアリス館から出版されました。本書は小学生中学年以上を対象にした自然・科学ジャンルの絵本で、全38ページです。
内容は、**地理学者になったばかりの「ぼく」**が、中東の国シリアにある洞窟を訪れ、そこで発見されたネアンデルタール人の痕跡を調査する物語です。主人公は地形調査のために現地へ赴き、地面の下に重なる歴史や、当時の自然環境を調べる調査に加わります。
本書は、地理学と考古学の調査が連携して行われる様子や、シリアの多様な宗教・民族、現地の食文化などにも触れながら、子どもたちにこの土地の魅力や歴史への興味を促す内容となっています。
著者の小口高は1963年長野県生まれ、東京大学空間情報科学研究センター教授であり、地形学と地理情報科学を専門としています。日本、東アジア、英国、シリア、イタリアなどで河川や扇状地、斜面、考古遺跡に関する研究を行っています。
この絵本は、小口教授が大学院生時代にシリアで行った調査経験をもとに執筆されたもので、小学生にもわかりやすく地理学や考古学の面白さを伝える構成となっています。
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