岸信介がCIAから資金提供を受けていた 安保闘争後に支援を縮小

世界

 

日本の共産主義化を恐れていた近衛文麿

近衛文麿は、日中戦争(1937年7月7日-1945年)期に首相として日本を率いた政治家であり、国内の共産主義化の脅威に強い危機感を持っていました。

近衛文麿の主な施策と背景

  • 日本では、国内の戦争体制を強化するために「新体制運動」を推進し、政党の解散、大政翼賛会の結成、さらには全国の労働組合を解散し、産業報国会へ統合、教育制度の国家主義化(国民学校令、米配給制の導入等)を進めました。これら政策はナチス=ドイツやソ連の社会主義国家政策をモデルにしていた面もあり、国家総動員法や電力国家管理法の制定はソ連の五カ年計画の模倣であると評されています。
  • 近衛自身は、そのような全体主義体制の強化、統率によって国内の「赤化」(共産主義化)の脅威を防ぎ、国家存立を守ろうと考えていたとされています。とくに「近衛上奏文」などで、共産主義者の台頭とソ連型革命の危機に強い注意を促していた記録が残されています。

共産主義化への具体的な懸念

  • 近衛は、外的な脅威(ソ連、国際共産主義運動)だけでなく、国内の隠れ共産主義者や左翼勢力の活動によって国体が脅かされることを憂慮していました。上層保守層による「赤化批判」や「日本主義化された共産主義運動」への警戒も強く、天皇制維持や強権的国家統制を正当化する論拠として用いられました。
  • 第二次世界大戦前夜、日本は国際情勢に翻弄されつつ、「社会大衆党」など左派勢力も政治的影響力を持ったため、近衛は自ら独裁体制の樹立や政治体制の統制強化を志向しました。結果として全体主義的政策、戦時国家体制の確立、一党化運動(新体制運動、大政翼賛会)を進めることになりました。

戦後の評価

  • 近衛のこうした共産主義化への恐れは、戦争責任や戦時体制批判と合わせて戦後も論争の中心にあります。彼自身が共産主義者だったのではなく、逆にその脅威を強く意識した国家主義者・保守主義者であったという見方が主流となっています。

近衛文麿は、共産主義化の懸念に立脚して、日本の保守主義・国家統制を強化する政策を推し進め、戦争と国内統制の体制づくりに尽力した人物として、現代でも再評価が進んでいます。

 

 

岸信介とCIAの関係

概要

  • 岸信介(元内閣総理大臣)は、戦後日本の政界復帰と権力掌握の過程で、アメリカの中央情報局(CIA)と深い関係を持っていたことが、近年の公開資料や研究で明らかになっています。

戦後の経緯とCIAとの接点

  • 岸信介は第二次世界大戦後、A級戦犯被疑者として収監されましたが、不起訴となり、その後アメリカの支援を受けて政界に復帰しました。
  • CIAは、冷戦下で日本の共産化を防ぐため、反共主義を掲げる岸信介を支援し、秘密資金の提供や政治的後押しを行ったとされています。
  • ジャーナリストのティム・ワイナーによると、「世界の有力国で、将来の指導者をCIAが選んだ最初の国は日本であり、その指導者が岸信介だった」とされます。

具体的な協力と影響

  • 岸信介は1951年の日米安保条約改定や、その後の新安保条約締結において、CIAおよびアメリカ政権の強い影響を受けて行動しました。
  • アメリカ側は岸に対し、スパイ防止法(秘密保護法)などの立法措置を要請し、岸もこれに応じる姿勢を示していました。
  • CIAは自民党への資金援助や、国内の反米・左翼運動の妨害活動にも関与しており、岸が首相となるプロセスでもその影響力が及んでいました。

評価とその後

  • 岸信介の政権は、アメリカの意向を強く反映したものとされ、反共体制の構築や日米安保体制の強化に重要な役割を果たしました。
  • しかし、安保闘争後にはアメリカ側も岸政権への支援を縮小したとされています。

まとめ

  • 岸信介は、戦後日本の反共体制構築と日米関係強化の中で、CIAから資金や政治的支援を受け、アメリカの政策意向に沿って行動した政治家です。彼の政界復帰と首相就任には、CIAの積極的な関与があったことが、複数の公開資料や証言から裏付けられています。

 

 

資料が公開されたのはいつ?

岸信介とCIAの関係を示すアメリカの公文書や資料は、主に2000年に制定された「日本帝国政府情報公開法(Japanese Imperial Government Disclosure Act)」に基づき、クリントン政権末期から2000年以降に機密解除され、公開が進みました。この法律のもと、戦時・占領期の日本関係資料約10万ページが機密解除され、その中にCIAが収集した日本人に関する個人ファイルも含まれています。

また、これらの資料の一部は2007年までに公開が進み、さらに2017年12月には岸信介首相とCIAに関する文書が「機微区分情報(SCI)」として別途保管されている可能性も指摘されており、全ての資料が完全に公開されたわけではありません。一方で、NHKによると、岸信介のアメリカ訪問記録などが2019年12月19日に公開された例もあります。

まとめると、岸信介とCIAの関係を示す主な資料は、2000年以降、段階的に公開されてきましたが、機密性の高い一部資料は今なお未公開の可能性があります。

 

 

驚くべきCIAの世論操作
479768027X

  • 調査報道ジャーナリストがCIAのメディア操作の驚くべき実態を明らかにした書籍です。

本書の内容は以下のポイントに集約されます。

  • CIAは自らの非合法行為を隠蔽し、それを暴こうとするジャーナリストを陥れようとする。
  • 偽りのイメージを流布して世論を操作している。
  • ハリウッド映画にまで影響力をもち、アカデミー賞受賞作品『アルゴ』のようにCIAを美化するために史実をねじ曲げている。
  • ニカラグアの反政府組織「コントラ」の麻薬密売にCIAが関与していることを暴いたジャーナリスト(ゲイリー・ウェッブ)をCIAが追い詰め、自殺に追い込むなどの実例が紹介されている。
  • グアンタナモ収容所のイメージ操作や、米大手新聞メディアとの情報交換、CIAとハリウッドの密接な関係など、多角的な視点で世論操作の実態を暴いている。
  • 日本でも政府の情報隠蔽やメディアへの圧力が指摘されている状況で、本書は真実を見る目を養うための重要な参考になる。

著者ニコラス・スカウは1970年アメリカ・ネバダ州リノ生まれで、調査報道ジャーナリストとして多くのCIAの闇を暴いてきました。本書は2018年8月に集英社インターナショナルより新書として刊行されています。

この書籍は、メディア操作や世論形成に関心がある方、政府や情報操作に対して批判的に検証したい方にとって必読の一冊です。

 

 

 

コメント