ベトナムも少子高齢化、二人っ子政策廃止に続き「出産一時金」導入
ベトナムでは少子高齢化が急速に進んでおり、日本などの先進国と比べて「豊かになる前(経済開発の途上段階)に高齢化してしまう」という深刻なリスクに直面しています。
政府は二人っ子政策を廃止したことに続き、産休の延長や出産一時金の支給といった新たな人口関連法制を施行しましたが、現地の現役世代からは「支援が少なすぎて、もう一人産む気にはなれない」といった否定的な声が多く上がっています。
ベトナムの現状と新たな支援策
ベトナムの合計特殊出生率は1.93であり、人口維持に必要な2.1を下回っています。
さらに平均寿命が75歳近くまで伸びたことで、60歳以上の人口が全体の10%を超えました。今世紀半ばには高齢者が全体の25%を占め、総人口が減少に転じると予測されています。
これに対抗するため、ベトナム政府は以下のようなインセンティブ(優遇措置)を導入しました。
- 第2子を出産する母親の産休を6か月から7か月へ延長
- 出生前検査や新生児マスのスクリーニング検査への補助金支給
- 特定の基準を満たす母親へ、最大228ドル(約3万7000円)の出産一時金の給付
「豊かになる前の高齢化」という最大の懸念
経済学者や世界銀行が最も懸念しているのは、ベトナムの高齢化が「国の経済がまだ十分に発展していない段階」で起きている点です。
現在のベトナムの1人当たり名目GDPは約5000ドルであり、これはかつて日本が同じような出生率だった1980年代初頭の水準の半分にすぎません。
社会保障制度が十分に整う前に労働力不足や高齢化が押し寄せるため、経済成長が大きく減速する恐れがあります。
政策に対する現役世代の本音
政府の新しい支援策に対し、子育て世代の受け止め方は非常に冷ややかです。
記事に登場する32歳の会計士女性は、世帯月収1000ドルの約半分が第1子の養育費に消えている現状を明かし、「たった1か月の産休延長と、約75ドルの給付金のために、もう一人産もうとは思えない」と語っています。
また、月収約380ドルの24歳女性は、経済的・精神的なプレッシャーから「子どもは一人も産むつもりはない」と断言しています。
国連人口基金(UNFPA)の専門家も、一時的な給付だけでは不十分であり、高額な住居費や教育費に対応するための「継続的かつ包括的な支援」がなければ、人々の意識を変えるのは難しいと指摘しています。
日本などに労働者を供給しているが、ベトナムにとっては外貨を獲得する手段だからやめられない
ベトナム政府にとって労働者の海外派遣は、国内の雇用吸収(失業対策)だけでなく、年間約65億から70億ドルに達する「海外送金(外貨獲得)」の重要な手段となっています。
しかし、国内の急速な少子高齢化によって「将来の労働力不足」が確実視される中、いつまでも働き手を外に送り出し続ける政策を維持できるのか、方針の矛盾とジレンマに直面しつつあります。
外貨獲得と経済における重要性
ベトナムにとって、海外で働く労働者からの国内送金は、輸出や観光と並ぶ主要な外貨収入源として定着しています。
- 巨額の送金規模
海外からの送金額は年間70億ドル規模に上り、地方都市や農村部の経済を直接的に潤す原動力となっています。 - 国策としての位置づけ
1980年代のドイモイ(刷新)政策以降、政府は失業率の低下と貧困削減、そして外貨獲得を同時に達成する手段として、官民を挙げて送出機関を整備し、日本や台湾などへの派遣を推進してきました。
国内の少子高齢化とのジレンマ
記事にある通り、ベトナムは世界で最も速いペースで少子高齢化が進む国の一つです。
- 矛盾する政策
国内で「将来的な労働力不足」や「社会保障の逼迫」が懸念されているにもかかわらず、現在も年間10万人以上の貴重な若い労働力を海外へ送り出し続けています。 - 技能移転の限界
政府は建前として「海外で高度な技術を学び、帰国後に国内の産業発展に貢献してもらう」としていますが、実際には帰国後の受け皿が不十分で、単なる労働力(外貨獲得手段)の輸出にとどまっているケースが多いのが実態です。
今後の見通し
短期的には、ベトナム政府が重要な経済の柱である労働者派遣(外貨獲得手段)を急にやめる可能性は低いです。
しかし、国内の生産年齢人口が減少に転じる今世紀半ばに向けて、経済が豊かになる前に働き手が枯渇するリスクを避けるため、いずれは「外に送る国」から「国内にとどめて経済を支える」方向へと、抜本的な方針転換を迫られる時期が近づいています。

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