気候変動に関するフェイク情報の拡散防止で環境省が特設ページを開設
特設ページ開設の背景と目的
- 環境省は2025年6月20日、気候変動に関する「地球温暖化は起きていない」「温室効果ガスは無関係」などのフェイク情報の拡散を防ぐため、公式ホームページに特設ページを新設しました。
- 2024年後半以降、SNSなどで科学的根拠がない誤情報が急増しており、国民が正確な情報に簡単にアクセスできるようにすることが主な狙いです。
特設ページの主な内容
- 国連のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告書や、日本国内の猛暑日・大雨頻度増加といった科学的データを掲載し、温暖化の現状と原因を分かりやすく解説しています。
- 気象庁などが公表している観測データや、将来予測も整理されており、一般の人でも理解しやすい内容となっています。
政府の立場と国際連携
- 環境省は「地球温暖化の主な原因は人間活動による温室効果ガスの排出である」とするIPCCの結論(温暖化の95%以上が温室効果ガスによる)を支持し、誤情報の拡散は重大な問題と認識しています。
- 日本政府は2050年カーボンニュートラルの実現を目指し、2035年までに温室効果ガスを2019年比で60%削減する目標を掲げています。
- 国連も同様に、気候変動に関する正確な情報発信を強化しており、日本の取り組みは国際的な潮流に沿ったものです。
今後の対応
- 環境省は文部科学省や金融庁と連携し、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に基づく企業支援や、脱炭素社会実現に向けた国民運動も推進しています。
- 今後も科学的根拠に基づく情報発信を強化し、誤情報の拡散防止に努める方針です。
- 「偽報や科学的裏付けがない情報が広がることは重大な問題である」(浅野大臣、2025年6月20日記者会見より)
まとめ
- 環境省は、気候変動に関するフェイク情報の拡散防止を目的に、科学的根拠に基づく情報提供を強化しています。国民が正確な知識を得られるよう、最新の観測データや国際的な報告を分かりやすく発信し、誤情報への迅速な対応を進めています。
「EVしか乗れなくなる?」気候変動のフェイクが拡散 いま何が
SNSで拡散するフェイク情報の背景
- 近年、SNSを中心に「気候変動は嘘」「EV(電気自動車)しか乗れなくなる」といった根拠のない情報やフェイクニュースが急増しています。イギリスのニュースサイト「トータス」によれば、気候変動を疑うインフルエンサーによるX(旧Twitter)での投稿は2021年から2024年にかけて82%増加、YouTubeでも43%増加しています。
- こうした投稿の多くは、科学的根拠に乏しく、「地球の気温は自然に変動するもの」「気候変動は詐欺だ」といった主張が目立ちます。実際、人気インフルエンサーや海外の政治家の発言が日本語に翻訳され拡散されるケースも多く、日本国内でも関連投稿がこの5年で3倍以上に増加しています。
なぜフェイクが拡散するのか
- 国連開発計画(UNDP)は、こうした偽情報が拡散する主な動機として、
- 既得権益(特に化石燃料産業)を守るため
- SNSで注目を集めて収益や影響力を得るため
- を挙げています。
- また、社会的な分断や雇用不安などが偽情報拡散の土壌となっているとも指摘されています。例えば、オーストラリアでは「気候非常事態宣言」を巡り「EVしか乗れなくなる」「自由が制限される」といった誤情報が拡散し、住民による大規模な抗議活動が発生した事例もあります。
科学的事実と政策の現実
- 国連やIPCC(気候変動に関する政府間パネル)などの専門機関は、「気候変動は人間活動による温室効果ガス排出が主因である」と明確に結論づけており、過去50年間の気温上昇は過去2000年で前例のない速さです。
- また、「EVしか乗れなくなる」といった極端な政策が現実にすぐ実施されるわけではありません。温室効果ガス削減のためにEVや再生可能エネルギーの普及は進められていますが、段階的な移行が前提であり、社会や経済への影響を考慮しながら政策が進められています。
日本政府・国際機関の対応
- 環境省は、気候変動に関するフェイクニュースの拡散防止のため、科学的根拠に基づく情報発信を強化しています。国連も、気候変動の「事実」と「根拠」をウェブサイトで公開し、正確な理解の促進を呼びかけています。
私たちにできること
- 情報の出所を確認し、科学的根拠のある情報を参照する
- SNSで拡散される情報を鵜呑みにせず、専門家や公的機関の発信を確認する
- 分断や不安を煽る極端な主張には注意し、冷静に判断する
- 「SNSで拡散される誤情報や偽情報は、科学への信頼や政策対応を損なうリスクがある。正確な情報にアクセスし、シェアする前に考えることが重要」(国連グローバル・コミュニケーション担当事務次長)
まとめ
- 「EVしか乗れなくなる」といった主張は、現時点で科学的根拠や政策的裏付けのないフェイク情報です。気候変動対策は国際的な合意と科学的根拠に基づき進められており、社会全体で正しい理解と冷静な対応が求められています。
実装フェーズへの投資が加速 クライメートテックの現在地
実装フェーズへの投資加速と世界の動向
- 2025年3月にニューヨークで開催された「Wall Street Green Summit 2025」では、クライメートテック(気候変動対策技術)分野が「構想」から「実行」へと大きくシフトしている現状が示されました。特に、ESG投資の進化やカーボン市場の制度化、AIを活用した脱炭素技術の社会実装が主要テーマとなり、産業・金融両面での脱炭素化の動きが加速しています。
- Net Zero Insightsの最新レポートによれば、2024年の気候テック関連の資金調達額は約922億ドルと前年から微増。一方でディール件数は減少し、1件あたりの調達額が拡大。特に、全体の約半分を占めるデット(債務)ファイナンスによるギガラウンド(10億ドル超)の存在感が増し、ファシリティ建設や供給能力拡張といった「実装フェーズ」への投資が顕著になっています。
地域別の投資傾向と技術領域の選別
- 2024年は、ヨーロッパが初めて北米を上回る資金調達を記録。スウェーデンやフランスの大型プロジェクトへの資金集中が背景です。一方、米国は依然としてブレークスルー型技術(研究開発段階)への投資が活発で、R&D企業への出資額は欧州の倍以上となっています。
- 初期段階のスタートアップには逆風が吹いており、プレシードおよびシードラウンドのディール数は前年比で22.1%減少。VC資金は成長段階以降のプロジェクトに集中し、「社会実装可能性」や「資本の統合力」が問われるフェーズに突入しています。
- 投資の評価軸も変化し、エネルギー、交通、循環型経済など政策後押しと市場性の両方を備えた分野に資金が集まる一方、水資源や自然環境、排出管理といった分野は資金ギャップが続いています。
米国・欧州の戦略と日本企業への示唆
- 欧米では、政策と金融の連動、インフラ整備を伴う資金の大型化、ブレークスルー技術への研究投資の継続など、次の局面に入っています。日本企業は再エネ設備や蓄電池素材、燃料電池などで高い技術力を持つものの、国際的な資本連携や大型プロジェクトでの主導権獲得では慎重な姿勢が足かせとなり、欧米との成長エコシステムの格差が広がっています。
- 短期的な投資回収が見込みづらい分野でこそ、官民の役割分担や長期視点での資金供給体制、国際スタンダードに沿ったESG投資の信頼性担保や開示制度の整備が求められます。
脱炭素は「経済競争の主戦場」へ
- WSGS2025は、脱炭素の未来が技術革新だけでなく、制度・資本・人材の複合的統合によって支えられるべき段階にあることを示しました。今後は「選ばれる領域・企業」への資源集中が進み、日本企業にも選択と集中、意思決定の速さが問われています。脱炭素は「環境対応」ではなく、「経済競争の主戦場」となりつつあり、日本がグリーン・イノベーションの担い手となるためには経営と政策の再構築が不可欠です。
- 「米国のクライメートテックは、近年の世情の変化で文脈が大きく変わった。この領域のスタートアップ企業のピッチから、『地球のために』というメッセージがなくなり、代わりに、『コスト削減のため』『生産性向上のため』というメッセージにとってかわった。彼らは訴求方法を変えて生き残りを模索している」
まとめ
- クライメートテック投資は「実装・社会実装」フェーズへと本格移行
- 欧州が資金調達で北米を上回り、米国は依然R&D投資が活発
- 初期スタートアップへの投資は減少、成長段階以降に集中
- 日本企業は国際連携・大型プロジェクトでの主導権獲得が課題
- 脱炭素は経済競争の主戦場。経営・政策の再構築が急務
今後、選択と集中、そしてスピーディな意思決定が日本企業にも強く求められています。
概要
- 気候変動や地球温暖化に関する“定説”や広く流布している主張について、最新の観測データや統計をもとに検証し、「本当か?」「科学的根拠はあるのか?」を問い直す書籍です。著者はキヤノングローバル戦略研究所の杉山大志氏。2025年4月に電気書院から刊行され、Kindle版も提供されています。
主な内容と特徴
- 気象観測データや環境統計、数値シミュレーション、エネルギー政策など多角的な視点から、以下のような話題を取り上げています。
- 台風や大雨の激甚化は本当に起きているのか
- 地球温暖化の進行速度はどの程度か
- 猛暑や異常気象の主因は何か
- CO₂の増加は本当に悪いことなのか
- シミュレーション予測の信頼性
- エネルギー政策と経済への影響
- 例えば「日本の平均気温の上昇は過去30年でわずか0.3℃」「猛暑や豪雨の主因は自然変動が大きい」など、一般的な報道や政府見解とは異なる視点をデータで示しています。
- 「気候危機説は誇張されている」「不吉なシミュレーション予測は信頼に足らない」「経済を犠牲にするのは誤り」といった結論を導き、現実的な政策判断の必要性を訴えています。
目次(抜粋)
第I部 気象観測データ
- 台風は激甚化していない
- スーパー台風は来なくなった
- 地球温暖化は30年間でわずか0.3℃
- 猛暑の主因は自然変動
- 東京は都市熱ですでに3℃上昇
- 大雨は激甚化していない
- IPCCは異常気象について本当は何を言っているのか
- CO₂はすでに5割増えた(だが、これは悪いことではない)
第II部 環境観測データと社会統計データ
- 暑さによる死亡は減り続けている
- 自然災害による損害額は増加したのか
- 気候変動によって災害が50年で5倍になったというのは本当か
- 気候変動で熱波が30倍も起こりやすくなったというのは本当か
第III部 数値モデルによるシミュレーション
- 気温予測は計算する人によって大きく異なる
- 被害予測の前提とするCO₂排出量が多すぎる
- シミュレーションは過去の再現すらできない
第IV部 エネルギー政策
- 世界では化石燃料消費もCO₂排出も増え続けている
- 太陽光発電や風力発電は高価である
- EVは環境に優しいのか
- 日本がCO₂をゼロにしても気温は0.006℃しか下がらない
結論――日本はどうすればよいのか
評価・特徴
- 「印象操作に惑わされないための必読書」として、データ重視の冷静な議論を展開しています。
- 気候変動問題に対する懐疑的な視点や、現状の政策やメディア報道への批判的分析が特徴です。
こんな人におすすめ
- 気候変動や地球温暖化について、データに基づいた多角的な視点を知りたい方
- 現在の気候政策やメディア報道に疑問を感じている方
- 科学的根拠に基づく議論を重視する方
注意点
- 著者の主張は主流の気候科学コミュニティの見解と異なる点が多いため、他の専門家の意見や国際的な科学的合意とあわせて読むことが推奨されます。