ロシア経済、危険信号が点滅
- 景気減速で戦時経済の限界露呈
ロシア経済は2025年に入り、景気減速や戦時経済の限界が顕在化しつつある。主な状況は以下の通り。
- 製造業の縮小:2025年6月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は47.5と、2022年3月以来最も急速な縮小を記録した。需要の弱さやルーブル高が輸出・雇用に悪影響を及ぼしている。
- 消費者心理の冷え込み:消費者は支出を控え、インフレ率も高止まりしている。
- 財政の逼迫:巨額の軍事支出が経済を下支えしてきたが、財政余力は徐々に低下し、当局者もリセッション(景気後退)のリスクを公然と警告している。
- 実質GDP成長率の鈍化:2025年1~3月期の実質GDP成長率は前年同期比1.4%増にとどまり、2023年以降で最も低い伸びとなった。前期比ではマイナス成長に転じている。
- 今後の見通し:IMFは2025年の成長率を1.4~1.5%と予想し、2024年の3.8~4.0%から大きく減速する見通しを示している。ロシア中央銀行も「成長のペースは控えめ」と表明している。
背景要因としては、戦時経済による一時的な成長の反動、労働力不足、エネルギー収入の減少、制裁強化や原油価格の下落リスクなどが挙げられる。
総じて、ロシア経済は短期的な成長を維持してきたものの、2025年に入り減速傾向が鮮明となり、戦時経済の持続可能性や構造的な脆弱性が浮き彫りになっている。
現時点でロシアの戦費総額がGDPの3〜4倍に到達したかは不明
しかしGDP比6%超という国防費は冷戦後で最も高い水準であり、経済の持続性が問われる
戦費総額は国民総生産の3〜4倍が限界
「戦費総額は国民総生産(GDPやGNP)の3〜4倍が限界」とされる根拠は、歴史的な戦争の財政負担から導き出された経験則に基づいています。
- イギリスの第一次世界大戦の戦費総額は、当時のGDPの約3.8倍でした。
- アメリカの第二次世界大戦の戦費総額は、開戦当時のGDPの3.2倍に達しました。
- 日本の太平洋戦争では、戦費がGDPの8倍を超えたため、経済的に持続不可能となり、戦後は急激なインフレと経済崩壊を招きました。
このような歴史的事例から、「GDPの3〜4倍程度までが、国家が無理なく全面戦争を遂行できる限界」とされるのです。これを超えると、財政や経済が耐えきれず、深刻なインフレや国家財政の破綻、社会の混乱を招くことが示されています。
したがって、「戦費総額は国民総生産の3〜4倍が限界」という見解は、歴史的な経験則や経済の持続可能性に基づく現実的な上限と考えられています。
ロシアのウクライナ侵攻はどうか?
ロシアのウクライナ侵攻における戦費と経済負担は、歴史的な「戦費総額は国民総生産(GDP)の3〜4倍が限界」という経験則と比較しても、すでに極めて高い水準に達しています。
- ロシアの2025年度国防費は13.5兆ルーブル(約20兆円)で、GDP比6.3%、歳出全体の32.5%を占めています。
- 国防費は4年で2.5倍に増加し、国家安全保障関連費を含めると歳出の4割強。
- 財政赤字も急増しており、2025年1月の財政赤字は前年同月比14倍に膨らみました。
- 高インフレ、経済成長の鈍化、労働力不足、制裁の影響など、ロシア経済は大きな圧力を受けており、専門家は「国家としての能力の限界に達しつつある」と指摘しています。
現時点でロシアの戦費総額がGDPの3〜4倍に到達したという具体的な数字はありませんが、GDP比6%超という国防費は冷戦後で最も高い水準であり、経済の持続性が問われる段階に入っています。今後も戦争が長期化すれば、経済の限界に近づき、持続困難となるリスクが高まっています。
国際刑事裁判所(ICC)所長として日本人で初めて就任した赤根智子氏が、ウクライナ戦争やガザ紛争など現代の重大な戦争犯罪に向き合うICCの現場と、その存続を賭けた闘いを描いた書籍です。
本書の主な内容と特徴は以下の通りです。
- ロシアのプーチン大統領やイスラエルのネタニヤフ首相に対する逮捕状発付など、国際社会の注目を集めるICCの活動の最前線を、所長自身の経験を通して語っています。
- 著者は、ICCが大国や常任理事国からの圧力や経済制裁の脅威に直面しながらも、「法の支配」を守るために決して屈しない姿勢を強調しています。
- 第二次大戦後のニュルンベルク裁判や東京裁判をルーツとし、現代の国際平和秩序を支えるICCの意義と課題について、分かりやすく解説しています。
- **「世界で起きていることが日本で起きないとは限らない」**という危機感から、国際法と正義の重要性、そして日本とICCの関わりについても論じています。
- 目次には「プロローグ プーチン氏から指名手配を受けた日」「二つの戦争犯罪の狭間で」「国際刑事裁判所とは」「私はこんなふうに歩いてきた」「国際刑事裁判所と日本の未来」などが並び、個人の体験と制度論、未来への提言がバランスよく盛り込まれています。
赤根氏は東京大学法学部卒、国内外で検事や国際機関の要職を歴任し、2018年からICC判事、2024年3月より所長を務めています。
本書は、「力による支配」がむき出しになりつつある世界情勢の中で、「法の支配」による安全保障の必要性と、ICCの果たすべき役割、そして日本が果たすべき責任と可能性を問いかける一冊です。