モンゴル帝国の躍進は地球温暖化が原因
モンゴル帝国の躍進は、当時の気候変動、特に湿潤化(降水量の増加)と関連していると研究されています。13世紀初めから中ごろにかけて、モンゴル高原は通常乾燥している地域ですが、チンギス=ハンの権力掌握初期は干ばつ期であったものの、その後過去1000年間で最も湿潤な時期を迎え、降水量の増加により草原が豊かになりました。これが馬や家畜の増加を可能にし、騎馬軍団の力を強化し、結果としてモンゴル帝国の急速な拡大を支えたとされています。この湿潤化は気候変動によるもので、一定の地球温暖化(地域の気候変動)と関係があった可能性が高いです。
つまり、モンゴル帝国の躍進は単に軍事的・政治的要因だけでなく、気候による環境条件の改善、特に湿潤化が重要な背景にあったといえます。
また、この時代の気候変動がなければ、モンゴル帝国の拡大や元寇のような歴史的事件も起きなかった可能性が指摘されています。
以上の研究はいくつかの気候年代学的証拠(シベリアマツの年輪調査など)に基づき、気候変動と歴史的な人間社会の動態の関連性を示すものとして注目されています。ただし、「地球温暖化」という用語は現代の人為的な気候変動を通常指すため、13世紀に起きた自然の気候変動と現代の地球温暖化は区別して考える必要があります。
まとめると、モンゴル帝国の躍進には地球規模の温暖化というよりは、当時の地域的な気候の湿潤化が大きく影響していたというのが現在の研究の支持するところです。
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モンゴル帝国の衰退は寒冷化が原因
モンゴルの歴史的な衰退に関して、「寒冷化が原因」とする説明は複数あります。14世紀になると、地球規模での寒冷化が影響し、異常気象や飢饉が多発し、農業生産が低下しました。この寒冷化はモンゴル帝国(元)の衰退の一因とされています。この時期の飢饉や黄河の氾濫、そしてペストの流行による人口減少などが社会不安を引き起こし、元の権力基盤を弱めました。
一方で、近現代のモンゴルの環境変化を見ると、寒冷化ではなく逆に地球温暖化の影響が指摘されています。モンゴル北部の永久凍土が融解し、水資源の減少や草原の砂漠化が進行し、牧畜経済に深刻な影響を与えています。この温暖化による環境劣化が、草原生態系の脆弱化や過放牧問題と相まって、経済的・社会的な問題を生んでいる状況です。
つまり、歴史的な元の衰退の主要因としては「14世紀の寒冷化による異常気象と飢饉」が挙げられ、近年のモンゴルの環境的課題では「地球温暖化による永久凍土の融解と乾燥化」が中心となっています。両者は時代も現象も異なるため、混同しないことが重要です。
13世紀頃の地球の温暖化は太陽活動の変動が一因
13世紀頃の地球の温暖化は「中世の温暖期」として知られ、約900年から1200年にかけてヨーロッパを中心に温暖な気候が続きました。この時期の平均気温は20世紀の平均より0.7度から1度高く、農業が発展し人口増加や遠方への探検も進みました。温暖化の背景には自然の気候変動が主で、太陽活動の変動が一因とされています。
その後、火山噴火や大気と海洋の気圧変動の影響で寒冷化
しかし、13世紀後半からは火山噴火(1257年のリンジャニ山噴火など)や大気と海洋の気圧変動の影響で寒冷化が始まり、小氷期へと移行しました。つまり、13世紀の温暖期は自然の気候循環と火山活動などが関与した複合的な現象であり、人為的な温暖化ではありませんでした。
石炭の使用増加などの大気汚染はまだ限定的で温暖化の要因ではない
13世紀の地球温暖化は中世の温暖期による自然気候変動が主な理由であり、太陽活動の強化や火山活動の影響などが複雑に絡み合った結果と考えられています。なお、この時期に石炭の使用増加などの大気汚染はまだ限定的で温暖化の要因ではありませんでした.
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