中国は目先の報復よりもレアアースによる長期的な資源支配の維持を選んでいる

サバイバル

2025年11月23日 高市発言に激怒した中国が「レアアース禁輸」の切り札を使えない背景

  • 高市早苗首相が台湾有事を日本の安全保障と明確に結びつけた発言に対し、中国は「報復措置」として観光客への日本渡航自粛や水産物の輸入停止などを実施している。しかし、最も強力な経済的制裁手段である「レアアース禁輸」は使われていない。

その理由は大きく3つある。

  1. 2010年の失敗の教訓
    当時のレアアース禁輸で日本は代替供給源の開発を急進化させた結果、中国の独占的地位が崩れ始めた。今回同じ手を使えば、さらなる脱中国化を促すだけになる。
  2. 米中関係への影響
    現在、トランプ米大統領は中国との通商合意を維持しようとしており、中国がレアアース禁輸を発動すれば米国の監視を強め、同盟国日本への全面支援に回る恐れがある。
  3. 国際的信用と経済戦略
    今や中国はレアアースの採掘・加工を通じて世界経済に影響を与える「供給者」としての立場を維持したい。制裁に使えば「資源を政治利用する国」と見なされ、他国が代替ルートを強化し、中国の戦略的価値が自ら低下する。

アジア・ソサエティ政策研究所のウェンディ・カトラー氏が指摘するように、「レアアースを武器にすれば、中国は貿易相手を敵に回すリスクを負う」。つまり、目先の報復よりも長期的な資源支配の維持を選んでいるということだ。

今の中国は「力を示すために制裁を使う」のではなく、「支配構造を維持するために制裁を控える」段階に来ている。ただし、これは一時的な自制にすぎず、米中関係の再緊張や台湾情勢の悪化次第では、再び資源を外交カードとして切る可能性はある。

 

 

2025年10月26日 EU、中国産レアアース依存縮小へ 豪加など調達先拡大

欧州連合(EU)は、中国によるレアアース(希土類)の輸出規制拡大を受け、中国産への依存を縮小する計画を進めています。欧州委員会のフォンデアライエン委員長が明らかにしたところによると、EUはオーストラリア、カナダ、チリ、グリーンランド、カザフスタン、ウズベキスタン、ウクライナなどと連携し、レアアースの調達先を多様化する方針です。

この計画「RESourceEU」には、重要原材料の再利用促進、共同購入や備蓄の強化、さらには生産・加工段階への投資も含まれています。とくに短期から長期にかけて安定的に重要原材料の供給源を確保することを目的としています。

中国依存度が高いレアアース磁石(90%超)へのリスクを踏まえ、EUはまず中国側と交渉を進めつつ、必要ならあらゆる手段で対応するとしています。これは、米中間の貿易摩擦の一環で、中国が輸出管理を強化したことに対応するものです。

加えて、欧米や日本も脱中国依存に動いており、日本との官民連携による共同調達の検討も報じられています。中国以外の供給国での鉱床開発や、代替技術の導入も進められている状況です。

まとめると、EUは中国産レアアースへの過度な依存を避けるため、豪州やカナダなど複数国との調達連携拡大、資源の再利用強化、備蓄・生産投資の拡充を進めており、経済安全保障上のリスク軽減を狙っています。

 

 

「RESourceEU」複数国との連携

EUは中国産レアアースへの依存を縮小する新たな戦略、「RESourceEU」を策定中です。この計画は、オーストラリア、カナダ、チリ、グリーンランド、カザフスタン、ウズベキスタン、ウクライナなど複数国との連携を加速し、代替供給源を確保することを目的としています。短期的には中国側との交渉に注力しつつ、必要とあればあらゆる手段で対応する用意があります。具体的には重要原材料の再利用促進、共同購入や備蓄の強化、生産・加工の投資拡大を含みます。

この戦略は、中国が2025年10月にレアアース輸出規制を強化したことを背景に、EUの自動車、防衛、グリーン技術、デジタル産業などの重要産業の安定供給を確保するためのものです。現在、EUのレアアース磁石使用の90%以上が中国産に依存しており、リスクが高まっています。

また、再生可能エネルギーへの移行や防衛技術の製造に不可欠なこれらの資源の多様化によって、経済安全保障の面でも強化が図られています。廃製品からのリサイクル(最大95%までの資源回収が可能なケースもある)や欧州内での生産・加工能力の増強も戦略の重要な柱です。

このように、EUは中国依存を減らすため、多国間の鉱物供給の多様化と内部資源の最大活用によって、持続可能で安全な資源確保体制を構築しようとしています。

 

 

日本のなかの中国
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日本国内に形成された在日中国人社会の実態を豊富な取材をもとに描いたルポルタージュです。

この本では、現在日本に住む中国人が80万人を超え、彼らだけの経済圏が形成されていることを明らかにしています。食材の売買やサービスも、中国人どうしでほぼ完結するコミュニティがあり、中国から持ち込まれた社会構造やSNSでの情報交換などが詳細に紹介されています。

また、多様な背景を持つ中国人の姿を通じて、彼らの生活、考え方、日本に対する印象や悩みなどを多角的に描写しています。中国語が使われる地域の団地や中華学校の様子、経営者や留学生の実情、地域によって異なる中華料理店の利用の違いなど、日本人があまり知らない在日中国人のリアルな日常も掘り下げています。

著者の中島恵はジャーナリストで北京大学や香港中文大学に留学経験があり、中国・アジア関連の記事を多く執筆してきました。本書は、日本社会のなかに存在する「小さな中国社会」の現状とその社会構造の特徴を掘り下げ、日本人が持つステレオタイプとは異なる実態を伝える内容となっています。

 

 

 

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