内部留保に課税するアメリカ
アメリカでは、内部留保に対する課税制度としてAET(Accumulated Earnings Tax)が存在します。
- AETの概要
AETは、企業が合理的な事業目的を超えて利益を過度に留保した場合に適用される連邦税で、税率は20%です。この制度は主に租税回避を防ぐための懲罰税として機能し、全企業ではなく特に同族企業や富裕層の資産管理会社を対象としています。 - 適用条件と例外
合理的な留保理由(例: 将来の事業投資や緊急時の備え)が認められれば課税を免除され、一定額までの留保枠も非課税です。株主への配当還元を促す目的で設計されており、コロナ禍のような危機で内部留保の重要性が指摘される一方、株主還元を進める効果もあります。 - 日本との違い
日本では主に特定同族会社に限定的に内部留保課税が適用されますが、アメリカのAETはより広範で、資金循環を促進する点が議論されています。
日本の経営効率が悪く、資本の運用が非効率的
- ROE(自己資本利益率)が高いほど、自己資本を効率的に活用して利益を生み出していると評価されます。逆に低い場合は、経営効率が悪く、資本の運用が非効率的であることを示します。
日本の企業全体のROEは低い水準です。
- 平均値の状況
2026年3月期の見通しでは上場企業のROEが8.5%と、2021年3月期以来5年ぶりの低水準となり、手元資金の膨張が効率悪化を招いています。欧米企業に比べて見劣りする点が指摘されます。 - 目標と比較
日本企業は8%以上を目標に掲げていますが、達成企業は限定的で、コーポレートガバナンス改革による向上余地が大きいです。
日本は内部留保が増加。社員に適正な給与が支払われていない。それが実質賃金がマイナスである理由
日本の企業では内部留保が増加傾向にあり、それが実質賃金のマイナス要因の一つと指摘されます。
- 内部留保の増加状況
大企業を中心に内部留保が膨張し、2025年現在も手元資金の活用が進まず、株主還元や賃金上昇に回っていない状況です。これによりROE低下も招いています。 - 実質賃金マイナスの主因
実質賃金は2025年5月時点で前年比-1.7%と5カ月連続減少で、物価上昇に名目賃金の伸びが追いつかないほか、労働分配率の低下や生産性低迷が影響。内部留保蓄積が賃金還元不足を助長しています。

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