ロシアの戦争継続能力を断つには
以下のポイントが重要です。
- エネルギー収入の遮断
ロシアの戦費の多くは石油・天然ガスの輸出収入に依存しています。現状の制裁は抜け道が多く、十分に機能していません。石油価格上限(1バレル60ドル)を厳格に監督し、違反には厳しい制裁を科す体制を確立すること、さらに欧州などによるロシア産天然ガスの輸入量を大幅に減らすことが不可欠です。 - 軍需物資の供給網遮断
ロシアは中国、イラン、北朝鮮などから軍需物資や武器の供給を受けています。これら第三国への圧力や制裁を強化し、兵器や重要部品(半導体、機械工具など)の流入を断つことが必要です。 - ウクライナへの軍事支援強化
ロシア軍の消耗を促すには、ウクライナへの兵器・弾薬・防空システムなどの大規模かつ継続的な支援が不可欠です。ウクライナ軍が戦場で優位に立つことで、ロシアの戦争継続意思と能力に打撃を与えられます。 - 制裁の抜け道封じと金融制裁の強化
現行の金融制裁はロシア経済に大打撃を与えていません。金融取引や資産凍結、国際決済ネットワークからの締め出しなどをさらに徹底し、制裁逃れを困難にする必要があります。 - 国内世論や動員への圧力
戦争長期化でロシア国内の不満や動員疲れが高まれば、継戦能力は低下します。情報戦や外交圧力も有効です。
現状、ロシアは旧式兵器の再利用や国外調達、工業力増強で損失を補い、2~3年は戦争を続ける能力があるとされています。したがって、上記の対策を複合的かつ継続的に実施することが、ロシアの戦争継続能力を断つ現実的な道です。
- ロジスティクスの重要性と、歴史的に繰り返し軽視されてきた理由を解き明かす一冊です。
本書の主なポイントは以下の通りです。
- **戦争の本質の一つは「兵站をめぐる攻防」**であり、攻撃側は敵の兵站拠点や連絡線(シーレーン、鉄道、道路、橋梁など)の切断を追求し、防御側はそれを守ろうとする。この攻防が戦いの帰趨を決めてきたと著者は指摘します。
- ナポレオン軍、ドイツ機甲師団、旧日本軍など、歴史上の強大な軍隊も兵站の失敗によって敗北した事例が多いことを解説しています。
- それにもかかわらず、「いにしえから兵站は重要視されてきたのに、実際の戦いではなぜか繰り返し軽んじられ、多くの兵士が命を落としている」という不可思議な現象に迫ります。
- 兵站の本質や重要性を、小学生の遠足や旧約聖書『出エジプト記』など身近な例でわかりやすく説明し、さらに「兵站を心臓・血管・血液・細胞などの譬えで説明」「内線作戦と外線作戦」「マハンのシーパワー理論」「ボールディングの戦力逓減理論」「作戦正面の長さ・面積と兵站」「地政学と兵站」など、6つのキーポイントから多角的に分析しています。
- 著者は元陸将であり、北アフリカ戦線、バルバロッサ作戦、インパール作戦、朝鮮戦争など、実際の戦役を例に兵站の実態と失敗の教訓を解説しています。
この本は、なぜ兵站が「重要なのに軽んじられる宿命」を背負ってきたのか、戦史と理論の両面から考察した内容です。戦争や軍事に関心のある読者だけでなく、組織運営やマネジメントにおける「見えにくい基盤」の重要性を考える上でも示唆に富んだ一冊です。