米中は「規制vs迂回」のイタチごっこ状態。中国の輸入拒否は戦略的ブラフとして機能し、自立投資を加速

2025年12月14日 米、批判強まる半導体規制緩和 「AI覇権」争い、中国利する恐れ テック右派が影響拡大か

トランプ米大統領がエヌビディア製のAI半導体「H200」の対中輸出を許可したことで、米国内で強い批判が起きている。背景には、先端技術が中国に流出し、軍事・AI分野での中国優位を助長しかねないとの懸念がある。

エヌビディアCEOのジェンスン・フアン氏はホワイトハウスでトランプ氏と面会後に輸出許可が発表されたとされ、同氏によるロビー活動の成果と報じられている。これにより、前政権の「スモールヤード・ハイフェンス(小さな庭に高い柵)」政策、すなわち技術囲い込みによる安全保障戦略が実質的に崩れたとみられている。

政策転換の背景には、技術・暗号資産業界で影響力を持つ右派投資家デービッド・サックス氏ら「テックライト」勢力の台頭がある。彼らは規制緩和を主張し、特に中国市場で旧世代半導体を販売して利益を得るべきだと考えている。サックス氏はマスク氏とも親しく、トランプ政権内で助言的立場にある。

一方、議会や安全保障関係者からは警戒が強まっており、中国にAI関連技術が流出すれば米国の軍事的抑止力を損なうとの指摘が相次ぐ。特にウォーレン上院議員やランドール・シュライバー元国防次官補らは、今回の決定を「短期的収益を狙った危険な取引」と批判し、対中半導体輸出を制限する法案を検討する動きも出ている。

この報道からは、トランプ政権の「経済重視の現実主義」と、議会・安全保障筋の「技術保全主義」との対立が再び表面化していることが読み取れます。

米AI・半導体政策は今後、サックス氏らテック右派の影響で市場重視へ傾斜する一方、議会は対中抑止の強化に動く可能性が高いと見られます。

 

 

このニュース、追加で中国は輸入を拒否したそうです。自力で開発しないと、米に生命線を握られると判断した様です。逆に言えば、米の戦略は見破られた、と言う事でしょうか。前世代と言っても相当に使い道はあるのでしょうから中国も大変でしょうが、敵ながらあっぱれです。中国は旧式を多数使って、最新式を再現する国なので侮れません。尚うがった見方ですが、台湾を手に入れるから、米からは要らない、と考えたかも知れません。こちらは結構、怖いです。

中国が技術主権を確立するための政治的・戦略的決断

非常に鋭い視点です。中国の輸入拒否という動きは、単に経済的判断ではなく、技術主権(Technological Sovereignty)を確立するための政治的・戦略的決断と見るべきでしょう。

米国側は、本来「前世代の半導体は安全」として輸出を認め、中国市場を一定程度“管理された形”で取り込もうとした可能性が高いですが、中国側にとっては「前世代」でもAI学習・軍用解析・生成AIの推論用途など、十分な応用力を持つことを理解しています。したがって、米国の意図を「技術依存の維持策」と見抜き、あえて断ったのは理にかなっています。

加えて、中国の戦略は「多量の旧式チップを並列運用して高性能を再現する」方向に進化しています。これには自前のAIフレームワーク開発(例:昇思MindSporeや飛漿FlyPaddle)も寄与しており、チップ単体よりも“システム全体最適”を狙うアプローチが目立ちます。つまり、米国の“制限による優位維持”という戦略モデルが、ある意味で分解されつつあるとも言えます。

台湾をめぐる推測も現実味があります。もし中国が中長期的に台湾の半導体資産を取り込む意図を持つなら、現段階での「対米依存」はリスクに過ぎません。したがって、中国の輸入拒否は政治的メッセージとして、「いずれ米に頼らず自ら供給網を握る」という宣言でもあります。

この動きは、トランプ政権の戦略が「商業的近視眼」に傾いた結果、中国の自立化を逆に促す皮肉な展開とも言えるでしょう。

 

 

とは言え、中国は今でも第三国を経由してGPUを輸入している

はい、その通りです。表向き輸入を止めても、第三国経由でのGPU調達ルートは依然として活発です。これは中国の技術アクセス戦略の「現実的裏ルート」であり、米国も完全には遮断できていません。

現在確認されている主な経由地は以下の通りです:

  • シンガポール・マレーシア:サーバー構築やクラウド関連企業を装い、エヌビディア製GPU(A100など)を合法的に輸入して再輸出。
  • アラブ首長国連邦(UAE):AIスタートアップや暗号資産関連企業を隠れ蓑とした再販経路。
  • 香港:名義上は独立地域だが、中国本土向けの再販売拠点として機能。
  • カザフスタン・ウズベキスタン:データセンター名目の輸入が確認されており、一部が中国西部へ流入している模様。

米国商務省はこうした「第三国経由輸出」を逐次制裁リストで封じ込めていますが、民間取引や中古流通の経路まではほぼ監視不能です。しかも、中国企業はロシア向け制裁回避で蓄積したネットワークを転用しており、対策が後手に回っています。

要するに、中国は「表では自力開発を宣言しつつ、裏ではGPU確保を継続」しており、両輪で時間を稼いで技術自主権を高めています。米側もその二重戦略を知りつつ、政治的には強硬姿勢を維持するという“持久戦”の構図です。

 

 

時系列分析図:AI半導体(主にNVIDIA GPU)米中攻防の流れ

2022年10月

  • 米:バイデン政権、対中先端AI半導体輸出規制開始(A100/H100禁輸)
  • 中国:第三国経由(シンガポール/香港)で密輸開始、国産化加速(華為/昇騰)
  • 影響:中国AI開発一時停滞も、旧世代GPU大量輸入でカバー

2023年

  • 米:H100完全禁輸、H20(性能制限版)中国向け開発指示
  • 中国:H20輸入開始も、国産チップ(華為Ascend910B)並行推進
  • 裏ルート:マレーシア/UAE経由でA100中古流通拡大

2024年(トランプ第1期後半~第2期移行)

  • 米:トランプ再選後、H20規制強化(4月)→緩和(7月)
  • 中国:H20依存増も、自前AIフレームワーク(MindSpore)最適化
  • 影響:テック右派(サックス氏)影響で「前世代輸出容認」戦略浮上

2025年4月

  • 米:NSC技術担当フェイス氏解任、サックス氏主導で規制見直し開始
  • 中国:台湾TSMC依存警戒、国内ファウンドリ(SMIC)5nm量産試行

2025年11-12月(最新局面)

  • 米:トランプ、H200対中輸出許可発表(12/8、収入25%政府取り分条件)
  • エヌビディアCEOフアン氏ロビー成功、議会/安全保障派批判高まる
  • 中国:H200輸入表向き拒否(国産優先宣言)、第三国経由継続
  • 理由:米依存脱却+台湾奪取想定で「自立供給網」構築優先
  • 裏ルート:中央アジア(カザフ)/中東経由でH100/H200流入確認
  • 影響:米戦略「依存維持」失敗、中国の「量産旧式+システム最適化」でAI軍事応用加速、米議会で対中制限法案提出へ

全体構造のポイント

  • 米:規制(禁輸)→緩和(前世代輸出)→依存誘導の「三段構え」
  • 中:表拒否+裏輸入+国産化の「二重戦略」
  • 結果:短期米収益増も、中長期で中国自立化促進のリスク露呈

この図から、米中は「規制vs迂回」のイタチごっこ状態ですが、中国の輸入拒否は戦略的ブラフとして機能し、自立投資を加速させています。一方、第三国ルートが残る限り、完全分断は難しく、台湾有事の地政学要因が最大変数です。