2024年12月17日 日本経済新聞さん、なぜ環境金融の皇帝の変節を報道しないのですか?
- この記事は、アゴラに掲載された杉山大志氏による論考で、主題は「日本経済新聞(日経)がなぜ環境金融の旗手だったマーク・カーニー氏の政策転換(=化石燃料推進への転換)を報じないのか」という批判です。内容の要点は以下の通りです。
マーク・カーニー氏の立場の変化
- 元イングランド銀行総裁であり、国連気候変動特使、そして「GFANZ(ネットゼロ金融連合)」の創設者として環境金融を推進してきたカーニー氏が、首相就任後にエネルギー政策を大きく転換。
- 炭素税の廃止、石油・ガスの大増産、公約としてLNG(液化天然ガス)の輸出拡大を掲げたほか、EV支援政策の打ち切りにも踏み切った。
反発と辞任の波
- 元環境大臣スティーブン・ギルボー氏などが抗議辞任したほか、政府の脱炭素諮問機構メンバーも複数辞任。FT(フィナンシャル・タイムズ)紙はこの出来事を詳細に報道し、「環境運動家やビジネス界を困惑させている」と指摘した。
日経新聞への批判
- 日経新聞はFTを2015年に買収しており、これまでFT発の記事を多数日本語で紹介してきたが、この件については報道していない。
- 杉山氏は「社の環境金融推進スタンスと整合しないから報じないのではないか」と疑問を投げかけ、「読者には現実を知る権利がある」と主張。
背景と論点
- カーニー氏の影響力
同氏はESG投資や気候金融の国際的ルール作りを主導した人物。彼の「化石燃料推進」転換は、環境金融ムーブメントの正当性そのものに疑問符を付ける動きとして受け止められている。 - メディアの報道姿勢
FTは批判的に報じたが、親会社である日経は沈黙。この“報道しない自由”が、国内の情報の非対称性を生んでいる、というのが杉山氏の指摘。
記事全体を通して、杉山氏は「脱炭素政策への過度な傾斜」や「環境金融への信仰的な姿勢」に対する冷静な再検証を促している。
簡潔に言えば、
- 日経は、自社グループのFTが報じた“環境金融の象徴的人物の変節”を伝えていない。この沈黙が、日経自身の編集スタンス(環境金融推進)との整合を意識した結果ではないか。というメディア批判と政策論が並行した内容になっています。
2025年11月15日 環境金融の大司教、マーク・カーニーが改宗して化石燃料を推進する
- この記事は、アゴラ言論プラットフォームの藤枝一也氏による論考で、内容は「元イングランド銀行総裁で現カナダ首相のマーク・カーニーが、かつての“脱炭素原理主義者”から“化石燃料推進派”へと転じた」という主張を軸にしています。以下に要点を整理します。
マーク・カーニーの政策転換
- 2025年3月にカナダ首相に就任したカーニー氏は、トルドー前政権の環境政策を大きく転換しました。
- 炭素税の廃止
- 2035年のEV義務化を延期
- 石油パイプラインなどのインフラ規制を緩和
- これにより、カナダは化石燃料依存を強め、温暖化対策目標(2005年比40%削減)も達成困難と見られています。
かつての「気候金融の旗手」からの変身
- カーニー氏は、イングランド銀行総裁や国連気候変動特使時代に「脱炭素金融」を主導してきた人物です。
- 「GFANZ(グラスゴー金融同盟)」を主導し、金融界に「ネットゼロ」投資を促進。
- 「TS-VCM」「IC-VCM」を通じてボランタリー炭素クレジット市場の透明化を推進。
- しかし、近年は米国下院司法委員会がGFANZなどを「気候カルテル」と認定、独禁法調査に発展しました。結果として多くの金融機関が脱炭素連合から離脱しています。
筆者の見解
- 藤枝氏は、カーニー氏の政策転換を「脱炭素原理主義から現実主義への改宗」と位置づけています。
- これは前回のビル・ゲイツの“気候危機過激路線”からの転換と同じ流れにあるとし、「気候危機論が行きすぎた観念論に過ぎず、今こそ現実的なエネルギー政策に戻るべき」と強調。
- 特に日本の政府・企業も、炭素税やネットゼロ目標への過剰なこだわりを見直す時期に来ていると提言しています。
背景と文脈
- カーニー氏はカナダ・イングランド両国の中央銀行総裁を歴任した史上稀な経歴を持つ。
- 「ESG金融」「グリーン投資」「カーボンクレジット市場」の設計者的存在だった。
- しかし、気候関連の金融アライアンスが政治的圧力や法的リスクに直面し、急速に瓦解。
- その結果、彼自身が「産業と雇用を守る現実路線」に転じたとみられる。
藤枝氏の主張の骨子
- 「観念的な脱炭素」よりも「現実的なエネルギー安保と経済合理性」へ。
- 日本政府や企業も、外圧からのネットゼロ路線を見直すべき。
- 化石燃料も含めた柔軟なエネルギーミックスが必要。
要するに、藤枝氏はビル・ゲイツ、マーク・カーニーという“グリーン政策の象徴”二人の路線転換を「世界の政策潮流の転換点」と捉え、日本にも「過度な脱炭素からの現実回帰」を促しています。
2025年11月13日 ビル・ゲイツが気候危機説の否定に君子豹変して界隈はてんやわんや
- この記事は藤枝一也氏(アゴラ言論プラットフォーム)によるもので、2025年10月末にビル・ゲイツ氏が「気候変動戦略」を大きく転換したことを取り上げています。ゲイツ氏はこれまでのCO₂排出削減中心の「緩和策」路線から、異常気象や災害への「適応策」重視に方針を変えたと述べています。
主な内容
- 2025年10月28日、ゲイツ氏はブラジルで開催予定のCOP30を前に、「気温の抑制よりも健康状態の改善を優先すべき」と主張。
- 自身のブログで、「気候変動は深刻だが文明を終わらせるものではない」と発言し、現実的な「気候耐性」の強化を訴えた。
- この発言が「脱炭素原理主義」的な論陣を張る学者・活動家の激しい反発を招いている。特に、ペンシルベニア大学のマイケル・マン教授(ホッケースティック曲線で知られる)やジェフリー・サックス教授(コロンビア大学)が強く批判。
- 一方で、ビョルン・ロンボルグ博士(コペンハーゲン・コンセンサス・センター)のようにゲイツ氏を評価する声もある。ロンボルグ氏は「CO₂削減は貧困層にとって最優先事項ではない」と支持を表明。
筆者の見解
- 藤枝氏はこれまで一貫して「適応策こそ第一」と唱えてきた立場から、ゲイツ氏の転換を高く評価しています。
- 日本のような先進国が過剰に排出削減へ予算を割いても、地球規模での効果はごくわずかだが、適応策なら地域内で直接的な効果が現れる。
- よって、限られたリソースは防災・減災、都市高台移転、インフラ強化など実効性のある適応策に投入すべきと主張。
- ゲイツ氏の「観念的な気候危機論からの脱却」は、企業経営者にも見習うべき現実路線だとしている。
今後の示唆
- 藤枝氏は記事末尾で、「ビル・ゲイツ以上にESG・脱炭素界隈に影響を与えてきた“大司教”的人物”も同様に変節した」と示唆し、次回の論考で取り上げると予告しています。
簡潔に言えば、この記事はビル・ゲイツが「気候危機=文明滅亡」という従来の危機論的立場を軟化させ、「気候変動の適応」を重視する方向へと舵を切ったことを評価する内容です。世界のESG・脱炭素業界にとっても大きな思想的転換点となる可能性があります。
- 気候変動や地球温暖化に関する“定説”や広く流布している主張について、最新の観測データや統計をもとに検証し、「本当か?」「科学的根拠はあるのか?」を問い直す書籍です。著者はキヤノングローバル戦略研究所の杉山大志氏。2025年04月に電気書院から刊行され、Kindle版も提供されています。
主な内容と特徴
- 気象観測データや環境統計、数値シミュレーション、エネルギー政策など多角的な視点から、以下のような話題を取り上げています。
- 台風や大雨の激甚化は本当に起きているのか
- 地球温暖化の進行速度はどの程度か
- 猛暑や異常気象の主因は何か
- CO₂の増加は本当に悪いことなのか
- シミュレーション予測の信頼性
- エネルギー政策と経済への影響
- 例えば「日本の平均気温の上昇は過去30年でわずか0.3℃」「猛暑や豪雨の主因は自然変動が大きい」など、一般的な報道や政府見解とは異なる視点をデータで示しています。
- 「気候危機説は誇張されている」「不吉なシミュレーション予測は信頼に足らない」「経済を犠牲にするのは誤り」といった結論を導き、現実的な政策判断の必要性を訴えています。
目次(抜粋)
第I部 気象観測データ
- 台風は激甚化していない
- スーパー台風は来なくなった
- 地球温暖化は30年間でわずか0.3℃
- 猛暑の主因は自然変動
- 東京は都市熱ですでに3℃上昇
- 大雨は激甚化していない
- IPCCは異常気象について本当は何を言っているのか
- CO₂はすでに5割増えた(だが、これは悪いことではない)
第II部 環境観測データと社会統計データ
- 暑さによる死亡は減り続けている
- 自然災害による損害額は増加したのか
- 気候変動によって災害が50年で5倍になったというのは本当か
- 気候変動で熱波が30倍も起こりやすくなったというのは本当か
第III部 数値モデルによるシミュレーション
- 気温予測は計算する人によって大きく異なる
- 被害予測の前提とするCO₂排出量が多すぎる
- シミュレーションは過去の再現すらできない
第IV部 エネルギー政策
- 世界では化石燃料消費もCO₂排出も増え続けている
- 太陽光発電や風力発電は高価である
- EVは環境に優しいのか
- 日本がCO₂をゼロにしても気温は0.006℃しか下がらない
結論――日本はどうすればよいのか
評価・特徴
- 「印象操作に惑わされないための必読書」として、データ重視の冷静な議論を展開しています。
- 気候変動問題に対する懐疑的な視点や、現状の政策やメディア報道への批判的分析が特徴です。
こんな人におすすめ
- 気候変動や地球温暖化について、データに基づいた多角的な視点を知りたい方
- 現在の気候政策やメディア報道に疑問を感じている方
- 科学的根拠に基づく議論を重視する方
注意点
- 著者の主張は主流の気候科学コミュニティの見解と異なる点が多いため、他の専門家の意見や国際的な科学的合意とあわせて読むことが推奨されます。

