「貿易を武器にする」中国の姿勢は変わらない。中国が不当な圧力をかけてきた際に、それを受け流せるだけの「代替手段」と「レジリエンス(復元力)」が必要

2026年01月10日 中国、レアアース新規契約停止 国有企業、既存取引破棄も検討

中国がレアアースの対日輸出規制を強化し、国有企業が日本企業との新規契約を停止したというニュースについて、専門的な視点から分析と解説を行います。

輸出規制の背景と政治的要因

今回の措置は、2026年1月6日に中国商務省が発表した「軍民両用品目の対日輸出規制強化」に基づいた動きです。

背景には、高市早苗首相の国会答弁(台湾有事は日本の存立危機事態になり得るという趣旨)に対する中国側の強い反発があると考えられます。中国側はこれを「軍事力向上につながる動き」と見なし、経済的な威圧(エコノミック・コアシオン)を通じて日本の外交姿勢に揺さぶりをかける狙いがあります。

過去、2010年の尖閣諸島沖での漁船衝突事件の際にもレアアースの輸出が事実上停滞したことがありましたが、今回は「軍民両用(デュアルユース)」という法的な枠組みを明確に適用している点が特徴です。

レアアースと半導体への影響

レアアース(希土類)は、電気自動車(EV)のモーター、風力発電機、さらにはミサイルの精密誘導装置などの軍事技術に不可欠な戦略物資です。

特に、中国が世界シェアの大部分を握る「中重希土類」の供給が止まれば、日本のハイテク産業や防衛産業に深刻な打撃を与える可能性があります。

また、ニュースで言及されている半導体関連のレアメタル(ガリウムやゲルマニウムなど)についても、新規契約が停止されれば、日本の半導体製造サプライチェーンの川上で混乱が生じることは避けられません。

既存契約破棄の検討という異例の事態

今回の報道で特に注目すべきは、国有企業が「既存契約の破棄」まで検討しているという点です。

通常、国際貿易において締結済みの契約を一方的に破棄することは極めて異例であり、国際的な信用を失う行為です。しかし、中国政府が「国家安全保障」を理由に掲げている以上、国有企業は政府の意向に従わざるを得ない状況にあります。

もし既存の取引が実際に停止されれば、日本企業は在庫の取り崩しや、代替調達先(オーストラリア、ベトナム、米国など)への切り替えを急ぐ必要があります。

今後の見通しとリスク

日本政府は現在、中国側に対して規制の撤回を求めていますが、事態の好転には時間がかかる見込みです。

サプライチェーンの脱中国加速:この事態を受けて、日本企業はレアアースの調達先多角化や、レアアースを使わない「脱レアアース技術」の開発・実用化をさらに加速させることになります。

経済安保の強化:政府による重要物資の備蓄積み増しや、同志国(G7など)との連携による共同調達網の構築が急務となります。

二国間関係の冷え込み:経済的威圧が続く限り、日中間のビジネス環境は極めて不透明な状況が続き、新規投資の抑制や、中国からの撤退を検討する企業が増える可能性があります。

今回のレアアース問題について、さらに具体的な特定品目の影響や、日本政府の具体的な対応策について詳しくお調べしましょうか。

 

 

中国が日本への供給を止めれば、逆に日本から中国への供給が止まることで中国側が困る

逆にそうすることで中国への供給が止まって困る物がありそう

ご指摘の通り、貿易は相互依存の関係にあるため、中国が日本への供給を止めれば、逆に日本から中国への供給が止まることで中国側が困る品目も数多く存在します。

特にハイテク分野や精密製造において、中国は依然として日本の技術や素材に深く依存しています。専門的な視点から、中国側にとってのリスクとなる主な品目を解説します。

半導体製造装置と関連材料

中国が最も「急所」とされるのが半導体分野です。中国は半導体の内製化を急いでいますが、最先端の製造プロセスには日本の装置や材料が不可欠です。

  1. 半導体製造装置:
    露光装置(ニコン、キヤノン)や洗浄装置(SCREEN)、成膜装置(東京エレクトロン)など、日本企業が高いシェアを持つ装置が止まれば、中国国内の半導体工場(ファブ)の維持や新設が困難になります。
  2. 高純度化学材料:
    半導体製造に必須の「フォトレジスト(感光材)」や「高純度フッ化水素」などは、日本企業が世界シェアの多くを占めています。これらは代替が非常に難しく、供給が止まれば中国の半導体生産ラインがストップするリスクがあります。
  3. ジクロロシラン:
    直近の2026年1月には、中国当局が日本製のジクロロシラン(半導体材料)に対してアンチダンピング調査を開始しましたが、これは逆に言えば、中国市場の約72%を日本製品が占めており、中国がいかにこの材料に依存しているかの裏返しでもあります。

自動車・製造用基幹部品

中国は世界最大の自動車市場ですが、高品質な車を作るための「核心部」では日本に頼っています。

  1. 高性能エンジン・トランスミッション部品:
    中国ブランドの車であっても、重要なベアリングや油圧制御部品、センサー類に日本製品が使われているケースが多く、これらが欠けると製品の信頼性が維持できなくなります。
  2. 工作機械と産業用ロボット:
    中国の「世界の工場」としての機能を支えているのは、ファナックや安川電機などの産業用ロボットや、精密工作機械です。これらの保守部品やソフトウェアのアップデートが止まれば、中国国内の工場の自動化ラインが機能不全に陥ります。

電子部品と高機能素材

  1. 積層セラミックコンデンサー(MLCC):
    スマートフォンや電気自動車(EV)に大量に使用されるMLCCは、村田製作所などの日本企業が圧倒的な技術力を持っています。中国製の代替品では品質や小型化の面で追いつけない領域があります。
  2. 高機能フィルム:
    ディスプレイパネルに使用される光学フィルムや、リチウムイオン電池のセパレーター(絶縁材)など、化学・素材分野でも日本製品への依存度は高いままです。

経済的威圧の「諸刃の剣」

中国がレアアースを「武器」として使う場合、日本側も経済安保上の対抗措置(リベンジ)として、上記のようなハイテク品目の輸出を厳格化する法的根拠(輸出管理法など)を持っています。

もし双方が輸出を止め合う「全面的なサプライチェーンの切断」に至れば、中国経済もまた、自国の製造業の高度化(中国製造2025)が頓挫するという、極めて大きな代償を払うことになります。

 

 

日本政府が検討している具体的な対抗策や、他国との連携状況

中国によるレアアースの対日輸出規制強化に対し、日本政府が検討している具体的な対抗策と、諸外国との連携状況について専門的な視点から詳しく解説します。

日本政府による具体的な対抗策

日本政府は「経済安全保障推進法」に基づき、中国への過度な依存を解消するための多角的なアプローチを進めています。

1.供給源の多角化と海外権益の確保

JOGMEC(エネルギー・金属鉱物資源機構)を通じて、中国以外の鉱山開発への出資や債務保証を強化しています。具体的には、オーストラリアのライナス社への支援を継続しているほか、ベトナムやカナダ、アフリカ諸国(ナミビアなど)での新規採掘プロジェクトへの関与を強めています。

2.国内備蓄の積み増しと管理強化

レアアースの国家備蓄を現在の「国内消費量の60日分」からさらに積み増す検討に入っています。また、民間企業に対しても、重要物資の在庫確保を促すための補助金制度を拡充し、供給遮断時の中期的な耐性を高めています。

3.リサイクル技術と代替技術の実装

「都市鉱山」からの回収を強化するため、エアコンや電気自動車(EV)の廃モーターからネオジムなどを高効率で抽出する技術の実装支援を加速させています。同時に、レアアースを全く使用しない「SRモーター」などの代替技術を持つ企業に対し、量産化に向けた大規模な支援を行っています。

4.国産レアアースの開発(南鳥島沖)

日本の排他的経済水域(EEZ)内である南鳥島沖の海底に眠る「レアアース泥」の商業採掘に向けた実証試験を急いでいます。2020年代後半の商業化を目指し、深海からの揚泥技術の確立に予算を重点配分しています。

アメリカ・オーストラリア等との連携状況

中国の「資源の武器化」に対抗するため、日本は同志国との連携をかつてないほど強化しています。

1.日米豪印(クアッド:Quad)での連携

クアッドの枠組みでは「重要・新興技術作業部会」を設置し、中国に依存しないサプライチェーンの構築に合意しています。特にオーストラリアで採掘し、米国や日本で分離・精錬を行うといった、中国を経由しない完結型の供給網を構築するための共同投資が進んでいます。

2.米国との輸出管理協力

米国は「国防生産法(DPA)」を発動し、国内のレアアース生産・精錬能力の再構築を急いでいます。日本は米国に対し、高性能磁石などの加工技術を提供し、米国は日本に対し、精錬済み原材料の安定供給を約束するといった、相互補完的な協力関係を構築しています。

3.IPEF(インド太平洋経済枠組み)の活用

米国主導のIPEFを通じ、サプライチェーンの透明性を高め、危機が発生した際の「早期警戒メカニズム」を共有しています。これにより、中国が輸出規制を行った際に、参加国間で融通し合う体制の構築を目指しています。

4.「レアアース版OPEC」への対抗

主要な資源消費国であるG7諸国を中心に、中国による価格操作や供給制限に対抗するため、非中国系の生産国と消費国による強固な連合体を形成し、国際的な市場ルールを再構築する議論が進んでいます。

今後の焦点

日本政府は、今回の中国の措置が国際法(WTO協定など)に抵触する可能性を視野に、国際社会と連携して是正を求めていく構えです。また、日本からのハイテク装置や素材の輸出管理を強化する「対抗措置」もカードとして保持しており、事態の推移を見極めながら段階的に対応していくことになります。

 

 

2026年01月09日 脱中国、冷静な日本こそ進めるべきだ

提示されたコラムは、2026年1月現在の緊迫した日中関係を背景に、日本が取るべき戦略的対応について論じています。

筆者のガロウド・リーディー氏は、中国による「貿易の武器化(経済的威圧)」は一時的な現象ではなく、中国の国家戦略の本質的な特徴であると指摘しています。

そのため、日本は感情的な対抗措置を避け、これまでの「脱中国依存(デカップリング/デリスキング)」の動きを冷静かつ着実に加速させるべきだと提言しています。

日本の現状と自制の背景

高市政権下において、中国からの観光客削減やレーダー照射、輸出規制といった挑発が続いていますが、日本政府は現時点で過度な報復を控えています。

これは、かつてのレアアースショック(2010年)の教訓を活かし、依存度を9割から6割へ引き下げるなどの備蓄・代替調達ルートの確保が進んでいることが背景にあります。

また、感情的な対立を深めるよりも、中長期的に中国の影響力を削ぐための実務的な対策を優先していると言えます。

脱中国依存に向けた具体的な取り組み

記事では、日本が戦略的に進めている以下の対策が挙げられています。

  1. チャイナプラスワン戦略による、東南アジアへの製造拠点分散。
  2. 次世代半導体プロジェクト「ラピダス」への投資や、TSMC、サムスンの誘致による国内生産基盤の再構築。
  3. 中国が支配的な太陽光パネルやEVバッテリーへの依存を避けるため、次世代のペロブスカイト太陽電池の開発を推進。

今後、医薬品の原材料や抗生物質など、国民の生命に直結する分野での対中依存解消が急務であるとされています。

今後の展望と課題

今後の日中関係において、一時的な関係改善があったとしても「貿易を武器にする」という中国の姿勢は変わらないと見るのが妥当です。

日本政府には、企業に対して中国からの移転を促すための「アメ(補助金)」だけでなく、国家安全保障の観点から「ムチ(規制や強制)」を振るう姿勢も求められる可能性があります。

最終的な目標は対中貿易をゼロにすることではなく、中国が不当な圧力をかけてきた際に、それを受け流せるだけの「代替手段」と「レジリエンス(復元力)」を確保することにあります。

この戦略は、同様の圧力を受けている近隣諸国との連携を強めることにもつながります。