ロボタクシーは「走行距離あたりの事故率」が人間よりも低い。特殊な環境下で発生する事故やトラブルが発生

全米で広がるロボタクシー・ブーム:自動運転車両がさらに多くの都市へ進出

  • Mapping America’s Robotaxi Boom As Driverless Fleets Hit More Cities

米国における自動運転タクシー(ロボタクシー)の普及状況と、ゴールドマン・サックスによる最新の分析データです。ウェイモ(Waymo)やテスラ(Tesla)を中心に主要都市での商用展開が加速する一方、事故発生率のデータや規制・政治的な反発といった新たな課題が浮き彫りになっています。

主要ロボタクシー企業の運行規模と事故率

ゴールドマン・サックスの分析チーム(エリック・シェリダン氏主導)が、米国道路交通安全局(NHTSA)の衝突データ(2025年7月〜2026年4月中旬)および各社の開示情報を基にまとめたデータです。

テスラのテキサス州オースティンにおけるフリート(車両群)にはセーフティモニター(監視員)が同乗する車両と無人の車両が混在しています。これに対し、ウェイモは複数の都市で大規模な完全無人商用サービスを展開しています。

  • ウェイモ(Waymo)
    フリート規模:全米で3,800台以上(うちテキサス州に577台)
    事故発生頻度:15万〜17万5,000マイル(約24万〜28万キロ)に1回
  • テスラ(Tesla)
    フリート規模:テキサス州で約42台
    事故発生頻度:10万〜12万マイル(約16万〜19万キロ)に1回

アプリの利用動向に目を向けると、SensorTowerのデータではウェイモの利用者は拡大傾向にあるものの、4月の月間アクティブユーザー数(MAU)の伸びは前年同月比20%増に留まり、これまでの急成長ペースと比較すると減速の兆しが見られます。

直面する規制の壁と社会的反発

走行マイルあたりの事故率自体は一般的な人間のドライバーよりも低い水準を維持しているものの、現実の特殊な環境下で発生する事故やトラブルが目立つため、これが政治的・規制的な逆風となっています。

  • 規制当局の動向
    連邦安全当局はウェイモのトラブルについて現在調査を進めています。ニューヨーク市は本年の商用ロボタクシーの運行許可を見送り、ボストン、シアトル、サンフランシスコなどの主要都市圏でも、今後の運行を制限する規制が検討されています。
  • 社会的・政治的リスク
    展開規模の拡大に伴い、地方自治体や州、連邦政府からの規制圧力が高まっています。また、既存のタクシー運転手や人間のドライバーによる反発、さらにはNGOなどによる抗議活動の活発化が予想され、ロボタクシー企業にとって事業推進の大きなハードルになりつつあります。

 

 

アトランタの住宅街に空のウェイモが侵入、乗客を乗せずに袋小路を数時間も周回

  • Empty Waymos invade Atlanta neighborhood, circle cul-de-sac for hours with no passengers

提示されたニュースは、自動運転車「Waymo(ウェイモ)」が引き起こしたアトランタの住宅街での混乱と、米国道路交通安全局(NHTSA)によるリコールに関する報道です。

乗客のいない空のWaymoが、アトランタ北西部の袋小路(くるまよせ)に何台も侵入して周回を繰り返し、住民の生活や安全を脅かす問題が発生しました。

また、Waymoは冠水した道路を検知してもそのまま走行してしまうソフトウェアの不具合により、約3,800台の自動運転車を対象とした自主リコール届け出を行っています。

アトランタの住宅街におけるWaymoの過密問題

アトランタ北西部のバトルビュー・ドライブ周辺の住民から、乗客を乗せていない空のWaymoが、早朝の時間帯を中心に何台も袋小路に入り込んでぐるぐると回り続けているという苦情が相次ぎました。

ある住民の証言によると、朝の6時から7時の間のわずか1時間の間に、50台もの車両が通り抜けたとのことです。

住民は、子供の通学やペットの安全面から危険であると訴えており、車両の侵入を防ぐために路上に障害物を置いたところ、最大で8台のWaymoが身動きを取れなくなり、転回方法を模索して立ち往生する事態も発生しました。

住民はWaymo社や市議会議員、ジョージア州運輸省(GDOT)に連絡を取り、乗客の乗り降りが目的でない場合は、細い住宅街ではなく主要幹線道路を走行するよう求めています。

これに対しWaymo社は、コミュニティからのフィードバックを真摯に受け止め、このルーティング(経路選択)の挙動についてはすでに対処を講じたとの声明を発表しました。

冠水道路の誤検知によるリコール

NHTSAの発表によると、Waymoは自動運転ソフトウェアの欠陥を理由に、全米で3,791台のロボタクシーを対象とした自主リコールを実施しています。

この不具合は、車両が冠水した道路を検出した際、適切に回避ルートを選択せず、そのまま低速で進入してしまうというものです。

テキサス州サンアントニオでは、無人のWaymoが通行不可能な冠水道路に進入し、そのまま川に流される事案が起きていました。

Waymo社は、高速道路などにおける冠水レーンへの対応について改善点を確認したとしており、現在は無線通信(OTA)によるソフトウェアのアップデートを通じて、追加の安全対策と修正を進めています。

 

 

「特殊な環境下の事故やトラブル」が発生する事は予想通り。データの蓄積と、それを瞬時に処理できるかどうかが課題。解決できそう?

技術の進歩とデータの蓄積によって長期的には解決可能

自動運転車が「特殊な環境(エッジケース)」で起こすトラブルの解決は、短期的には困難が伴うものの、技術の進歩とデータの蓄積によって長期的には解決可能と考えられます。

ただし、そのためには単なるデータの量だけでなく、データの質や処理アーキテクチャの根本的な転換が必要です。

データ蓄積の課題と「シミュレーション」による解決

現実世界で発生する冠水路や奇妙な障害物といった、発生頻度の極めて低い「エッジケース」のデータを、実際の走行だけで網羅することは不可能です。

そのため、現在の開発現場では、現実の走行データをもとにデジタル空間上で何億通りもの危険なシミュレーション環境を作り出す方法が主流となっています。

これにより、実際に事故を起こすことなく、特殊な環境のデータを擬似的に大量蓄積し、AIに学習させることが可能になっています。

瞬時処理の課題と「エッジAI」の進化

防犯カメラのような「クラウドでの処理」では、通信の遅延(レイテンシー)が発生するため、1分1秒を争う自動車の危険回避には間に合いません。

この課題に対しては、車両自体に高性能な半導体を搭載し、車載コンピューターだけで瞬時に判断を下す「エッジAI(オンボード処理)」の技術が急速に進化しています。

通信を介さずに、車載のセンサー(LiDARやカメラ)から得た情報をその場でミリ秒単位で処理する仕組みが整いつつあります。

根本的な解決に向けた「AIモデル」の転換

これまでの自動運転は「こういう状況の時は、こう動く」というルールを人間が細かくプログラミングするアプローチ(ルールベース)が中心でした。これでは、想定外の事態に対応できません。

現在は、人間の脳に近いアプローチである「エンドツーエンド(E2E)AI」への移行が進んでいます。

これは、カメラやセンサーの情報を入力すると、AIが状況を総合的に「理解」し、直接ハンドルやブレーキの操作を出力する仕組みです。

この技術により、過去に経験のない特殊な環境に遭遇した場合でも、人間のように「周囲の状況から判断して、安全に減速・停止する」といった柔軟な対応ができるようになりつつあります。

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