ゴールドマン・サックスのボビー・モラヴィ氏は、現在のテックバブルにおける11の段階や市場の動きについての分析を展開しています。
「現在地はここだ」:ゴールドマン・サックスのパートナーが明かすテックバブルの11の段階
- ‘You Are Here’: Goldman Partner Lays Out The 11 Stages Of A Tech Bubble
モラヴィ氏は、現在のグローバルな株式市場が「恐怖(Fear)」から「強欲(Greed)」へと完全にシフトしていると指摘しています。市場は悲観論や懐疑論を無視し、現在よりも未来の楽観的な展望に資金を投じる傾向が強まっています。
具体的には、S&P 500が連日最高値を更新する中で、特にAI(人工知能)や半導体関連の銘柄に資金が極端に集中しています。これは、一部の巨大テック企業や個人投資家の資金、そしてモメンタム(勢い)に依存した上昇であり、市場の「偏り(集中度)」が非常に高まっている状態です。
11の段階(典型的なバブルのサイクル)
モラヴィ氏らが分析に用いるテックバブルの循環構造は、一般的に以下のような段階(歴史的なITバブルなどのパターン)をたどるとされています。
- 技術の画期的突破(イノベーション):
新しい技術(例:生成AIの登場)が誕生し、急速に普及し始める。 - 熱狂と資金の流入(フレンジー):
新しい産業の創出に興奮した資本が大量に流れ込み、投機的なバブルへと膨らみ始める。 - 将来性への妄信:
投資家が「新しい時代の到来」を確信し、収益性の不透明な企業にも資金が集まる。 - 評価基準の変更:
従来の利益や売上ではなく、独自のクリエイティブな指標(ITバブル時のアクセス数など)で株価が正当化され始める。 - バリュエーションの急騰:
企業の価値評価(マルチプル)が実態を離れて激しく上昇する。 - インフラの過剰構築:
大量の資金によって供給網やデータセンターなどのインフラが急ピッチで建設される。 - 投入資源の過剰消費と不足:
必要な原材料や部品(例:半導体メモリーや電力など)が深刻な供給不足に陥り、価格が急騰する。 - 経済性の破綻(ボトルネックの顕在化):
コストの激増、あるいは供給が需要に追いつかない物理的な限界に直面する。 - 前提の崩壊と転換点(ターニングポイント):
「無限に安価なリソースが手に入る」といったバブルを支えていた前提が崩れ、現実とハイプ(誇大広告)のギャップが露呈する。 - 劇的な暴落(クラッシュ):
投機的なバブルが弾け、多くの投資家が大きな損失を被る。 - 相乗効果と安定的成長(シナジー):
クラッシュ後、過剰に作られた安価なインフラを基盤にして、真に持続可能な勝者(主要企業)が残り、技術が社会に広く定着する。
1999年(ドットコムバブル)との違い
現在の市場が1999年のドットコムバブルと同じかどうかについては、議論が分かれています。
現在のAIブームは、当時のような純粋な期待感だけで株価が上がるバブルとは異なり、大手テック企業による「実際の売上」と「巨額の利益(設備投資)」に裏付けられた、いわば「利益主導型のバブル」であるという見方が強いためです。特にハイパースケーラー(巨大IT企業)によるデータセンターや半導体への巨額の資本支出(CaPex)は強力であり、この資金の流れに逆らって市場を売り崩すのは短期的には極めて困難であると分析されています。
今は6から7の段階。上昇の余地がある
ボビー・モラヴィ氏の分析によると、現在の市場は「6. インフラの過剰構築」から「7. 投入資源の過剰消費と不足」のあたりに位置しているとされています。
大手テック企業によるデータセンターやAI半導体への巨額の資金投入(インフラ構築)が続いており、それに伴う電力不足や部品不足が顕在化している段階です。
現在の段階の詳細
モラヴィ氏は、現在のAIブームが過去のドットコムバブルの「1999年」のような最終崩壊局面ではなく、まだ上昇の余地がある段階と見ています。具体的な理由は以下の通りです。
巨額の資本支出(インフラ構築)の継続
現在は、マイクロソフトやグーグルなどの巨大IT企業が、競ってAIインフラ(データセンターやGPU)に巨額の投資を行っている「インフラの過剰構築」の最中にあります。この資金流入が続いている間は、市場の勢いが急激に止まる可能性は低いと分析されています。
供給不足とボトルネックの発生
さらに市場は、インフラ構築に必要な「電力の確保」や「先端半導体・メモリーの供給不足」という「投入資源の不足」の段階に差し掛かっています。現在は、これらのボトルネック(障害)をどのように解決するかに市場の関心が集まっている状態です。
今後の見通し
歴史的なバブルのサイクルに当てはめると、今後はこれらのコスト激増によって「8. 経済性の破綻」や「9. 前提の崩壊(投資に見合う収益が本当に上がるのかという疑問)」へと進むリスクをはらんでいますが、現時点ではまだその転換点には達していないというのが、モラヴィ氏をはじめとするマクロトレーダーたちの見立てです。

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