米国は技術面で先行。しかしエネルギー政策とインフラ整備の遅れが足かせ
AIを巡る米中の覇権争い、中国が有利だと言えるこれだけの理由
- AI開発競争は、米中両国の国家安全保障や経済の中核をなす新たな覇権争いとなっています。ここで中国が有利とされる主な理由を整理します。
1. 電力供給体制の強さと一貫性
- AIやデータセンターは24時間365日、膨大かつ安定した電力供給を必要とします。中国は中央集権的な計画経済を活かし、長期的かつ大規模な電力インフラ整備を推進しています。
- 中国は石炭火力発電への依存を再強化しており、2024年には94ギガワット超の新設が始まりました。これは米国の既存石炭火力発電所の総発電容量の半分以上に相当します。
- 中国の石炭火力発電所は世界でも最先端で効率的なものが多く、今後数十年にわたり稼働可能とされます。また、最新設備はCO2排出量も従来型より大幅に少ない点も特徴です。
2. 米国のエネルギー政策の不安定さ
- 米国は過去10年以上で300を超える石炭火力発電所を閉鎖し、石炭の電力シェアは45%から16%に激減。今後10年でさらに93%縮小する見通しです。
- 原子力発電についても、米国では新規建設や拡大が規制や官僚主義の壁で進んでいません。1990年以降、実際に建設された新規原子炉はわずか2基にとどまります。
- 米国は再生可能エネルギー(風力・太陽光)への依存度を高めていますが、これらは発電が不安定で、データセンターのベースロード電源としては不向きと指摘されています。
3. 中国の原子力・再生可能エネルギーの拡大
- 中国は現在58基の原子炉を稼働させており、さらに30基以上(34ギガワット分)が建設中です。原子力もベースロード電源としてAI時代の需要に対応しています。
- 風力・太陽光発電設備の製造でも中国は圧倒的なシェアを持ち、世界の風力タービンの60%、太陽光パネルの75%を供給しています。
- データセンターのグリーン・低炭素化にも積極的で、2025年までに全国のデータセンター稼働率を60%以上、電力使用効率(PUE)を1.5以下、再エネ利用率の年平均伸び率を10%にするなどの目標を掲げています。
4. 資源・鉱物の独占
- 中国はAIや電力インフラに不可欠なレアメタルや主要鉱物の多くを独占的に保有し、世界市場シェアは平均70%前後に達しています。これはサプライチェーンの優位性にも直結します。
5. 政策の一貫性と実行力
- 中国は中央集権的な国家体制により、エネルギーやAI関連の長期戦略を一貫して推進できます。対して米国は政権交代ごとに政策が大きく変動し、長期計画の実行力に欠ける傾向があります。
まとめ
中国は、AI開発に不可欠な安定電力の確保、石炭・原子力・再生可能エネルギーの拡大、レアメタルの独占、そして政策の一貫性という点で、米国に対して大きな優位性を持っています。米国は技術面で先行しているものの、エネルギー政策の不安定さとインフラ整備の遅れが足かせとなっており、AIを巡る覇権争いで中国が有利とされる根拠となっています。