ジェイミー・ダイモン「EUはアメリカに負け続ける」

 

 

“When Mark Carney said, ‘The middle powers should get together’—it’s a fantasy. They did that, it’s called Europe,” says Jamie Dimon, chairman and CEO of JPMorganChase. “The GDP of Europe has gone from 90% of America to 70%. And in our view, it will probably continue to erode over time because [of] high taxes.

 

 

今後もアメリカとの経済格差は広がり続ける

ジェイミー・ダイモン氏の発言は、米国に対する欧州の経済的な地位低下(地盤沈下)を指摘したものです。

欧州連合(EU)のような中堅国の集まりでは米国に対抗することは難しく、高い税率などの構造的な問題によって、今後も米国との経済格差は広がり続けるという見解を示しています。

発言の背景と意味

マーク・カーニー氏(元イングランド銀行総裁)の「中堅国が結束すべきだ」という意見に対し、ダイモン氏はそれを「ファンタジー(現実味のない空想)」と一蹴しています。欧州という具体的な先例があるにもかかわらず、経済的な成果が伴っていないという現実があるためです。

かつて欧州全体の国内総生産(GDP)は米国の9割に達していましたが、現在は7割にまで縮小しています。ダイモン氏はこの原因として「高い税率」などを挙げており、規制の多さや投資環境の差が成長を阻害していると分析しています。

米国と欧州の経済格差の要因

米国と欧州の成長率の差には、主に以下の構造的な違いが影響していると世界的に分析されています。

  • イノベーションと投資の格差
    時価総額の大きい巨大IT企業(ビッグテック)の多くが米国から誕生しているのに対し、欧州は最先端分野での投資や成長が遅れているとされています。
  • 規制環境の違い
    欧州は個人情報保護や環境、市場競争に対する規制(ルール作り)を重視する傾向が強く、これが企業のダイナミックな成長を抑制しているという指摘があります。
  • 労働市場と税制
    ダイモン氏が指摘する通り、欧州の多くの国では手厚い社会保障を維持するために税率が高く、労働市場の流動性も米国に比べて低い傾向にあります。

 

 

市民レベルで見ると、アメリカ人はEUの暮らしやすさを羨ましがっているようだ

市民の視点から見ると、アメリカ人が欧州(EU)の生活環境を評価し、羨ましいと感じる要素は多く存在します。

経済全体の成長率では米国が欧州を圧倒しているものの、個人の「暮らしやすさ」や「生活の質(QOL)」に焦点を当てると、評価の基準が大きく異なるためです。

アメリカ人が欧州を羨む主な要素

米国の市民、特に中間層や若年層の間で、欧州の生活様式や社会制度に対して以下のような点が評価される傾向にあります。

  • 社会保障と医療制度
    米国では医療費が非常に高額で、破産原因の上位に挙がるほどですが、欧州の多くの国ではユニバーサルヘルスケア(国民皆保険制度)が整備されており、医療費の負担が少ない点が強く羨まれます。
  • 労働環境と休暇制度
    米国には法律で定められた有給休暇の最低基準がなく、長時間労働が一般的です。一方、欧州では年間4〜6週間の法定制限された有給休暇があり、仕事と生活のバランス(ワークライフバランス)が保たれやすい環境があります。
  • 教育費の負担
    米国の高等教育(大学など)の学費は高騰を続けており、巨額の学生ローンを抱える若者が多い中、欧州の多くの国で大学の学費が無料、あるいは格安に抑えられている点は大きな魅力と映ります。
  • 都市の設計とインフラ
    車社会で移動コストや維持費がかかる米国に対し、欧州の多くの都市は公共交通機関や歩行者・自転車向けのインフラが充実しており、車がなくても快適に暮らせる「徒歩圏内の生活」が評価されます。

双方の視点と優先順位の違い

ダイモン氏のような経済界のトップが見る「経済成長率や投資効率」という指標と、一般市民が見る「日々の安心感や余暇の充実度」という指標には明確な乖離があります。

米国は「高いリスクを取って大きなリターン(富)を得る」という競争社会の構造を持ち、欧州は「高い税を支払う代わりに、セーフティネットと安定した生活環境を確保する」という福祉社会の構造を持っています。

そのため、米国の競争環境や医療・教育コストの高さに負担を感じる人々にとっては、EUの仕組みが非常に魅力的に映るという構図が生じています。

 

 

マーク・カーニー、米国を排除する「新しい世界秩序」を模索

  • Mark Carney Seeks “New World Order” That Excludes The US

カナダのマーク・カーニー首相がダブリンなどの欧州訪問時に発言した「新しい世界秩序(new world order)は欧州から構築される」という言葉をもとに、アメリカを排除した経済圏の構築やグローバリズムの動きを批判的に分析したものです。

カーニー首相は、米中の対立が進む中で「ミドルパワー(中堅国)」であるカナダや欧州諸国がアメリカの顔色をうかがうのではなく、独自の「第3の道」を模索すべきだと主張しています。

これに対し記事の筆者は、アメリカが世界全体の消費支出の30%を占める巨大市場であることや、カナダや欧州の規制重視の経済体制を理由に、この試みは成功せず、カナダの経済的な孤立や衰退を招くだけだと否定的な見解を示しています。

カーニー首相の発言の背景

カーニー首相は、G7サミットを前にフランスやアイルランドを訪問し、欧州諸国との連携を強化する姿勢を鮮明にしました。

背景には、トランプ米政権による関税の脅威や、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の再検討を控えた貿易上の緊張があります。

首相は、カナダと欧州連合(EU)を合わせれば、人口は米国の2倍以上、経済規模も同等、防衛予算は中国の2倍に達すると指摘し、アメリカに依存しない独自の経済・安全保障協定の有効性を訴えています。

記事における批判的な分析

記事の著者(タイラー・ダーデン)は、このカーニー首相の外交路線について以下の点を挙げて強く批判しています。

  • 米国市場の代替不可:世界の個人消費の約3割を牽引する米国市場から離脱することは不可能である。
  • 経済モデルの限界:欧州型の社会民主主義的な政策や高い税金、過剰な規制は中小企業の活力を奪い、経済成長を阻害する。
  • グローバリズムによる富の再分配:かつてのNAFTA(北米自由貿易協定)が米国の製造業を衰退させたように、グローバリズムの本質は強国から小国への人工的な富の再分配であり、自国の経済的な優位性を損なうものである。

結果として、アメリカとの交渉を軽視して欧州へ傾倒する現政権の政策は、カナダを財政的な破綻へと向かわせる危険性があると結論づけています。

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