夜にやっていることを朝に回してさっさと寝る
- 早起きすると、やりたいことができる時間が増える
- 5時に起きるのは出社するまでに2時間は確保したいから
- 早起きして会社に行けば、信頼、評価が上がる
- 早起きすると行動的になれる
- 早起きのコツは「早起きの目的を決めること」
- 早起きのコツは「夜にやっていることを朝に回してさっさと寝ること」
- 早起きのコツは「柔軟性をもってやる続けること」
明日が変わる大人の早起き術
早寝早起きは「老化」の一種
「早起き」すると寿命が縮む!
2015年10月17日
心筋梗塞、脳卒中、糖尿病のリスクが倍増。
- 早起きは健康である—誰もが信じきっていた通説を覆す研究発表が全世界で話題だ。そこに示されていたのは早起きによって起こる病気の数々。一流学者が本誌に語った、驚くべき「睡眠の新常識」。オックスフォード大学の研究で判明。
体にも心にも悪い
- 「『早起き』が健康に良いものだと思っているのならば、それは大きな間違いです。朝6時に起きて、日課のジョギングを1時間ほどこなしてから、余裕をもって会社に向かい、9時から仕事に取りかかる。誰もが理想的だと考えるそんな生活が、重大な病気を引き起こし、命取りになることもあるのです」
- 朝早く起きることは、人体にとって「拷問」に等しい—そんな衝撃的な研究結果を発表したのは、英オックスフォード大学の睡眠・概日リズム神経科学研究所の名誉研究員、ポール・ケリー博士である。
- 同博士が、イギリスで行われた科学イベントで発表したレポートが英ガーディアン紙などで報じられ、いま世界中で話題となっている。
- この記事の注目すべき点は、一般的な会社員にとっては当たり前のものとして受け入れられている「9時5時」という就業時間が、実は人間の体内時計と全くかみ合っていないということだ。
- さらにそれが原因となって、さまざまな病気を引き起こす恐れがあるほどに、精神にも肉体にも悪影響を与えるという。
- 「世界中のあらゆる人たちの睡眠パターンを分析して、年齢層ごとの推奨すべき起床時間と起床後の活動開始時間をはじき出すことに成功しました。それによれば、個人差はあるものの、起床時間は青年期(15~30歳)であれば朝9時、壮年期・中年期(31~64歳)なら8時、高年期(65歳以上)だと7時となっている。
- また起床後の活動開始時間は青年期11時、壮年期・中年期10時、高年期は9時が最適だと分かっています。この数値を見れば明らかなように、すべての年齢層の人に言えることは、6時よりも前に起床することは人間として本来あってはならないということです」
人間、年を重ねていくほど眠れなくなって、朝が早くなりがちだが、こうした習慣が身体に重大な影響を及ぼすというのである。 - これまでの研究から、早起きすることで起こりうる病気の数々についてケリー博士はこう続ける。
- 「わたしのいるオックスフォード大学だけでなく、米国のハーバード大学やネバダ大学などの研究機関で、早起きが病気のリスクを高めることに関する実証研究がすすめられています。
- 現時点でもすでにメタボリック・シンドロームや糖尿病、高血圧、より重篤な病気であれば、心筋梗塞や脳卒中、心不全などの循環器疾患やHPA(視床下部-脳下垂体-副腎皮質)機能不全によるうつ病などが判明しています」
集中力も落ちる
- 早起きのせいで、病気にかかりやすくなる—なぜこんなことがわたしたちの身体で起こりうるのだろうか。ケリー博士によれば、その原因は「人間の体内時計の『ズレ』」にあるという。
- 体内時計とは、「概日リズム」とも呼ばれる、生物に生まれながらにして備わった生命活動のサイクルである。これがあるおかげで、人はもちろん、あらゆる生物は意識しなくても活動状態と休息状態を一定のリズムで繰り返すことができる。
- ケリー博士はこの体内時計の周期と人間の実生活における行動周期とにズレが生じることが、人の身体に悪影響を及ぼすものだと考えている。そして早起きこそが、このズレを生むのだという。
- 「体内時計は身体のあらゆる部位に存在します。例えば脳の視交叉上核という場所に体内時計が備わっていますが、早起きすることによってこれがズレてしまうと、著しく脳の機能が低下します。すると集中力や記憶力、コミュニケーション能力などが著しく減退してしまうのです」
- ハーバード大学医学部において、朝から夕方までの勤務シフトで働く医者と、昼から夜までの勤務シフトで働く医者の仕事ぶりを比較する実験をケリー博士らが行った。すると、前者の医者は後者に比べて集中力の欠如が見られ、医療ミスが36%も増加したという。
博士らの研究の正しさは、ビジネスエリートたちも証明している。 - 世界最大のIT企業、グーグルはとりわけ社員の能力と睡眠の関係性を重要視している企業の一つだ。フレックスタイムを導入しているグーグルは、社員が自由に出社時間と退社時間を決められるようにしている。
- そのため、午前中のオフィスは人もまばらで、昼過ぎになってようやく社員たちが姿を見せ始めるという。
- 「脳に加えて、心臓や肺などのあらゆる臓器にも体内時計は備わっています。ただでさえ早起きをすることによってこれらの体内時計にズレが生じる上に、そのズレは年齢を重ねるごとに自然と大きくなります。
- そうなると、必要以上に臓器を酷使してしまうことになり、病気を誘発するリスクがさらに高まるのです」(ケリー博士)
- 実際に65歳以上の高齢者で平常時の起床時間と病気の発生リスクの関係を調査したケリー博士の研究結果がある。
- 博士が先に述べた高齢者の理想的な起床時間である7時以降にいつも起きている人と比べて、それよりも早い6時以前に起きている人は、心筋梗塞や脳卒中などの循環器疾患の発症リスクが最大で約4割、糖尿病やうつ病といったその他の病気に関しても2~3割高くなり、またその多くが重篤化しやすいという驚きの結果が出た。
- 早起きが習慣化してしまったばかりに、脳や心臓に負担をかけ、その寿命を縮めてしまうのだ。
高齢者は「遅寝遅起き」を
- 今回のケリー博士の研究発表と同じく、日本の睡眠医療の専門家である遠藤拓郎・スリープクリニック調布院長も、早起きが病気を引き起こす恐れがあると指摘する。
- 「人間のパフォーマンスというのは体温に依存します。体温が低い時は身体中の機能が著しく低下します。人間の一日のなかでの最低体温というのは、個人差もありますが朝の4時から6時。一方で最高体温となるのが夕方4時から6時。したがって、ケリー博士の言う通り、朝早くから活動をするのは年齢に関係なく危険なのです」
- とはいえ年齢を重ねれば、自分の意思とは関係なく、つい朝早くに目が覚めてしまうものだ。遠藤氏は続ける。
- 「高齢の方が朝早く起きてしまいやすくなるのは、メラトニンという眠気を誘発するホルモンが加齢によって減少してしまうからです。また体力の低下が、そのまま寝る力も奪ってしまっています。
- むしろ高齢の方は早寝早起きよりも『遅寝遅起き』のほうがずっと健康にいいんですよ」
遠藤氏によれば、早起きすることなく深い眠りを実現する一番の方法は、昼間から夜にかけて、時間を忘れるくらい趣味に没頭することだそうだ。 - ウトウトしながらテレビを眺めているのは最悪で、例えばプラモデル作りなどの集中力を要する趣味に時間をかけると、朝まで深く長く眠ることができるという。
- ケリー博士は特に日本社会に対して危機感を抱いている。
- 「統計的にも、日本人は世界中で突出して睡眠時間が短い。加えて早く起きる人の割合も多い。しかも学校や政府、企業がそれを主導しているように思えます。『早起きは三文の徳』ということわざが日本にはあるようですが、とくに高齢の方には、それは科学的に間違いだということを十分理解してもらいたいです」
- 健康に長生きするため早寝早起きを心がけよう—その思い込みが、実は、あなたの命を脅かしている。
ナゼ、人は年をとると「必要以上」に早寝早起きになるのか
中高年の過度な早寝早起きは要注意
- 年齢とともに早寝早起きになることはよく知られている。中高年に「若いときよりも早寝早起きになったか」と聞けば7割以上の人は「イエス」と答える。特に60歳以上のいわゆるリタイア世代になるとその割合はさらに増加する。
- 高齢者の早寝早起き、それ自体が悪いわけではない。しかし、過度の早寝早起きになると問題だ。
- 夜9時過ぎには眠気が強まり、頭がぼんやりして、知らぬ間にソファーで寝込んでしまう。いったん寝ついても2、3時間もすれば目を覚ましてしまう。まだ暗いうちに何度も目が覚める、二度寝ができないなど睡眠満足感が低下することが多い。
- あまりにも早い時間帯から寝落ちすると一般的に睡眠の質は低下する。ホルモンや自律神経など眠りを支える心身の機能がしっかりと準備が調っていないためだ。いくつかの研究によれば、健康な70代の体内時計は、若者と比較しても高々1時間程度しか進んでいないため、夜10時前は多くの高齢者にとって寝るには早すぎる時間帯なのだ。
- ところが、睡眠習慣調査を行うと分かるのだが、体内時計の加齢変化以上に早寝早起きをしている中高年がとても多い。この傾向は特にリタイア後に顕著になる。
- ナゼ、年とともに必要以上に早寝早起きになってしまうのか、そこには大きく4つのステップがある。各ステップには中高年で多い中途覚醒や早朝覚醒を改善する生活上のヒントも隠されている。
[第1ステップ早朝覚醒] -早起きだけなら正常な変化だが…
- 年齢とともに進行する「早寝」と「早起き」だが、実はこの両者が同時に起こることは少ない。多くの人ではちょっとした早朝覚醒から始まる。
- 早朝覚醒が起こる原因はさまざまだが、最大の原因は加齢とともに必要睡眠量が減少することにある。また、睡眠の中でも特に深い睡眠が減るため、ちょっとした刺激、例えば物音や寒さ、尿意などで目が覚めてしまう(年齢とともに必要睡眠量が減る理由については「ゾウの睡眠、ネズミの睡眠」で詳しく解説したのでご一読いただきたい)。
- つまり、中高年では眠りを維持する力が低下するようになり、早朝覚醒が起こりやすくなる。白髪や老眼と同じように、ある程度の早起きは正常な加齢変化と言える。ただし、当初は「年相応」に思われても、その「ちょっとした」早起きがさらに強度の早起きを招く悪循環の第2ステップにつながる。
[第2ステップ過剰な朝の光] -「朝の光で体内時計をリセット!」のワナ
- 早起きをしても、それだけで早寝になるわけではない。睡眠時間が短くなるのだから、就床時刻は同じにして少し早めに目を覚ませば済む話だ。実際、50代の働き盛りのサラリーマンの多くはそのような生活をしている。
- 早起きに引き続いて早寝が始まる大きな原因が過剰な「朝日」である。
- 早く目覚めると自ずとその日の活動の開始時刻も早くなる。特にリタイア後は出勤の必要が無いので、のんびり朝日を謳歌するようになる。暖かい季節ともなれば、朝5時台から散歩や体操、庭仕事などにいそしむご老人たちを多く見かけるが、この時に浴びる早朝の太陽光が早寝を引き起こす。
- 体内時計が光で調節されているのをご存じの方も多いだろう。大部分の人では体内時計の周期は24時間ジャストでないため、太陽光のような強い光で毎日時刻合わせをする必要がある。ただし、光を浴びる時刻によって体内時計の針を進めたり、戻したり、全く逆の
- 作用を発揮するので注意が必要である。
光と体内時計の関係性については「朝型勤務補講夜型生活から脱却する効果的な方法」で解説したが、平たく言えば朝の光は朝型(早寝早起き型)に、夜の光は夜型(宵っ張り型)に体内時計をシフトさせる。 - そのため、睡眠リズムを保つには朝と夜の光量のバランスが大事になる。雑誌やネット上で「朝の光で体内時計をリセット!」などのキャッチフレーズをよく見かけるが、これは夜型に傾きやすい若者向けのアドバイスとしては有効だ。
- ところが高齢者では逆に、体内時計を朝型に傾ける光を多く浴びるようになる。早朝覚醒のためだ。例えば、夜22時頃に寝つき朝5時頃に目を覚ます高齢者であれば、早朝(4時過ぎ)から昼頃にかけて太陽光のような強い光が目に入ることで、その人の体内時計は大きく朝型にシフトする。まさに早朝の散歩で浴びる光は体内時計を超朝型に固定する役目を果たしている。
- 早い時間帯から眠気が生じるようになり、夕食が済んでしばらくするとゴロンと横になりたくなる。それまで楽しんでいた22時台のTV番組もなんとなく集中できず、途中でうたた寝をするようになる。奥さんから「寝室でちゃんと寝てください」とお小言を喰らって、すっかり早寝の習慣ができ上がってしまうのである。
- 「朝の光で体内時計をリセット!」は早朝覚醒気味の高齢者には逆効果なのでご留意を。
[第3ステップ減る夜の光] -過剰な朝型光と減る夜型光のダブルパンチ
- 昼過ぎから深夜にかけての光は体内時計が朝型に傾きすぎないようにする一種の歯止めとして作用しているのだが、高齢者ではこの時間帯の光を浴びる機会が少なくなる。
- 高齢者の場合、散歩は暑さを凌ぎやすい早朝か日没後にすることが多い。買い出しも働く世代で混み合う夕方を避けて開店早々に出向くなど、何かと午前に比べて午後の太陽光を浴びる機会が少なくなりがちだ。
- また、早寝をすれば当然ながら体内時計を夜型にする家庭照明の光も目に入らなくなる。家庭照明は太陽光に比べて作用は弱いが、最近は光量の大きい大型液晶テレビや(体内時計さの調節作用が強い)ブルーライトを多く含むLED照明なども増えて、無視できない夜型作用を発揮する。
- 夜の明るい光は朝起きが苦手な若者には良くないが、過度の早寝と早起きで困っている中高年には役に立つ。夜間に特殊な強い光を浴びることで高齢者の不眠症状が改善することも臨床研究で確かめられている。具体的な方法については次回、詳しくご説明する。
- いずれにせよ、過剰な朝型光と減る一方の夜型光のダブルパンチで中高年の早寝早起きは加速するのである。
[第4ステップ意欲・体力低下] -「消極的な早寝」は睡眠満足感を損なう
- 現役時代は早寝には一定の歯止めがかかっている。なぜなら仕事や付き合いで帰宅時間が遅いため早寝には限界があるからだ。早く帰宅した日にもTVや読書など余暇を楽しむなどして、さほど就床時刻は早くならない。
- しかし、リタイア後はとたんに早寝が始まる。体力的な低下もあるのだが「起きていてもやることがない」「TVも映画も面白くない」などの理由から21時頃に早々と布団を被ってしまう人も少なくない。
- このような「消極的な早寝」は睡眠満足感を大きく損なってしまう。考えてもみてほしい。あくまでも平均だが、正味の睡眠時間は60代で6時間そこそこ、70代になれば6時間を切る。21時から寝たのでは朝までの9時間のうち3時間も悶々と目を覚ましていることになる。
- 冒頭にも書いたが、多くの高齢者では必要以上に早寝早起きをしている。その睡眠サイクルで元気に不満なく生活できていれば結構だが、睡眠満足感が乏しく不眠症につながることもある。そのようなときは、意識的に少し遅寝をした方が睡眠の質は格段に向上する。
そのためには、今回取り上げた4つのステップからなる悪循環をどこかで断ち切る必要がある。そこで次回は体内時計の朝型シフトを防止する、さらにはより積極的に夜型シフトさせることで、睡眠の質を向上させる方法についてご紹介する。