財務省は過去30年にわたり「財政健全化を重視し、増税や歳出削減(緊縮財政)を通じて財政規律維持を最優先する姿勢を維持」してきた。効果が出ていない。間違いだったのではないか?
今求められているのは、国家戦略に基づいた積極的な財政運用への転換
財務省による緊縮財政の構造的背景
財務省が過去30年にわたり堅持してきた財政規律の維持は、表面的な「帳尻合わせ」という以上に、日本の経済構造を固定化させる決定的な要因となりました。
この政策の根底には、政府支出を「経済成長のエンジン」ではなく「将来への借金」という単一の側面で捉える硬直化したドグマが存在します。
その結果、デフレ下での増税や歳出削減が民間の需要を冷やし、さらなる税収減を招くという「緊縮の罠」に陥り、分母となるGDPが成長しないために、本来の目的である債務対GDP比の改善も進まないという皮肉な結果を招いています。
供給能力の毀損とサプライチェーンへの影響
緊縮財政の真の弊害は、名目上の赤字額よりも、日本の「実力行使」の基盤となる供給能力を長期間にわたって毀損し続けてきた点にあります。
公共投資の抑制や研究開発費の伸び悩みは、国内の産業基盤を弱体化させ、結果として企業が海外へ生産拠点を移転させる「産業の空洞化」を加速させました。
これは単なる資本の移動ではなく、日本の製造業が持っていた垂直統合型の強みを解体し、中国を中心とした東アジアのサプライチェーンに組み込まれる構造を生み出しました。
経済安全保障が重視される現在、この過去30年の「投資不足」が、先端技術や重要物資における対外依存度を高めるという、戦略的な脆弱性を露呈させています。
経済主権と地政学的リスクの増大
財政規律を最優先する姿勢は、日本の中立的な外交力や交渉力にも影を落としています。
国内市場が成長しない状況では、日本企業は生き残りのために巨大な中国市場や他国の経済圏に依存せざるを得ません。
財務省による支出抑制は、防衛力やエネルギー自給率の向上、次世代産業の育成といった「国家の生存に不可欠なコスト」までも一律に削減対象としてきました。
これにより、日本は他国に対して経済的なカード(レバレッジ)を失い、中立国としての立場を維持しながらサプライチェーンの再編を主導する力が削がれてしまったと分析できます。
財政再建優先の誤算と今後の展望
結論として、過去30年の財務省の舵取りは、デフレという特殊な病態に対して「食事制限(緊縮)」を処方し続けたようなものであり、体力を奪い、病状を悪化させたという評価は免れません。
今求められているのは、単なる赤字の削減ではなく、どの分野に資金を投じれば「サプライチェーンの自立」や「構造的な成長」を奪還できるかという、国家戦略に基づいた積極的な財政運用の転換です。
財政の健全性は、経済の強靭さと成長の結果として得られるものであり、手段が目的化した現状の政策は、日本の国際的な地位をさらに低下させるリスクを孕んでいます。

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