BYDの大幅な値下げによる価格競争激化 弱小メーカーやサプライヤーや有力ブランドにも倒産リスク 中国自動車業界全体が「不動産バブル崩壊」のよう

BYDは中国自動車業界の「恒大」なのか?―独メディア

背景と主な論点

  • 2025年6月25日、ドイチェ・ヴェレ中国語版は、ドイツのデジタル経済誌「t3n.de」の記事を紹介し、中国EV最大手BYDの値下げ競争が中国自動車産業全体を崩壊させる可能性について論じました。

主な内容と指摘

  • 海外では中国EV産業は「止められない自然の力」として世界市場を席巻しているように見えるが、中国国内では産業崩壊の懸念が高まっている。
  • 2025年5月末、BYDが最大30%の大幅値下げを実施し、新たな価格競争を仕掛けたことが「パニック」の引き金となった。
  • 長城汽車の魏建軍董事長は「自動車業界の恒大集団(中国の不動産バブル崩壊の象徴)」が出現していると警鐘を鳴らし、一部メーカーが市場シェア獲得に固執し、収益性や技術革新を無視している現状を批判した。
  • BYDは値下げを「生存戦略の一環」と説明している。

中国自動車業界の構造問題

  • 近年、中国の自動車業界は「世界中の競合他社を打ち負かすための産業政策」として過剰生産能力と低価格競争に苦しんでいる。
  • 2025年の中国EV生産能力は予想販売台数の2.5倍以上、約3600万台に達するとされ、生産過剰と価格競争で特に弱小メーカーやサプライヤーが大きな打撃を受けている。
  • 価格競争の主戦場がほとんど利益の出ない低価格帯に集中しており、有力ブランドでさえ倒産リスクが高まっている。
  • 魏建軍氏は「高レバレッジで成長してきた多くの企業はすでに危険水域に達している」と指摘。

現状と今後の懸念

  • BYDはここ数カ月、一部工場で生産シフトを削減し、新たな生産ラインの増設も延期するなど、事業拡大のペースを鈍化させている。
  • 2024年だけで中国自動車業界は2兆7600億円の損失を被ったとされ、業界全体が「内巻」(過当競争)に陥り、景気減速を招いている。

まとめ

  • BYDの大幅な値下げによる価格競争激化は、弱小メーカーやサプライヤーだけでなく、有力ブランドにも倒産リスクをもたらし、中国自動車業界全体が「不動産バブル崩壊」のような危機に直面する可能性が高まっていると、独メディアは警鐘を鳴らしています。

毒の水:PFAS汚染に立ち向かったある弁護士の20年
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著者・内容

  • 著者はロバート・ビロット(Robert Bilott)。アメリカの弁護士で、PFAS(有機フッ素化合物)による環境汚染問題を20年以上にわたり追及した実在の人物です。
  • 本書は、PFASによる大規模な水質汚染と健康被害を隠蔽してきた巨大化学企業デュポン社と、ビロット弁護士が闘った記録です。
  • PFASは「永遠の化学物質」と呼ばれ、フライパンや食品包装、化粧品、水道水など身近な製品に広く使われてきたが、体内に蓄積し、がんや潰瘍性大腸炎など深刻な健康被害を引き起こすことが判明しています。

物語の経緯

  • 1998年、ある農場主から「牛が次々と死んでいる」と相談を受けたことが発端です。調査の結果、原因はデュポン社が排出したPFOA(PFASの一種)であることが判明しました。
  • ビロットは企業の内部文書11万ページ以上を精査し、デュポン社がPFOAの有害性を数十年前から認識していたこと、そして意図的に情報を隠蔽していたことを突き止めました。
  • 住民を代表した集団訴訟や大規模な健康調査を主導し、PFASと複数の病気の関連性を科学的に立証。最終的にデュポン社に多額の賠償金を支払わせるなど、社会的な責任を追及しました。

社会的意義

  • 本書は、企業や政府の隠蔽体質、規制の不備、そして市民の健康を守るために立ち上がった一人の弁護士と住民たちの闘いを描いています。
  • 日本でもPFAS汚染が社会問題化しており、本書はその現状に警鐘を鳴らすノンフィクション大作として注目されています。

関連作品

  • 本書を原作とした映画『ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男』(主演:マーク・ラファロ)も製作され、国際的に大きな反響を呼びました。

まとめ

  • PFAS汚染の実態と、それに立ち向かった弁護士ロバート・ビロットの20年にわたる闘いを描いたノンフィクションです。企業の隠蔽と住民の被害、そして正義を求める市民の力を描いた社会的意義の高い一冊です。

ロバート・ビロットとは

  • ロバート・ビロット(Robert Bilott)は、アメリカ・オハイオ州シンシナティ出身の環境弁護士です。彼は、化学大手デュポン社による有害化学物質PFAS(有機フッ素化合物、特にPFOAやPFOS)の不法投棄と、それによる環境・健康被害をめぐる訴訟で世界的に知られています。

主な業績と経歴

  • 1990年に弁護士資格を取得し、シンシナティのタフト・ステッティニアス&ホリスター法律事務所に入所。もともとは企業側の弁護を担当していましたが、1999年にウェストバージニア州の農場主ウィルバー・テナントの依頼を受け、デュポン社によるPFOA廃棄問題に取り組み始めました。
  • 2001年、PFOAによる飲料水汚染の被害を受けた約7万人を代表し、デュポン社に対して集団訴訟を提起。2004年に和解が成立し、デュポンは3億ドル以上の補償や浄水設備の設置、健康調査の実施などに合意しました。
  • その後も、PFASをめぐる全米規模の訴訟や調査を主導し、3Mやケマーズなど他の大手化学メーカーとも法廷で争い続けています。

社会的影響と評価

  • ビロットの活動は、2019年の映画『ダーク・ウォーターズ』やドキュメンタリー『The Devil We Know』で広く知られるようになりました。映画ではマーク・ラファロが彼を演じています。
  • 2017年には「もう一つのノーベル賞」とも呼ばれるライト・ライブリフッド賞を受賞し、環境・法分野で多くの賞を受けています。
  • 2024年には、アメリカ政府がPFASの飲料水基準を初めて制定し、PFAS対策に10億ドルの予算を投じるなど、彼の長年の活動が政策にも大きな影響を与えました。

著書・メディア

  • 著書に『毒の水 PFAS汚染に立ち向かったある弁護士の20年』(原題:Exposure)があり、日本語訳も出版されています。
  • ビロットは世界各地の大学や団体で講演を行い、市民団体「レス・キャンサー」「グリーン・アンブレラ」の理事も務めています。

まとめ

  • ロバート・ビロットは、PFASによる環境・健康被害の実態を明らかにし、企業の責任を追及し続けてきた環境弁護士です。彼の活動は映画や書籍を通じて世界に知られ、PFAS規制や被害者救済の流れを大きく前進させました。

『ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男』 概要

  • 『ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男』(原題:Dark Waters)は、2019年製作のアメリカ映画で、実際に起きた環境汚染訴訟を描いた社会派サスペンスです。監督はトッド・ヘインズ、主演・プロデュースはマーク・ラファロ。共演にアン・ハサウェイ、ティム・ロビンスらが名を連ねています。

あらすじ

  • 1998年、オハイオ州の法律事務所で企業弁護士として働くロブ・ビロット(マーク・ラファロ)は、ウェストバージニア州の農場主ウィルバー・テナントから「デュポン社の工場廃棄物によって牛が大量死している」という調査依頼を受けます。ロブは調査を進める中で、デュポン社が発がん性のある有害物質「PFOA(PFASの一種)」の危険性を40年以上隠蔽し、環境や住民に深刻な健康被害をもたらしていた事実に気づきます。
  • ロブは7万人の住民を原告団とする集団訴訟を起こし、巨大企業デュポン社との十数年におよぶ法廷闘争に挑みます。しかし、企業の圧倒的な資金力と権力、そして長期にわたるストレスやプレッシャーの中で、ロブ自身や家族も大きな犠牲を強いられていきます。

作品の特徴・背景

  • 実話を基にしており、モデルとなったロバート・ビロット弁護士は、PFAS(有機フッ素化合物)による公害問題の第一人者です。
  • 本作は2016年のニューヨーク・タイムズ・マガジンの記事「デュポンにとって最悪の悪夢になった弁護士」に着想を得ています。
  • PFASは「永遠の化学物質」とも呼ばれ、環境や人体に長期間残留し、現在も世界中で規制が進められています。

公開日・基本情報

  • 日本公開日:2021年12月17日

評価・見どころ

  • 巨大企業の隠蔽体質や公害問題の深刻さ、そして一人の弁護士の信念と勇気を描いた社会派ドラマ。
  • 実在の事件をベースにしており、現代社会における企業倫理や環境問題の重要性を問いかけています。

環境汚染と企業の責任、そして正義を追い求める人間の姿を描いた実話ベースの映画です。

『The Devil We Know』あらすじ

『The Devil We Know』は、アメリカ・ウェストバージニア州パーカーズバーグにあるデュポン社の工場で製造されたテフロンの主成分「PFOA(パーフルオロオクタン酸)」による健康被害と環境汚染を追った2018年のドキュメンタリー映画です。

物語は、デュポン社が1951年から2003年までに少なくとも170万ポンドものPFOAを水や空気中に排出していた事実を明らかにし、地元住民や工場労働者の健康被害の実態、そして企業と住民の闘いを描きます。

主な登場人物には、地元農家のウィルバー・テナント(彼の牛たちは黒い歯や奇形で死んでいく)、工場従業員の女性スー・ベイリー(彼女の息子も奇形で生まれる)、そして多くの住民たちが含まれます。住民や労働者の間で腎臓がん、精巣がん、甲状腺疾患、潰瘍性大腸炎、高コレステロール、妊娠高血圧などの健康被害が報告され、PFOAとの関連が指摘されます。

映画は、企業の内部資料や科学者・活動家の証言、公聴会の映像などを交えながら、デュポン社が危険性を認識しながらも利益を優先し、長年にわたり有害物質を使用・排出し続けてきた実態を暴露します。

最終的に、住民たちは集団訴訟を起こし、巨大企業に立ち向かうことになります。

要点まとめ

  • テフロンの製造過程で発生する有害化学物質PFOAによる健康被害と環境汚染を追うドキュメンタリー
  • デュポン社の企業姿勢と住民・労働者の苦しみ、そして訴訟による闘いを描く
  • 実際の被害者や科学者の証言、企業の内部資料を通じて、現代社会に潜む「身近な悪魔」を浮き彫りにする