トランプ大統領の「交渉術」 アジア諸国には通用せず
ドナルド・トランプ大統領が自ら「交渉の名手」と称し、強硬かつ独特な交渉術を展開しているものの、アジア諸国にはその手法が通用していないことが明らかになっています。
- 日本では、トランプ大統領はかつての安倍晋三首相のような米国追従を期待していましたが、現職の石破茂首相ははるかに慎重かつ独立した姿勢を示しており、トランプ政権が求める迅速な貿易協定の締結には応じていません。実際、トランプ政権発足から159日が経過した時点でも、注目すべき貿易協定は一つも締結されていません。また、関税協議でも日本側は譲歩せず、トランプ大統領は30%を超える関税を課す可能性まで示唆していますが、合意には至っていません。
- 韓国もまた、米国との協定締結を急いでおらず、自動車や鉄鋼などの主要分野での関税免除を求める姿勢を崩していません。韓国側は、関税撤廃があれば協議に応じるという条件を示しており、単なる圧力には屈しない態度を取っています。
- インドも同様に、トランプ政権の揺さぶりに屈せず、互恵的な取引を求めて部門別関税や相互関税の免除を働きかけています。
- 中国に至っては、米中間で貿易協議の合意文書が署名されたと米側が主張しても、中国当局はほとんど発言せず、トランプ政権の思惑を巧妙にかわしています。
- さらに、ASEAN諸国も2025年にマレーシア主導で「団体交渉」を模索し、アメリカの一方的な関税導入に対して懸念を表明しつつも、対抗措置は取らず、建設的な対話を重視する姿勢を示しています。
このように、トランプ大統領の強硬な交渉術はアジア諸国には通じておらず、各国は独自の戦略や集団的対応で抵抗しているのが現状です。
難航する日米関税交渉、トランプ氏の誤算
- 米国は多くの国との交渉が行き詰まっており、来週交渉期限を迎える関税の一時停止措置に暗雲が垂れ込めている
日米関税交渉は現在、合意の見通しが立たず難航しています。アメリカのトランプ大統領は2025年7月1日、日本との交渉について「合意できるかどうかは分からない。おそらくできないだろう」と発言し、日本からの輸入品に対し30%または35%、あるいはアメリカが決定する関税を課す可能性を明言しました。これは、従来の24%の関税率を大きく上回る水準です。
背景には、アメリカが日本との自動車やコメの貿易不均衡に強い不満を持っていることがあります。トランプ大統領は「日本は米国産のコメを受け入れず、自動車分野でも不公平だ」と繰り返し主張し、日本側の姿勢を「非常に強硬」と批判しています。
アメリカ側は交渉がまとまらない場合、日本からの自動車輸出に台数制限(輸出自主規制)を求める可能性も示唆しています。一方、日本政府は「国益を最優先し、安易に譲歩しない」との方針を維持し、引き続き双方にとって有益な合意を目指す姿勢です。
交渉期限は7月9日に設定されており、それまでに合意できなければ、アメリカは関税引き上げを実行する構えを見せています。現時点で期限延長の考えはないとされています。
- この本は、アメリカ大統領選挙で再び注目を集めるドナルド・トランプ氏の「2.0」時代を迎えた国際情勢を分析し、トランプ再登場が世界と日本にもたらす影響について論じています。著者の大前研一氏は、日米貿易交渉などの豊富な実務経験と鋭い現状分析をもとに、日本がどのようにこの「ゲームチェンジ」に対応すべきか、具体的な提言を行っています。
本書の特徴
- トランプ2.0体制下でのアメリカの外交・経済政策の変化を詳細に分析
- 日本が直面するリスクとチャンスを明確化
- 日本政府や企業が取るべき現実的な戦略を提案
- 「トランプに強く反発すれば理不尽な要求が強まるため、正面からぶつからずに受け流して時間を稼ぐ」といった、現実的な対米戦略も紹介
大前氏の知見と実務経験に裏打ちされた内容で、今後の国際情勢や日本の立ち位置を考えるうえで有用な一冊となっています。