アメリカのAI企業、中国に顧客を奪われる

米国のAI研究機関(フロンティア・ラボ)に対する反発の動き

  • The revolt against U.S. AI labs

米国の大手AI開発企業(フロンティア・ラボ)が、モデルの巨大化や高性能化に偏重するあまり、一般企業の実際のニーズを満たせていないという批判が強まっています。

同時に、トランプ政権による米国製最先端AIツールの利用制限と、安価で高性能な中国製AIモデルの台頭という二つの要因が重なり、米国のAI企業は顧客流出の危機に直面しています。

パランティアCEOによる批判の背景

データ分析大手パランティアのCEOであるアレックス・カープ氏は、CNBCの番組内でOpenAIやAnthropicなどの米国有力AI企業を強く批判しました。

同氏が主張する問題点は主に以下の通りです。

  • トークン課金モデル(Tokenmaxxing)への依存
    企業がAIの利用量(トークン数)に応じて高額な費用を支払い続ける仕組みは、一時的な進歩を感じさせるだけであり、本質的な企業価値を生まない。
  • データと知的財産の流出リスク
    外部のAI企業のAPIを利用して自社の重要データを処理させることは、自社のノウハウや優位性を他社に明け渡すリスクを伴う。
  • 企業の主権の喪失
    技術的な先進性を持つ企業や組織は、コンピューティング資源、モデル、データスタック、そして独自の競争優位性を自社で完全に管理(主権を維持)すべきである。

米国AI企業が直面する二重の課題

現在の米国AI市場は、以下の二つの要因によって構造的な変化を迎えています。

第一に、米国政府による安全保障上の理由から、最先端AIの商用利用やアクセスに対する規制や制限が強化され、企業側の自由度が下がっている点です。

第二に、中国のAI企業が開発するオープンウェイト(モデルの重みが公開されている)のAIモデルが急速に進化し、米国のクローズドな最先端モデルに匹敵する性能を、はるかに低いコストで提供し始めている点です。

これらの要因により、高コストでデータの囲い込みを行う米国のフロンティア・ラボから離れ、自社でコントロールが可能なオープンなモデルや、コストパフォーマンスの高い代替手段を採用する動きが民間企業の間で広がっています。

 

 

「何かが完全に狂ってしまっている」:パランティアのアレックス・カープCEO、OpenAIとAnthropicを激しく批判

  • ‘Something Has Gone Completely Wrong’: Palantir’s Alex Karp Goes Ballistic On OpenAI, Anthropic

パランティア・テクノロジーズのCEOアレックス・カープ氏が、OpenAIやAnthropicなどの最先端AI開発企業(フロンティア・ラボ)のビジネスモデルを激しく批判しました。

カープ氏は、従量課金制(トークン課金)の仕組みやデータの主権が奪われるリスクを「狂っている」と断じ、企業や国家が独自のAI主権(データやモデルの重みの保持)を持つべきだと主張しています。

背景には、高いコストや投資対効果(ROI)への疑問から、一部の米国企業が安価な中国製のオープンウェイトモデル(DeepSeekやKimiなど)へ乗り換えを検討・実施しているという、AI業界の構造変化があります。

カープ氏の主な批判と主張

カープ氏の指摘およびパランティアが発表した「AI主権マニフェスト」の要点は以下の通りです。

  • トークン課金モデル(Tokenmaxxing)への批判
    トークン消費量を競うモデルは、堅牢なシステムではなく使い捨てのスクリプトを増やすだけであり、本当の価値ではなく虚偽の進捗を生むと批判しています。
  • データの主権と競争優位性(アルファ)の維持
    独自のデータやモデルの「重み(ウェイト)」は、企業のこれまでの知識の結晶です。これを外部のAPI(クラウドサービスなど)に委ねることは、自社の競争優位性を他社に明け渡す行為(一種の富裕税の支払い)であると警告しています。
  • 安全保障上の懸念
    米国の戦場や国防に関わる意思決定を、シリコンバレーの合意形成(コンセンサス)に外注することは非常に危険であると主張しています。
  • パランティアの対抗策
    NVIDIAとの提携を拡大し、顧客が計算資源(コンピュート)、モデル、データ、重みのすべてを自社で管理できる「カスタム・ソブリン(主権型)AI」の展開を進めています。

中国製モデルへの移行トレンド

コスト削減と実用性を重視する米国企業の間で、中国のオープンウェイトモデルを採用する動きが具体化しています。

  • マイクロソフト
    コスト構造を見直す中で、Copilotの裏側で動くエンジンとして、中国の「DeepSeek V4」などのオープンソースモデルを自社ホストして微調整(ファインチューニング)することを検討しています。
  • コインベース(Coinbase)
    社内のAI関連支出を約50%削減するため、エンジニアがデフォルトで使用するモデルを、中国の「Zhipu AI(智譜AI)のGLM 5.2」や「Moonshot AI(月之暗面)のKimiシリーズ」に切り替えました。
  • Cursor(AIコーディングツール)
    開発元は、自社の「Composer 2」モデルの基盤として、アリババが出資するMoonshot AIの「Kimi K2.5」を採用しています。
  • データ上の動向
    OpenRouterのデータによると、世界のトークン消費量において、特定の期間ではトップモデルの中での中国製モデルのシェアが60%を超えるなど、実利をとる企業による採用が急増しています。

 

 

日本、国内向けAIモデルと1000万台のロボット導入により2.3兆ドル計画の次なる段階へ

  • Japan Takes Next Step In $2.3 Trillion Plan With Domestic AI Model And 10M Robots

日本政府は2026年6月末から7月にかけて、総額370兆円規模の成長戦略の一環として、独自のAI基盤モデル開発と2040年までに1000万台のAIロボットを導入する国家戦略を発表しました。

これは「フィジカルAI(実世界で動くAI)」の分野で主導権を握り、深刻化する労働力不足を解消するとともに、米国や中国への技術依存を減らす「AI主権」の確立を目指すものです。

官民一体の新組織「Noetra」による国内AI開発

経済産業省(METI)とNEDOが主導し、ソフトバンク、ソニーグループ、NEC、ホンダなどが共同出資する新コンソーシアム「Noetra(ノエトラ)」が設立されました。

産業技術総合研究所(AIST)やPreferred Networks(PFN)のエンジニアも参画し、言語や映像、センサーデータを同時に処理できるマルチモーダルな基盤モデルを5年計画で開発します。

政府は最大1兆円(初期支援として約3900億円)の補助金を投じますが、進捗に応じた成果主義の資金枠となっています。

18分野への拡大と「フィジカルAI」への注力

従来の製造業や物流に加え、飲食店、食品製造、医療など計18の分野を対象に指定しました。

単に画面の中で完結するAIではなく、日本の強みであるハードウェア(ファナックや安川電機、川崎重工業などのロボット技術)にAIを組み込むことで、現場で自律的に判断して動くシステムを構築します。

背景にある人口減少と国際競争

日本の人口の29%以上が65歳以上という超高齢化社会を背景に、労働力不足を補う手段としてロボットの社会実装が急務となっています。

また、安全保障の観点から独自の「信頼できるAI(Trustworthy AI)」を確保し、米中陣営に対して戦略的な自立性を保つ狙いがあります。

 

 

パランティア アレックス・カープ

「アメリカが歴史的に抱くヨーロッパへの劣等感、欧米人が東アジアに対して抱く恐れ、劣等感は、ソフトウェアの世界では当てはまらない。アメリカ万歳!」

防衛分野のAI開発に関して「日米で連携して開発を急ぐべきだ」と発言。

防衛分野のAI開発に関して日米で連携して開発を急ぐべき

パランティアのCEOであるアレックス・カープ氏による、アメリカのソフトウェア領域における技術的優位性への強い自信と、地政学的なリスクに対応するための日米防衛連携の重要性に関する発言の要約です。

ソフトウェア領域における米国の優位性

カープ氏は、アメリカが歴史的にヨーロッパの伝統や文化に対して抱いてきたコンプレックスや、欧米諸国が東アジアの製造業や勤勉さに対して抱く脅威論は、ソフトウェアの世界においては一切通用しないと主張しています。

同氏は、シリコンバレーを中心とする米国の革新的なソフトウェア開発力や、失敗を恐れず迅速に社会実装を進める企業家精神こそが世界最強の武器であると考えています。

「アメリカ万歳(USA!)」という表現に象徴されるように、AIや大規模なデータ解析プラットフォームの分野では、米国が圧倒的な覇権を握り続けるという強い自負が示されています。

日米による防衛AI共同開発の必要性

安全保障および防衛分野におけるAI(人工知能)の活用について、カープ氏は日本と米国の緊密な連携と開発の加速を強く訴えています。

同氏が防衛AIの連携を急ぐべきだと考える主な理由は以下の通りです。

  • 地政学的リスクの増大
    東アジアにおける軍事的な緊張の高まりや、中国による技術的・軍事的な台頭に対抗するためには、日米同盟の技術的な高度化が不可欠である。
  • 現代戦におけるソフトウェアの重要性
    ウクライナや中東での紛争が示すように、現代の安全保障は従来の兵器(ハードウェア)の量だけでなく、ドローンや衛星データをリアルタイムで解析して作戦に繋げるAI(ソフトウェア)の性能が勝敗を分ける。
  • 相互運用性の確保
    日米の防衛システムが共通のAI基盤やデータ規格を持つことで、有事における迅速な情報共有と共同作戦の能力を最大化させる必要がある。

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