桜田淳子、1993年のインタビュー 相米慎二監督の新作映画「お引越し」で自立した母親を演じる桜田淳子。

今回は、日本中の注目を集めて祝福を受けたお相手、東伸行さんとの新婚生活を初公開!!

最後にはムッとされるまで突っ込んだ突撃インタビュー!!

私が桜田淳子のインタビューをすると言ったら、友達はみんな、「なにそれー、オイシイじゃーん」と言った。思えば、彼女は『花の中3トリオ』の頃からオイシイ存在で、最近またまた統一教会がらみでウマミを増した、と言っても過言ではない存在なのだ。ギャグ・パントマイムの中村有志が、「私は淳子の夫の東です。三日目、やっと私が上になれました」なんてネタでウケてるようだし。芸能生活なんと二十年、あらゆる意味でオイシイ存在であり続けるということは、まさに芸能人としての才能なんじゃあないだろうか。

結婚は惚れたはれたじゃない

彼女は現在、例の統一教会の合同結婚式で祝福,された東伸行さんと、めでたく彼の勤務先である福井県敦賀で新妻生活している。ついこの間も夫婦でニューヨークに赴き、統一教会の聖誕祭で結婚披露を兼ねて熱唱した姿が、ワイドショー系で放映されたばかりだ。このVTRが教会のお下げ渡し、であったことから、スポーツ新聞でまたまた話題になってしまった。『動く広告塔、いよいよ始動開始』とか書かれつつ、今日は新作映画『お引越し』のプロモーションのため、上京している。「敦賀からじゃ大変でしょう」「ええ、今日も六時起きで来たんですよ。でもまあ、敦賀に住んでるのは別に大変な事じゃないですよ。どこに住んでも、その人が前向きであって、その場その場でい「ろんなものを吸収していけばいいんじゃないでしょうか」「だけど、普通芸能人って言ったら、私たち一般人からしてみれば、独身時代はさぞや派手な生活をしてたでしょうと思うわけですよ。いま福井で普通の地味な奥さんの生活が務まるのかしらって」「私だって一般人ですよ。ただ女優っていう人目につく仕事をやってるだけで。それにもう二十年っていうキャリアがあって、最初からアイドル歌手でしたからね、ネームバリューだけはあるでしょう。でももとを正せば秋田の片田舎の、桜田さんちの淳子ちゃんなんです。だから、ほんとにこれは親に感謝しなきゃいけないことなんだけど、ごはんを作ったり洗濯したりお掃除したり、そういう普通のことが楽しみながらできるように育てられてる。好きなんですよ、家事が」彼女の得意料理はお惣菜系(たとえばシャケ缶のコロッケとか)と、ニンニクのエキスをオリーブオイルの中にたっぷり絞り込んだ、トマトソースのスパゲティだそうな。「だから敦賀に行く時ね、ホールトマトの缶詰と美味しいパスタをいっぱい買ってったの。そしたら彼に『そんなのこっちでも売ってるよ』って怒られちゃってね。きょうも出がけに東さんにコロッケを作っておいてきたんです」と、ちょっとした気っぽいことも交え、まさにいい人そう、幸せそうな桜田淳子なのであった。しかしまあ、生真面目で優等生的ないい人っていうのは、何を聞いてもごもっともなお答えしか返ってこないからつまら一ないものである。いい人過ぎてつまりんねー、みたいな。「今の女の人達は男女平等」に胡座をかいてますけど」ね、私はやっぱり女性として生まれたからには、女と一して最低限のこと一はやっていきたいんです。別にねばならない、じゃなくておくゆかしさを持つというのは前向きなことだと思いますよ。私は東の姓になったんだから彼に従っていきたいし。彼もそれに胡座をかくっていうんじゃなくて、よく知らないうちに布団しいてくれたりしちゃってるし」「段はお二人でどんなことを話されるんですか」「段はふざけて冗談言い合ってますよ。でも肝心な時はちゃんと敬語で話し合います。何かやってもらったお礼の時なんかも、どうもすみません、ありがとうって」なんだか道徳の先生の新婚生活を聞いてるみたいで眠くなってきた。みんなの期待している夜の生活云々、三日間の儀式が決まっててどうとか、なんてのは、よもや聞いてもNEVER出て来そうにない。

「お二人の共通のご趣味は?」「旅行ですね。よく『じゃあ、行っちゃおうか』とかいってすぐ二人で出掛けちゃうんですよ。彼は学生時代に七カ月くらい休学して西ヨーロッパを回ってたし、私も遅咲きながら三十から一人旅を始めたものでね、その辺すごく共感する。この間のニューヨークも前目に行っちゃおうかって決まって。向こうに彼のお姉さんがいるんでね、報告がてら子供達にも会いに。私は子供が本当に好きなんですよ。最低三人は欲しい。彼も好きだし。急がないと」になっちゃうから(笑)」各方面で物議を醸した合同結婚式でのお相手だが、彼女としては非常に満足しているようだ。

「あの大騒ぎに関してはい。しかないですね。日本のマスコミはどうなっちゃうんだろうって。だって世の中もっと大変な事がいっばいあるでしょう。一人の女優さんがみんなとは違う結婚形態を取ったっていうだけで付和同というか。もともと私にとっての結婚っていうのは、惚れたはれたじゃないんですよ。私は自分の育った家が一番の幸せのイメージなんです。お姑さんを立てて、母は相当我慢してた。だから、私たち子供は、親同士が喧嘩するような醜いところは見ないで済んだんですよ。おかげで私は素直でまっすぐ育った。子供を立派に育てて、ちゃんとした家庭をやってくために、は、犠牲も払わねばならない。今度の映画でも、レンコが、『お父さんとお母さんが喧嘩した時、私は我慢したよ。なのに、なんでお父さんとお母」さんは我慢できへんの』って言うところは、非常に意味深い、重要な台詞なんです」今回の映画『お引越し』は、桜田淳子演するところの、主人公レンコの母ナズナが、自立することによって起きる離婚劇の話だ。その中でレンコは試行錯誤しながら大人になっていくというお話で、これって、親が自分の本音で生きると子供は結構不幸だったりするが、不幸ながらも必ず学ぶものがあるから、子供ってえのは大丈夫。親が一生懸命生きてさえいれば、その振り見て必ずちゃんとした大人になるって言ってるようなもんな。のだ。そういう役どころのナズナを演ずる女優が、執拗に『家族』という形、それを守り抜く為の個人の犠牲なんてのを語ってるわけでわけわかんない、とも言える。

いい人が利用されることの悲劇

世の中、本当にいいばっかりの純粋な人っているけど、そういう人って、実は自分の本心が分かってないおバカさんなんじゃないかと私は思う。だって人間なんて本当はもっとどろどろしていて、誰だって本音を言えば、みんな自分の為に生きてるんだし、だからくやしかったり、悲しかったり、嬉しかったりするわけで、人間って面白いって思えるのだ。そういうのが全くありません、私は人様の為に生きてますなんてのは、いわゆる偽善ってもんなんじゃないだろうか。だけど、こういう人が偽善ではなくて、本気で世の為人の為に生きてると思ってたら、その思い込みを一人の強大な自分勝手の人に、利用される危険性は大だ。「そんなにいい人で、この世の中、生きづらくありませんか」という私の質問に、桜田淳子はにこやかに答えた。「世知辛い世の中だからこそ、私みたいな人が一人くらいいないと、救われないでしょう。世の中間違った方向に行きそうな今だからこそ、私ぐらいはちゃんとした家庭を築いて理想的な人生を送ろうと自分を律してるんです。さめた目で見れば、もともと自分を本当に一生器ないい子だって自覚があるわけですよ。素敵だって思ってなかったらデビューなんかしてないですからね。スターっていう、みんなに見つめられる立場を選んで生きてるわけですから、その生きざまをみんなに見ていてほしいんです」しかしだからこそその立場を、そしてその純粋で信じやすい性格を、統一教会に利用され始めているとは、彼女は思わないのだろうか。「桜田淳子はマゾっぽいのかもしれない。話を聞いていると、私生活にしても仕事にしても、あまりにも大変なことが好きなようだ。「今回の『お引越し』でもね、相米督は大変よってみんな言うんですよ。だけど私にとってはすごく充実感のある仕事だった。もう1シーンで10回から30回のリハーサル。夏の物凄い暑い盛りでお化粧は崩れるし、もう最後は疲れ果てちゃってぼろぼろになった時、やっとOKが出る。で、終わった後、楽しかったよってみんなに言うと、ええ本当?って(笑)」やっぱり桜田淳子って、根っから耐え忍ぶことに喜びを感じるタイプなんだ。だから『イダス(熊)』の幸薄い寒村の後家役があんなにキマり、『ニューヨーク恋物語』などの国際派キャリアウーマンの役が全然ハマらなかったのである。「私は幼い頃から正義感の塊でね。常に人の為に生きたいと思ってた。普通の日本とは宗教観が違って、神主義なんです。何をするにも感謝しながらで、自分の為じゃない。自己犠牲みたいなものに美意識を感じてしまうんです。『吉田茂が死んだ、大変だ!』って大騒ぎする祖母と一緒に一週間もお祈りしてあげたり、友達が交通事故に遭ったなんてったら『子供が横断歩道を渡るのは本当に大変なんだから、大人たちはなんでもっと気をつけてくれないの』なんてドアに書きなぐったりね。だから『ジャンヌ・ダルク』なんて見ると号泣しちゃう。世の中では変人と呼ばれてしまう類の人間なんでしょうね」本来『変人』的で浮き世離れしてる人が、「世の中をもっとよくしたい』なんて使命感にかられてしまったらどうなるか。実は霊感商法に関わってるんじゃないかとまで言われてるが、それでも本人は、文鮮明先生の為じゃなくて、世の為人の為だと思っているのだろうか。

私は別に、人が自分の為にどんな「宗教を信じて生きようと勝手だと思うが、本当に世の為人の為に献「身したいと言うのなら、宗教より身障者とかのボランティア活動のほうが、よっぽどその意義を果たせるんじゃないだろうかと思う。

桜田さん自身は、布教活動は義務づけられてはいないんですか」ちょうどお時間となってきたところで、宝島スタッフが口を挟み始めた。さっきまで穏やかだった桜田淳子の眉間に、深い皺がよる。「だから私はなにも語らないし、なにもしませんよ。統一教会に関しては、私の元々持ってた考えとぴったり合っただけで、宗教と言うより、思想ですよね。私も以前は「宗教?気持ち悪い』みたいな偏見がありましたけど。でも今、倫理観とか道徳観が崩れて来ちゃってるでしょう。だから代わりに宗教が必要なんじゃないですか」「教会に関する報道についてはどうお考えなんでしょうか」「だからそれに関しては憂いしかないってさっき話したじゃないですか。あれで充分でしょう。事実と報道の違いなんて話し始めたら膨大な時間がいるし、第一みんな興味本位で真面目に聞かないでしょう。話す気もありませんしっ」とうとうムッとしてしまった桜田淳子。うわー、気まずい。だからやだったんだよなー、この件に関して突っ込むの。なんだか、ワケ分かってない子供とか動物を思わず叱ってしまった後のよう後味の悪さだ。あの、責めるような目付きで私たちを見て去って行った、桜田淳子の後ろ姿が忘れられない。私は家に帰ってから、お酒をがぶ飲みせずにはいられなかった。
(取材・文/横森理香)