「中国の躍進」と「アメリカの迷走」日本は米中双方に柔軟に対応

世界

 

2025年09月30日 トランプ氏のゼロサムゲーム、勝つのは中国 ジョン・オーサーズ

ジョン・オーサーズ(John Authers)は「なぜアメリカはその重商主義のゲームに敗れるのか」という論説で、アメリカがトランプ政権下で17世紀の重商主義に回帰したものの、すでに何十年も重商主義を実践してきた中国には及ばないと指摘しています。

重商主義とは、貿易をゼロサムゲーム(誰かが勝てば誰かが負ける)とみなし、自国の自給自足と輸出超過を重視する政策で、ルイ14世など初期近代ヨーロッパの帝国が成功を収めました。アメリカは「アメリカ・ファースト」を掲げ、この戦略の復活を目指しましたが、中国は既にこのゲームを熟知し、巧みに経済・産業政策を進めており、一歩先を行っている状況です。

オーサーズは、自由市場の理念を唱えたアダム・スミスの理論と対比しながら、アメリカの政策は過去の成功例の焼き直しに過ぎず、世界経済の現代的な実態や新興国の強みを十分に理解できていないと分析しています。中国は輸出主導型から消費主導型への転換を試みつつも、依然として重商主義的な経済運営を巧妙に行っているため、アメリカが同じ土俵で勝つことは難しいだろうと述べています。

まとめると、アメリカの重商主義政策は過去の歴史に基づくもので、中国の経済政策の柔軟かつ精緻な戦略の前に劣勢であるとオーザーズは警告しています。

 

 

2025年09月29日 大前研一氏が読み解く「米中激突」の行方

  • 経済や軍事での「米中逆転」が予測されるなか、つばぜり合いの足を引っ張る“TACO”トランプ大統領と“完全独裁”習近平主席

大前研一氏は、米中対立は今後さらに激化するとしながらも、両国とも為政者の体制が足かせになっていると指摘しています。中国は経済・軍事・技術で急速に力をつけている一方で「独裁者のジレンマ」に苦しみ、アメリカのトランプ大統領は支離滅裂な対中政策で「TACO」と揶揄される存在になっているという見立てです。

中国の動き

  • 軍事分野では、極超音速ミサイル、ステルス機、無人兵器などを披露し台湾侵攻をにらむ。
  • 経済面では、上海協力機構(SCO)を通じて援助を約束し、人民元を基軸とする新秩序を意識。
  • 科学技術(AI、量子コンピューター、ドローン)で研究力・論文数において世界トップに。

アメリカの現状

  • トランプ政権の対中政策は不安定で一貫性を欠く。
  • 関税を大幅に引き下げる。
  • TikTok規制を迷走させる。
  • 中国人留学生の受け入れを急転換。
  • 結果として中国に甘い政策になり、習近平に「与しやすい相手」と思われている。
  • ただし巨大テック企業「マグニフィセント・セブン」がグローバル経済で依然圧倒的な影響力を保持。

両国の足枷

  • 中国:習近平の強権による独裁システムが不動産危機・失業・外資撤退の解決を妨げている。
  • アメリカ:トランプの一貫性のなさと国内の中国系・インド系資本の影響で政策が揺らいでいる。

日本の立ち位置

  • 日本は経済や軍事で米中のような力を持たないため、いずれか一方に全面的に寄ることは難しい。
  • 大前氏は「二股外交」で米中双方に柔軟に対応するほかないと結論づけている。

この論調は「中国の躍進」と「アメリカの迷走」を対比しつつ、日本にとっては現実的な外交選択肢が限られているとの警鐘を鳴らしています。

 

 

TACOは「Trump Always Chickens Out」(トランプはいつもビビって退く)の頭文字

独裁者のジレンマ

独裁者のジレンマとは、独裁体制において独裁者が直面する統治上の難題を指します。具体的には、抑圧や暴力によって国民の批判を封じると、政策の問題や国民の不満が独裁者に伝わらず、情報不足に陥ることです。一方で、政治の風通しをよくして自由な選挙や情報公開を進めると、自身の支配基盤が揺らぎ、選挙で敗北する危険性が高まります。このように、独裁者は抑圧と自由のどちらをどの程度許容するかで大きなジレンマに陥るのです。

このジレンマを乗り越える手段として、独裁者は選挙の不正操作だけでなく、経済的なバラマキ政策や資源配分を用いて国民の支持を得る戦略をとることがあります。適切に国民の支持を引き出し、選挙で圧勝することができれば、強制力に頼らずに体制を安定させることが可能です。しかし、これを誤るとクーデターや抗議行動、野党の台頭などで独裁体制が崩壊することもあります。

また、独裁者のジレンマは、情報を正確に得ることが難しいために誤った政策を行いがちという脆弱性も示します。部下たちが独裁者を忖度し現実の状況を正しく報告しないため、「裸の王様」状態となり、現実から乖離した判断になることも多いのです。

現代の権威主義体制は、過去の恐怖政治から、選挙の巧妙な操作や経済政策による支持取り込みへと変化しつつあり、民主主義との境界が曖昧になっていることも指摘されています。独裁者のジレンマを理解することは、こうした現代の権威主義政治の本質を把握するのに重要です。

 

 

組織と働き方を「変える・変えない・先延ばす」さて、どうする?
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現代の組織が直面する働き方の変化にどう対応すべきかをテーマにしています。本書は、組織運営の変更がなし崩し的に固定されることへの問題提起や、社員と経営層の感覚のズレの解消、会社が社員にどこまで配慮すべきかを問う内容です。変化すべきか、そのままにすべきか、変化を先延ばしにすべきかという組織の選択肢について、フレームワーク分析を用いた実践的なアプローチを紹介しています。

具体的には、在宅勤務や時差出勤といった新しい働き方の導入が本当に組織に適しているのかを冷静に検討し、求められるがままに変えることの是非を問う内容となっています。また、経営者や産業医、コンサルタントとしての経験に基づき、多くの企業を支援してきた上村氏の視点から、実務に活かせる効果的な組織運営の指針が提供されています。

簡潔に言えば、この本は現代の働き方の変革をめぐる経営判断に悩む組織やリーダー向けに、変える・変えない・先延ばすの三つの選択肢を整理し、その判断に役立つ理論と実例を示した一冊です。

 

 

 

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