明治政府の自己正当化

政治

 

江戸幕府が欧米列強に無理やり不平等条約を結ばされ、明治政府がその挽回に苦労した

定説として語られる「無知で弱腰の幕府が欧米列強に無理やり不平等条約を結ばされ、明治政府がその挽回に苦労した」という話は、明治政府が自身の正統性を主張し、維新の正当化のために作り上げた側面があります。史実としては、幕府内にも外国との交渉や近代化の意識は存在し、不平等条約は当時の国際ルール理解の不足や政治的現実の反映であったこと、また明治政府は欧米列強と密接に関わり、時には資金や武器を得て幕府を倒し、明治維新を推進したことも指摘されています。つまり、単純に「弱い幕府が押し切られた」という構図だけでなく、もっと複雑な政治的・社会的背景があるのです。

また、明治政府は天皇制のシンボリズムを利用し、民衆の支持を集めるために自身の政体を「正当化」するための物語を形成しました。これにより、革命の正当性を裏付け、民衆の結束を図ろうとしています。

こうした背景から、幕府の外交的対応やその後の明治政府の政策は、単なる弱腰のせいだけではなく、当時の国際環境や国内政治の複雑さを踏まえて理解する必要があります。明治維新の「勝利の物語」は明治政府の自己正当化の側面が強いことも考慮すべきです。

 

 

世界史とつなげて学ぶ 中国全史
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  • 約3000年にわたる中国の歴史を、世界史の流れと結びつけながら広く捉える入門書です。中華文明の誕生から現代の中華人民共和国の成立まで、歴史の大きな流れや地政学的背景、多民族国家としての複雑さをわかりやすく解説しています。

内容のポイントは以下の通りです。

  • 中国史を単独でなく、ユーラシア大陸の広い歴史的文脈の中で理解する視点を重視。
  • 黄河文明の起源や中華思想の生まれた背景、民族移動や気候変動の影響を描く。
  • 隋・唐・宋など王朝の興亡や交易、文化の交流、多民族国家としての中国の構造を詳細に紐解く。
  • モンゴル帝国の時代をユーラシア世界の変動として捉え、明・清の時代の地域分立や官民の乖離を考察。
  • 20世紀の革命と国民国家形成、現代中国の政治経済体制の成立過程も解説。
  • 地理や文明の生態史観的な視点も交え、中国の歴史のマクロ的理解を促進。

特に、日本や西洋の標準的な国民国家モデルとは異なる、中国の多民族かつ連邦的な歴史構造を深く掘り下げている点が評価されています。また、中国と世界の接点や相互作用を意識することで、現代中国の理解に役立つ知識が多く得られる本です。

著者の岡本隆司氏は京都府立大学教授で東洋史の専門家。複雑な中国史をシステマティックに世界史の中で捉えることを目指しており、この本は中国史のマクロな見方を学ぶのに適しています。

 

 

 

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