世界での熊の被害は?
世界での熊による被害は以下のようになっています。
- 2000年から2015年の15年間で、世界全体で熊による獣害事件は664件発生し、その内訳は北アメリカ183件、ヨーロッパ291件、アジア190件です。この期間の熊による人の死傷は全体の14.3%が致命的でした。
- 特にインド南部の「マイソールの人喰い熊」事件が最悪のケースで、1957年にナマケグマが少なくとも12人を殺害しました。
- 日本では北海道のエゾヒグマと本州・四国のニホンツキノワグマが被害を出し、クマによる人身事故は2000年代以降増加傾向にあります。2023年度には日本で219人が熊にかかわる被害を受け、そのうち6人が死亡しました。熊の被害は農作物や畜産、林業など経済的被害にも及んでいます。
- 北極に生息するホッキョクグマは、地球温暖化による行動時間の増加で陸上での人との接触が増え、1870年から2014年までに73件の事故が報告され、20人が死亡、63人が負傷しています。
- ヨーロッパでも家庭や畜産への被害が報告されており、フランスのピレネー山脈周辺ではクマの家畜被害が増加しています。
- 近年、熊の生息域での餌不足や環境変化により人里への出没が増え、特に日本などで人身被害が過去最多となる年もあります。
このように地域ごとに熊の被害内容や程度は異なりますが、世界全体で人身被害や経済的被害が多発し、注視されている状況です。熊の襲撃や被害は登山者や林業、農業従事者など山間部に関わる人々にとって依然として大きなリスクとなっています。
世界での熊の対策は?
世界各地の熊対策は、おおむね以下のように分類・実施されています。
熊に出会わないようにする対策
- 北米(カナダなど)では、熊鈴や音を出して人の存在を熊に知らせることが基本。
- 食料や臭いのするものはテント内に持ち込まず、壊されにくいロッカーか木に吊るして管理。
- 森や山と人の生活圏の境界に草刈りなどで「見通しの良いライン」を作り、熊が人里に入るのを防ぐ。
- 熊の出没情報を確認し、朝夕や天候の悪い日を避ける行動も重要。
熊と出会ったときの対策
- 距離があれば熊の動きに注意しつつ距離を取る。
- 距離が近い場合は熊撃退スプレー(ベアスプレー)を使用する。トウガラシ成分のスプレーで熊の目や呼吸を刺激し追い払う。
- 威嚇のために大声を出したり、自分を大きく見せることも有効。
生活圏と熊の生息域の分離
- 草刈りや低木の伐採で熊の侵入ルートを減らす。
- 人間の生活圏に接する森林の管理を行い、熊が入ってこない環境整備。
- 地域協力や住民参加のイベントを通して地域ぐるみで熊対策の意識と対策を促進。
被害軽減と共存への取り組み
- 誘因物(エサになるもの)を除去して熊の出没を減らす。
- 電気柵を設置し侵入防止を強化する場所もある。
- 国内外で科学的調査・モニタリングに基づいた熊管理を進めることが重要視されている。
- 一部の地域では駆除の強化も行われているが、なるべく共存を目指す動きがある。
これらは世界的に共通して見られる基本的な方策であり、地域の環境や熊の種類、被害状況に応じて調整されています。熊と人間の衝突を避けるためには、予防措置と遭遇時の適切な行動、生活圏の整備と地域協力が柱となっています。特に北米や日本ではベアスプレーの携帯が広く推奨されています。
世界で熊は増えている?
世界的に見ると、熊の個体数は増加傾向にある地域が多いです。日本での例では、ツキノワグマとヒグマ(エゾヒグマ)の生息域が1990年代以降に拡大し、個体数も増えていると推定されています。特に本州では多くの地域で熊の推定個体数が増加しており、北海道に生息するヒグマも同様に分布が拡大しています。
増加の背景にはいくつかの要因があります。人間の人口減少や耕作放棄地の増加による森林の再生、気候変動による降雪量の減少で生息域が広がっていることが挙げられます。また、気温上昇や森林の減少で熊が自然の食料を見つけにくくなり、人里や都市周辺に出没する「アーバンベア」も増えています。
一方で、熊の出没や被害も増加しており、特に餌になるブナやナラなどの木の実が凶作の年には熊の大量出没が起きやすいとされます。人間の生活圏との遭遇が増えた結果、人身被害や農作物被害の報告も増えています。
まとめると、熊の個体数や分布域は世界の一部の地域(特に日本)で増加しており、それに伴い人との軋轢や被害も増加している状況です。増加の主な要因は、人口減少による自然環境回復と気候変動、食料不足による熊の行動変化などです。
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